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VMwareから“独り立ち”したOmnissa、その新たな戦略とは?新たな挑戦が示すエンドポイント管理の未来

VMwareからEUC事業を引き継いだOmnissa。同社のイベントで、VMware時代とは全く違う方向性が打ち出された。具体的な容と、エンドポイント管理とセキュリティを担う“統合プラットフォーム化”の狙いとは。

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 仮想デスクトップインフラ(VDI)製品など、VMwareのエンドユーザーコンピューティング(EUC)事業を引き継ぐ形で立ち上がったのが、「デジタルワークプラットフォーム」ベンダーを名乗るOmnissaだ。同社は2025年9月に開催したイベント「Omnissa One 2025」で、市場の期待に応えるさまざまな取り組みを発表した。実際にラスベガスの会場に足を運んだ筆者が、その中から強く印象に残った点を紹介する。

VMware時代とは違う 多彩な新機能とプラットフォーム化

 Omnissaが事業開始に合わせて開催した2024年7月のオンラインイベントでは、VMware時代との違いや今後の方向性に関して、疑問に十分に答えていたとは言い難かった。人工知能(AI)技術の導入についても触れられていたが、大まかな説明に終始した。

 Omnissa One 2025で、全てが変わった印象だ。多くの人が抱えていた疑問を解消しただけでなく、「単なるライセンス戦略」「ベンダーロックイン」といった言葉を使って、Omnissaはそうではないと強調した。こうした表現から、“VMwareとは違う”という同社の強いメッセージがうかがえる。

Microsoft Intuneとの共存を狙う

 イベント参加前の筆者の最大の疑問は、「競合製品であるデバイス管理ツール『Microsoft Intune』の普及が進む中で、Omnissaは『Workspace ONE』の勝ち筋をどのように描いているのか」だった。これはMicrosoft以外のベンダーにとって積年の課題だが、前身に当たる「VMware Workspace ONE」は、Microsoft製ツールとの連携が可能で、一定の市場競争力を有していた。しかしVMwareからOmnissaに変わることで、当然ながらMicrosoftとの力関係も異なるはずだ。

 Omnissaの答えは、正面からの真っ向勝負を避けた“共存戦略”だ。MicrosoftのクライアントOS「Windows」搭載デバイスでデバイス管理ツールを使用する際には、「Microsoft Graph」のアプリケーションプログラミングインタフェース(API)を利用する必要があり、この際の競合が問題となっていたが、Omnissaは解決策としてWorkspace ONEのデバイス管理のための仕組みを変更したのだ。具体的には、アプリケーション「Workspace ONE Intelligent Hub」を利用したエージェントベースの管理とし、デバイス管理を可能とする設定ファイルを管理対象デバイスにインストールしなくても、Workspace ONEを使用できるようになるという。

 これは、Microsoft Intuneや構成管理ツール「Microsoft Endpoint Configuration Manager」(MECM)が既にインストールされているWindowsデバイスでWorkspace ONEを実行できることを意味する。VMware製品として初登場した「VMware AirWatch」時代を知っている者からすると衝撃的な変化だが、理にはかなっている。

 さらに、このアプローチにより、Workspace ONEとVDI製品「Horizon 8」の連携が可能になった。例えば、Workspace ONEのワークフロー自動化機能「Omnissa Freestyle Orchestrator」を使用して、仮想デスクトップの作成を自動化できる。

サーバ管理が可能に

 筆者はエンドポイント管理が専門で、サーバ管理には詳しくないが、管理とセキュリティの観点から、サーバをエンドポイントとして捉える企業が増えている兆候が見られる。Omnissaもこれに気付いているようで、イベントではWorkspace ONEにサーバOS「Windows Server」の管理機能が追加されると発表された。

自律型エンドポイント管理への参入

 エンドポイント管理とセキュリティにAI技術を活用する「自律型エンドポイント管理」(AEM)は最近登場した新しいコンセプトで、その定義は定まっていないが、Adaptiva、NinjaOne、Taniumなどの競合他社同様、Omnissaもこの分野に参入してきた。

 イベントの基調講演では、主要テーマとして“統合”が打ち出され、それを実現するのが同社の「自律型ワークスペース」だと語られた。自律型ワークスペースとは、UEM(統合エンドポイント管理)、仮想デスクトップ、アプリケーション、デジタル従業員エクスペリエンス(DEX)管理、セキュリティ、AI機能を統合した単一のプラットフォームを指すという。

 具体的な“自律型”の機能として、「Workspace One Vulnerability Defense」が発表された。これは物理か仮想かを問わず、あらゆるエンドポイントとアプリケーションを包括的に管理する機能で、公開された脆弱(ぜいじゃく)性情報からデータを自律的に取り込み、リスクレベルに基づいて優先順位付けとパッチ(修正プログラム)適用を実行するという。

 NinjaOneも自社ツールに「自律型パッチ管理」という同じような機能を組み込んでいる。個人的にはこのような機能がAEMの初期の実装例のように思える。

 AEMが今後どのような発展を遂げていくかはまだ不明な点が多いが、最近筆者がAEMについて実施した調査では、AEMの導入を検討中、もしくは導入済みと回答した組織は全体の96%に上った。AEMはAIによる以下の4つの課題解決を目指している。

  • 管理の効率化と自動化
  • セキュリティ対策とリスク軽減
  • インテリジェンスと意思決定
  • 可視化とコンプライアンス(法令順守)

 AEMの魅力を一言で表すとすれば、Omnissaが言うように、“統合”だろう。現状、ツール、アラート、データが多過ぎて、エンドポイント管理が複雑化している。AEMは、全てのエンドポイントを一元管理し、可視性を高め、セキュリティを自動化して平均修復時間(MTTR)を短縮できる。

App Volumesが物理エンドポイントに対応

 筆者は長年、アプリケーション仮想化機能「VMware App Volumes」を愛用してきた。歴史的に、VMware App VolumesはVMware Horizonと組み合わせて使用されることが多かった。これは、主にVDIで使用することを考えると当然だ。

 後継に当たるOmnissaの「App Volumes 4」は、VMware App Volumesにあった課題の多くが解消されており、機能強化が図られている。具体的には、オンデマンドでアプリケーションを作成する機能「Apps on Demand」など、アプリケーションのライフサイクル管理を支援する幅広いツールセットが含まれている。

 App Volumes 4は2025年6月に発表されたアプリケーション配信・管理機能「Apps Essentials」に組み込まれた。Horizon 8以外にも、「Citrix Virtual Apps and Desktops」など、別のVDIにもアプリケーションを配信できる。

 Omnissa One 2025では、App Volumes 4が物理エンドポイントにも対応するようになると発表された。アプリケーションの仮想化、配信、管理が可能であることを考えると、今後“自律型ワークスペース”との統合が進むと予想される。

エンドポイント管理の未来

 今回のイベントを受けて、DEX向上のためにOmnissaが何をしてきたのか、Omnissa Freestyle Orchestratorの機能はどのようなものなのか、AIが真に役立つ形で組み込まれているのか、同社が「ModStack」と呼ぶUEM向けの最新アーキテクチャとは何なのか、まだ明らかになっていない点は多い。

 何はともあれ、Omnissaは、設立当初にははっきりしなかった明確な方向性を打ち出した。エンドポイント管理とセキュリティにおける課題解決という正しい方向に進んでいるように思う。ライバルも多いので、Omnissaが成功するとは断言できないが、エンドポイント管理が新しい段階に入ったのは間違いない。

翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)

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