AI活用に取り残される管理職たち 人事はどう動く?:AIを導入すればいいというわけではない
Gartnerは、AIを効果的に活用できるスキルを持つ管理職はわずか8%にとどまるとの調査結果を発表した。この結果を踏まえてGartnerは、CHROが取るべきアクションを紹介した。
Gartnerの調査によると、自社の管理職がAIを効果的に使うスキルを持っていると信じるCHRO(最高人事責任者)はわずか8%だった。それにもかかわらず、回答者の3人に1人は、「AI活用によって従業員のパフォーマンス向上を期待している」と回答した。AIを業務に統合する支援を提供していると答えた回答者は14%にとどまり、教育や導入支援が不足している実態も明らかになった。
この調査結果は2025年10月8日(英国時間)、英国で開催中の「Gartner HR Symposium/Xpo」で発表された。調査は、2025年7月、企業の人事部門でAI導入や人材育成に関与している管理職や意思決定者114人を対象にGartnerが実施した。
期待するだけでは足りない CHROが取るべきアクションは?
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調査によると、CHROの79%は、「従業員がテクノロジーを活用して組織成長に貢献するよう促すこと」がCHROの重要な役割だと認識していることも分かった。
Gartner HR Symposium/Xpoに登壇したGartnerのカロリナ・エングルス氏(HR部門シニアプリンシパル)は調査結果に基づいて次のように分析した。「AIを適切に導入すれば、日常業務のうち人の判断を必要としないルーティン作業を自動化し、AIによる迅速な分析や洞察をマネジメント判断に活用できる。これにより、管理職はより戦略的で人間中心的、かつ影響力のある業務に集中できるようになる」
そこでエングルス氏は、AIの導入を急ぐのではなく、CHROが管理職によるAI活用を支援するために取るべきアクション4つを紹介した。
1.AIの利用を拡大する前にガードレールを設定する
従業員がAIを活用して成果を上げるためには、まずCHROがAI活用に関する明確なルールと運用体制を定義する必要がある。そのためには、CHROは法務部門やリスク管理部門と連携し、AI利用における倫理基準、データの取り扱い範囲、AIツール導入の承認プロセスなどを策定する。
2.自動化すべき業務を協議の上決定する
自動化すべき業務を決定する際には、管理職とCHROが直接協議し、どの業務が自動化に適しているかを見極め、IT部門と連携して実現可能性を検討する。自動化すべき業務の対象となるのは、データ集計の確認、評価レビューの作成、顧客対応のフィードバックなどだ。
3.人間中心のリーダーシップを重視する
AIが人間の仕事を補完する領域を特定し、人間同士のつながりを深めるAIの活用を推進する。マネジャーがより効果的にコーチングできるよう支援するAIツールや、AI導入に関する課題やニーズを共有するマネジャー間のディスカッションフォーラムなどがある。
4.研修を充実させる
人事部門やIT部門と協力し、AIリテラシーを高めるための研修プログラムを設計する。座学だけでなく、実践的な研修や相互学習による知識共有を組み合わせ、デジタルスキルとリーダーシップスキルを同時に高められる内容がよい。
エンゲルス氏は「新旧のAIツールの登場により、マネジャーの役割は“情報と意思決定の管理者”から“洞察を調整し、従業員のニーズを予測する存在”へと変化している。AIはマネジャーを置き換えるためのものではなく、彼らがより有意義な時間を部下と過ごせるよう支援するツールだ」と述べた。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。