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もはや“裏方”ではない 「AI主導の成長」にネットワークが不可欠な理由「あって当たり前のインフラ」から「戦略的存在」へ

企業におけるAI技術活用のボトルネックになっているのが、時代遅れのネットワークだ。AI技術の可能性を引き出し、投資を無駄にしないために、企業が解決すべきインフラ上の課題とは。

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人工知能 | インフラ | ネットワーク


 製造業から金融サービスまで、企業が多様なアプリケーションにAI(人工知能)技術を組み込むようになっている中、高速かつ低遅延で安全なネットワークが熱望されている。一方で調査会社IDCは、企業が運用中のレガシーインフラは、現在および将来のAIワークロード(AI関連処理)がもたらす規模と複雑さに適応できないと指摘している。

AI導入の成否はネットワークで決まる理由

 IDCは、NTTデータとCisco Systemsからの委託で、複数の調査結果を組み合わせてレポート「Wired for intelligence: A CIO’s guide to enterprise networking for AI」を発行した。このレポートは、将来を見据えたインフラを実装することの重要性を強調している。IDCの予測では、AI技術は2030年までに世界のGDPの3.5%に相当する19兆9000億ドルの経済効果を生む可能性がある。ただし、これは企業のネットワークがAI技術の進化に適応できたらの話だ。

 企業はAI技術の導入に意欲的ではあるものの、そのアプローチが旧来の手法から脱却できていないという問題がある。生成AI導入の初期段階にある企業は、比較的少数のアプリケーションに組み込むことを計画している一方、導入の先進段階にある企業は、より多くのアプリケーションに生成AIを組み込むことを検討しているという。

 企業が、ネットワークを「AI主導の成長」を支える重要な基盤だと見なしていることを、レポートは解き明かしている。IDCがネットワークに関する意思決定者1209人を対象として2024年に実施した調査では、78%以上の回答者が、生成AIのインフラを選定する上で、ネットワークの能力を「重要」または「非常に重要」だと答えた。これは、AIモデルの複雑な学習と推論を容易に実行しつつ、大規模化するAIワークロードを安全に処理できるネットワークを、企業が求めていることの表れだ。

 ネットワーク運用そのものでもAI技術活用が進んでいる。AIツールが提供する設定の自動化、異常検出、修復といった機能は、問題の解決を迅速化し、ユーザー体験を向上させる。製造業、ヘルスケア、金融サービスといった業界は、すでに業務効率の改善やコスト削減を目的として、ネットワーク運用にAI技術を導入している。

 企業は異なるシステム間の連携を自動化するために、自律的にタスクを実行する「AIエージェント」の活用も始めている。世界中の企業が、ネットワーク運用へのAIエージェントの導入を検討している段階だ。この変化は、ネットワークをこれまでのような「あって当たり前のインフラ」という“裏方の存在”から、AI技術への投資の成功を左右する「ビジネス上の戦略的要素」へと変貌させている。

 IDCで欧州の通信・インフラ部門のバイスプレジデントを務めるクリス・バーナード氏は、ネットワークがAI技術による変革が成功するかどうかの鍵を握っており、成功のためにはレガシーなネットワークが生み出す課題の克服が不可欠だと考える。NTTデータでテクノロジーソリューション部門のグローバル責任者を務めるディリップ・クマール氏も、ネットワークを「企業の成長を加速させる存在」だと評する。

 Cisco Systemsでグローバルネットワーク販売担当のシニアバイスプレジデントを務めるブリンク・サンダース氏は、ネットワークの刷新の重要性を次のように強調する。「ネットワークのモダナイゼーションは、単に古い機器を交換することではない。企業がAI主導の世界で競争を勝ち抜くための変革だ」

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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