AIで“週4日勤務”はかなうのか――実現するための条件は?:AIに翻弄される側から脱却できる日も近い?
Amazonは、AI技術を活用した効率化策として1万4000人の削減計画を発表した。AIによる雇用への影響が注目される中、「AIを正しく使えば働き方を改善できる」と主張する研究結果がある。
Amazon.com(以下、Amazon)は2025年10月28日(米国時間)、人工知能(AI)技術を活用したコスト削減策の一環として、事業部門の従業員1万4000人を削減する計画を明らかにした。
一方、AIの台頭により、週4日勤務を実現できる可能性があると指摘する研究結果がある。週4日勤務を実現できるようにするにはどうすればいいのか。
AIで「週4日勤務を実現」? 今できていない理由は?
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人員削減に関するAmazonの通知は、同社の人事、テクノロジー部門上級副社長ベス・ガレッティ氏が従業員に宛てて公開した。同氏は今後も「効率性向上のための追加策を検討する」としつつ、2026年にかけて「戦略的に重要な領域での採用は継続する」とも述べた。
どの部門や職種が人員削減の対象となるのか、地域ごとの影響といった情報は明示されなかった。削減の対象となった従業員には、社内で新たなポジションを探すための90日間の猶予期間が与えられる予定だという。
ガレッティ氏は、今回の人員削減の要因がAIであることを示唆した。「現在のAIは、インターネット以来で最も変革的な技術だ。既存市場や新市場のあらゆる領域で、かつてないスピードで革新を可能にしている。私たちは顧客と事業のために、より少ない階層で迅速に動ける“リーン(無駄のない)な組織”でなければならない」と同氏は強調した。
ガレッティ氏は通知の中で、過去にAmazonのプレジデント兼CEO、アンディ・ジャシー氏が発信した2つのメッセージを引用した。
2024年9月のメッセージでは、ジャシー氏が「世界最大のスタートアップのように機能する企業」を目指す方針を示しており、2025年6月のメッセージでは、生成AIが持つ「一生に一度の変革的可能性」を称賛していた。
ジャシー氏はメッセージにおいて、「AIはAmazonの将来の労働力構成を大きく変える原動力になる」と述べ、数年以内に「AIの全社的活用による効率化で企業全体の人員が減少する見通し」であると予測していた。同氏はさらに、「変化を受け入れ、AIに精通し、社内のAI機能を強化し、消費者に価値を届ける従業員こそが、影響力を持ち、当社の改革に貢献できる」と従業員に呼び掛けた。
Amazonによる大規模な人員削減は2023年初頭に実施された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期の過剰採用を理由に、同年1月に1万8000人、3月に追加で9000人の計2万7000人が削減の対象となった。2024年4月には、Amazon Web Services(AWS)で数百人規模の人員削減が実施された。
人員削減を進めたのはAmazonだけではない。Cisco Systemsは2024年8月、2024年第4四半期(2024年5〜7月)決算を発表した際に、AI関連スタートアップへの10億ドル投資とともに、従業員9万400人の約7%に当たる6300人以上を削減する計画を発表した。Meta PlatformsやIntuitも人員削減を進め、AIにリソースを振り向けた。
こうした動きに対し、シンクタンクThe Autonomy Instituteは2023年11月に発表した報告書で、「大規模言語モデル(LLM)による自動化は、生産性を高めながら労働時間を短縮できる可能性がある」と指摘した。同報告書では、「AI主導の生産性向上が適切に活用されれば、2033年までに英国の労働者880万人が週4日勤務を実現でき、約2800万人の労働時間を10%削減できる」と予測している。
The Autonomy Instituteのチーフエグゼクティブ、ウィル・ストロング氏は次のように述べている。「AIの恩恵を労働者にも還元する最も具体的な方法が週4日勤務だ。AIが経済全体で公正に導入されるなら、すべての労働者にとって週4日勤務の新時代が訪れるべきだ」
AIによる業務効率化には「雇用喪失」や「労働環境の悪化」など悲観的な議論が散見される。一方ストロング氏は、「AIによる業務効率化を正しく導入すれば、給与や成果を維持したまま労働時間を短縮できる」と強調する。
ただし、The Autonomy Instituteは「生産性向上の恩恵が均等に分配されるとは限らない」と警鐘を鳴らす。地域や人口構成、経済情勢、労働市場の構造、労使交渉権の有無といった要素が影響するためだ。
「この報告書が示すのは“可能性”であって“運命”ではない。技術の普及は常に不均一であり、賃金水準、政策、市場の独占度、労働組合の強さなど、さまざまな要因によって左右される」と締めくくっている。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。