Google検索はもう見ない? 「生成AI」時代のSEO生存戦略:SEOは終わったのか【前編】
生成AIが質問の答えを直接示すようになり、エンドユーザーがWebサイトを訪問しなくなる現象が起きている。トラフィックの減少はSEOの終わりを意味するのか。専門家の見解はそうではない。
Webサイトにおける自然検索経由でのトラフィックは減少傾向にある。マーケティング担当者がSEO(検索エンジン最適化)の将来を疑問視するのは当然だ。
AI(人工知能)技術の発展によって、AIチャットbot「ChatGPT」やAI搭載型検索ツール「Perplexity」などの生成AIを活用したツールの台頭は、エンドユーザーの情報収集の在り方を一変させた。これらの生成AIツールは、エンドユーザーの質問に対して直接的な答えを返すため、エンドユーザーが個別のWebサイトを訪れる必要性が薄れてきている。
調査会社Gartnerは2024年2月時点で、2026年までに従来の検索エンジンの利用量が25%減少すると予測した。こうした検索エンジンの利用数の急減から、Webページの検索ランキングを上げるための技術「検索エンジン最適化」(SEO)は終わったという声も聞かれ。だが専門家は、「終わったのではなく変化している」と指摘する。
SEOは終わってはいない
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生成AIが変えるSEO
「SEOが終わったという話は、印刷物が終わったという話と同じだ。つまり、なくなるわけではなく、その役割や形を変えていくだけだ」。調査会社Constellation Researchでバイスプレジデント兼アナリストを務めるリズ・ミラー氏はそう語る。
従来のSEOの効果は以前よりも薄れつつある。だがエンドユーザーが生成AIツールの回答に含まれるリンクをクリックする機会は限られているため、従来の検索結果で上位を目指すことの重要性が失われたわけではない。「AI検索」の台頭に適応するために、マーケティング担当者はトラフィックの減少を特定し、コンテンツの信頼性を高め、これまでとは異なる指標を追跡するといった対策を講じる必要がある。
なぜ「SEOは終わった」と言われるのか
消費者は従来の検索エンジンに加え、ChatGPTやPerplexityのような生成AIを活用したツールで情報を検索するようになった。「Google検索」や「Bing」といった従来の検索エンジンでさえ、エンドユーザーの質問に直接回答する「AI Overviews」といったAI機能を導入したり、AIアシスタント「Microsoft Copilot」を検索エンジンに取り入れたりしている。これによって、エンドユーザーは検索ツールから離れることなく情報を得られるようになり、企業は自社サイトへのトラフィックを大幅に失うことになった。
調査会社Forrester Researchでプリンシパルアナリストを務めるニキル・ライ氏は、「私が話すクライアントは皆、自社で所有、運営するWebサイトやアプリケーションへのトラフィックを失っている」と説明する。
トラフィックの減少は、特にSEOを活用したマーケティング戦略に広範囲な影響を及ぼす。たとえSERP(検索結果ページ)で上位に表示されるコンテンツであっても、エンドユーザーがSERP自体を閲覧しなくなるため、本来のターゲット層に届きにくくなる可能性がある。
Webトラフィックの減少は、マーケティングにおける以下の課題を引き起こす。
- コンテンツマーケティングの効果低下
- コンバージョン(購入や契約などの成果創出)を目的としたブログ投稿や動画へのエンゲージメントが低下する。
- 見込み客の減少
- 会員登録や問い合わせといった、エンドユーザーに行動を促す機会(CTA:Call To Action)が限定される。
- 分析用データの減少
- マーケティング担当者がエンドユーザーの行動を追跡してキャンペーンを最適化し、投資利益率(ROI)を効果的に測定することが難しくなる。
「SEOは終わった」という見方は、エンドユーザーの情報収集方法の変化から生じている。生成AIツールは、エンドユーザーがWebサイトを訪問する必要性を薄くする。従来の検索結果を利用するエンドユーザーが減れば、SERP向けにコンテンツを最適化する価値は下がり、マーケティング担当者はSEOの有効性を再検討せざるを得なくなる。
SEOは終わったのではなく変わった
この問いに対する筆者の答えは「SEOは終わってはいない」だ。ただし、変化しているのは事実だ。消費者が生成AIツールを使ってSERPを回避するようになったため、従来のSEO戦略の効果は薄れている。だが効果が薄れたからといって、終わったわけではない。従来の検索エンジンは、依然として大きなトラフィックを生み出している。
SEOは、生成AIツールの回答やその引用元に自社の情報を表示させる上でも役立つ。生成AIツールが回答の根拠とする情報源を選ぶロジックは、従来の検索エンジンの評価基準と類似しているからだ。
「ChatGPTの回答で引用されることは、従来の検索結果で上位3位以内に入ることと同じ価値を持つ」とライ氏は意見を示す。
検索に関するエンドユーザーの行動は変化したが、SEOは企業がSERPや生成AIツールの回答に表示されるのに役立つ。SEOは終わるのではなく、「GEO」(生成エンジン最適化)という新たな概念を取り込む形で進化している。GEOは、マーケティング担当者が生成AIサービスで自社ブランドやコンテンツの認知度を高めるための戦略だ。デジタルマーケティング企業Jellyfish Digital Groupで戦略担当バイスプレジデントを務めるジョン・ドーソン氏は、「マーケティング担当者はSEOを捨ててGEOに移行するのではなく、Webでの認知度を向上させるためのアプローチとして両戦略を採用すべきだ」と語る。
次回は、エンドユーザーが生成AIツールで情報を検索することを前提とした、マーケティング担当者へのアドバイスを紹介する。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。