面倒なクラウド管理はAIを使うとどう「楽」で「安全」になるのか:クラウド管理にAIを
複雑クラウド管理にAI技術を取り入れれば、さまざまな作業を自動化し、運用効率化やセキュリティ向上につなげられる。具体的にはAI技術をどう利用すればいいのか。
クラウドサービスを使ったシステムは、インフラ管理が複雑化になりやすい。特に、オンプレミスシステムとクラウドサービスを組み合わせた「ハイブリッドクラウド」や複数のクラウドサービスを組み合わせた「マルチクラウド」において、クラウド管理者はセキュリティやコンプライアンス(法令順守)、コスト管理、自動化など、さまざまな課題に直面する。こうした課題の解決に有効なのが、クラウド管理におけるAI(人工知能)技術の活用だ。
クラウド管理でAIが役立つ3つのメリット
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メリット1.動的スケーリング
AI技術によってデータを分析し、より迅速かつ効率的な運用体制を構築できる。AI技術によってクラウドサービスのスケーリング(拡張)を自動化し、トラフィック量に応じて自動でCPUやメモリといったリソースを増減できるようになる。AI技術を使った動的スケーリングの利点には以下がある。
- 予測
- 過去と現在のデータを活用してトラフィックの変化を予測し、リソースの配分を最適化する。
- 監視
- システムを監視し、需要の変動に合わせてリソースを調整する。
- 異常検出
- 異常検出によって障害を予測し、自動または手動での事前対処を可能にする。
- コスト管理
- 需要に応じてリソースを調整し、不要なコストを削減する。
メリット2.インフラ構成の改善
生成AIを使用して、プログラミング言語「Python」やスクリプト(簡易プログラム)言語「JavaScript」でソースコードを記述することは一般的だ。この他にも、インフラ構成をソースコードで管理する「IaC」(Infrastructure as Code)でのAI技術の活用も期待できる。IaC管理におけるAI技術の主な活用方法には以下がある。
- 自然言語での指示によるソースコード生成
- 自然言語での指示を出してソースコードを生成する。この方法を用いると、高度なコーディングスキルがなくてもソースコードを作成できる。
- IaCの最適化
- 既存のソースコードを検証して改善点を洗い出し、システムのパフォーマンスを最適化する。
- セキュリティとコンプライアンスの強化
- AI技術による分析で設定ミスを特定し、攻撃につながり得る脆弱(ぜいじゃく)性をなくす。
- ソースコードのドキュメント化
- 複雑なソースコードの内容を自然言語で要約し、ドキュメント化する。
メリット3.システムの自己監視と自己修復
AI技術は、システムの自己監視と自己修復を可能にする。問題の迅速な特定から修正までを自動で実行できるようになるため、システムの安定性を高めることが可能だ。AI技術によるシステムの自己監視と自己修復の利点には以下がある。
- 原因分析
- 平常時の状態を基準として監視することで異常を素早く検出し、インシデント報告を効率化する。インフラの故障によるダウンタイム(システム停止時間)の発生を防ぐことにつながる。
- 自動修復
- システム回復を自動化してクラウド管理者の負荷を減らすとともに、回復時間を短縮できる。
- 保守の改善
- ハードウェアやソフトウェアの稼働データを分析し、保守や修理の最適なタイミングを判断する。
クラウド管理のためのAIツール
クラウド管理の手法として、システム運用にAI技術を生かす「AIOps」を採用する手法と、ソースコード作成を自動化するために生成AIを利用する手法がある。以下でこれらの違いを見てみよう。
- AIOpsを採用する手法
- AI技術でクラウドインフラを自動で監視、最適化する。代表的なAIOpsツールとして「Fabrix.ai」や「Dynatrace」がある。一般的な用途は、リソースの容量計画、コスト最適化、異常検出などだ。
- 生成AIを利用する手法
- ソースコード、インフラ構成ファイル、ドキュメント、レポートを生成する。Google Cloudの「Vertex AI」やAmazon Web Services(AWS)の「Amazon Bedrock」、OpenAIの「GPT-4」などが代表的なツールだ。
これらの生成AIを補完するツールとして、以下の特化型ツールもある。
- Komment
- ソースコード群から情報を抽出して自動でまとめ、開発チーム内での知識共有を効率化する。
- GitHub Copilot
- コーディングの定型作業を自動化し、開発者が問題解決に集中できるようにする。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。