IoTの「接続性不足」がAI活用の足かせに――Eseye、調査で実態を公開:99.9%の接続率を満たすIoTデバイスはわずか2%
IoTデバイスのデータをAIツールで分析することが広がる中、IoT接続サービスのEseyeは、AI活用の成否がIoTデバイスの接続性に大きく左右される実態を明らかにした。
IoT(モノのインターネット)デバイスの接続サービスを提供するEseyeによると、IoTデバイスの接続性が、人工知能(AI)技術への投資に数十億ドル規模の影響を及ぼす可能性がある。同社が公開した年次レポート「2025 State of IoT Report」で明らかにした。
IoTデバイスの接続性とAI技術への投資にはどのような関係があるのか。
IoTデバイスのパフォーマンスがAI技術に及ぼす影響
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同レポートは、企業で過去12カ月以内にIoTを軸とするビジネスプロジェクトを少なくとも1件実施した経験を持ち、IoTに関する戦略を主導、実行する上級意思決定者1200人を対象にしたもの。調査は2025年5月28日〜6月3日。Eseysが委託し、調査会社Censuswideが実施した。
調査レポートは、IoT関連のビジネス戦略を構成する重要な要素として「IoTデバイス自体の信頼性」「複数国にまたがるIoTデバイスの安定した接続性」「セキュリティ」「持続可能性」を挙げた。
一方で、デバイス自体の信頼性や接続性が低いIoTデバイスから収集される信頼性の低いデータが、企業のAI戦略に重大なリスクをもたらしているとも同レポートは指摘している。
調査によると、IoT関連のビジネス戦略の実行に必要な高レベルの接続性を、自社のIoTデバイスで実現できていると答えた回答者はわずか2%にすぎなかった。一方、34%の回答者は、IoTデバイスの接続性の低さがAIを使った取り組みの進行を妨げていると回答している。
調査からは、IoTデバイスに求める接続性と実際の接続性の間にギャップが存在していることが分かった。「IoTデバイスが複数国にまたがって100%に近い接続性を実現することは、自社のビジネスにとって不可欠」という選択肢に74%の回答者が同意していた。
調査レポートは、IoTデバイスの接続の不安定さが、業務に直接的な影響を及ぼす恐れがあると指摘している。調査によると、回答者の36%は「IoTデバイスのダウンタイム(停止期間)により正確でタイムリーなデータが得られず、誤った意思決定をしている」「企業の評判を損なう可能性がある」と懸念を示している。回答者の35%は「接続不良が業務効率の低下とコスト増につながっている」と指摘している。
Eseyeのポール・マーシャル氏(共同創業者兼最高顧客責任者:CCO)は、次のように語っている。
「AIが医療のスマート化や持続可能な都市の形成、エネルギーや水資源の管理といった地球規模の課題解決に貢献すると期待されている。しかし、こうしたAIの進化を支えるのは膨大な数のIoTデバイスから収集されるデータのリアルタイム分析だ」
マーシャル氏によると、99.9%以上の接続性を実現しているIoTデバイスは全体の2%にすぎない。同氏は、「これは、AI活用の基盤そのものに重大な欠陥があることを意味する。AIがもたらすROI(投資対効果)を損なうだけではなく、AIアプリケーションの進化を阻害しかねない問題だ」と強調する。
マーシャル氏は、IoTが担う現実世界での重要性についても警鐘を鳴らす。
「例えば、命を救う医療センサーが患者の酸素レベルの異常を検知しても、通信が途絶すればAIツールによる分析を進められず、医師に警告が届かない。これは、医療的な介入の機会を失い、回避可能だった死亡を招く可能性すらある。AIの恩恵を誰もが受けられる社会を実現するには、まずIoTデバイスの接続性に関する課題を解決することが欠かせない」
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