「Windows 10に満足」でもなぜWindows 11への移行が必要なのか:Windows 10サポート終了直前(1/2 ページ)
「Windows 10」のサポートは2025年10月14日に終了するが、まだ移行を終えていない個人ユーザーや企業は少なくない。なぜアップグレードが必要なのかを改めて確認しておこう。
クライアントOS「Windows 10」の公式サポートは、いよいよ2025年10月14日に終了する。これ以降、Microsoftからは無償の更新プログラムや機能強化が提供されなくなる。
有償の延長サポートを利用することで、最長3年にわたってセキュリティ更新プログラムを受け取る手もあるが、これは一時しのぎでしかない。まだWindows 10から「Windows 11」への移行を終えていない全ての個人ユーザーと企業にとって、PCをWindows 11搭載に移行することは喫緊の課題となる。
Windows 11への移行をしてこなかった理由はいろいろあるだろう。だが、更新プログラムを適用していないWindows 10搭載PCはサイバー犯罪の標的になりやすく、IT部門にはアップグレードを優先事項にすることが求められている。移行を喫緊の課題として捉えるべき理由を、ここで改めて押さえておこう。
なぜWindows 11にアップグレードしなければ駄目なのか
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Windows 11移行には落とし穴も
Nexthinkが実施した顧客のエンドポイントデバイスの分析によると、Windows 10搭載PCの台数は2025年5月19日から8月1日の間に33%減少したという。2025年10月14日までの間にさらに33%減少すると仮定すると、サポート終了日時点のWindows 10搭載PCの台数は約1億2100万台になる。
Windows 11は2021年10月から提供されているが、多くの組織で導入が遅れている。OSのアップグレードは、PCのハードウェアの刷新に合わせて実施することが多く、PCを入れ替えるときに新しいPCにWindows 11が入ることになる。
Windows 10の公式サポートが終了した後は、Microsoftの「拡張セキュリティ更新プログラム」(Extended Security Update、ESU)を購入しない限り、Windows 10のセキュリティ更新プログラムを受け取れなくなる。
Microsoftはかつて、Windows 10がWindowsの最後のメジャーアップグレードになると明言していた。調査会社Gartnerのシニアディレクターアナリストであるランジット・アトワル氏は、「『Windows 7』の後にWindows 10がリリースされたとき、Microsoftは確かに、これが最後の大規模アップグレードになると話していた」と振り返る。
当時は多くの人が「Windows 11」は登場しないと信じていた。しかし、その後、MicrosoftがWindows 11を発表したことで、Windows 10のサポート終了が現実のものとなった。「バグ修正やパフォーマンス向上のための更新も今後一切行われなくなる」とアトワル氏は警鐘を鳴らす。企業向けには有償のESUが用意されているものの、Windows 10からの移行を完了した後もあえて費用を支払ってサポートを受け続ける企業はごくわずかにとどまるだろうと、アトワル氏は予測している。
よく聞かれる疑問の一つに、「なぜOSをアップグレードしなければならないのか」というものがある。特に、新しいアプリケーションや周辺機器を利用する予定がなく、現状の環境に満足している場合でも、本当にアップグレードは必要なのか、という疑問が付きまとう。この点について、アトワル氏は次のように説明する。「Windowsを通じてサポートされている旧世代のソフトウェアや周辺機器があまりにも多く、サポート対象となるコードの規模が肥大化し、いずれは管理し切れなくなる」
こうした背景を踏まえて、Microsoftは、実行可能なアプリケーションやデバイスドライバを制限する仕組みを導入した。例えば、Windows 11ではセキュアブート機能が標準で有効化されており、デジタル署名のない古いソフトウェアやドライバはインストールできない。一方、Windows 10ではこの機能はオプション扱いで、より多くのレガシー資産が利用可能だった。
AI PCの導入
古いハードウェアのサポートを打ち切ることで、AI(人工知能)などの新しい技術を導入しやすくなる。例えば、Microsoftが展開するAI PCブランド「Copilot+ PC」のPCに搭載されている対話型AIは、従来にはなかった方法でユーザーとデバイスが対話できる新しい仕組みだ。アトワル氏は「新たな技術や機能を導入するのであれば、Windows 10をアップデートするよりも、Windows 11に直接追加する方が容易だ」と指摘する。
Gartnerは、2026年までに販売されるPCの55%がAI PCになると予測している。アトワル氏は「AI PCは確かに市場を変えつつあるが、関税の影響や市場の不透明感から、2025年の普及ペースは鈍化している」と説明する。
一方、従業員体験管理を手掛けるNexthinkのデジタル従業員ストラテジスト、ティム・フラワー氏は次のように強調する。「OSの移行は混乱としてではなく、むしろ従業員の働き方を改善する絶好の機会と捉えるべきだ。そのためには、移行前にデバイスやアプリケーションの動作状況を確認し、潜在的な問題を予測した上で、スムーズにアップグレードが完了するよう備えておく必要がある」
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