【経営層からの質問対応】あの問題、どう説明する? Cloudflare障害編:「うちは大丈夫なの?」にサクッと答える
IT関連のニュースや技術を追い続けている訳ではない経営層に、最新のIT関連情報の説明を求められたら――。今回は、Cloudflareの大規模障害を事例に、困った時にすぐ使える説明用スクリプトを紹介する。
2025年11月18日(協定世界時)、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)やWebセキュリティツールを提供するCloudflareのシステムで大規模障害が発生した。この障害は、OpenAIのAI(人工知能)サービス「ChatGPT」や短文投稿サイト「X」(旧「Twitter」)をはじめとしたさまざまな業界のサービスに影響を及ぼした。
「Cloudflare大規模障害、弊社にどう関係あるの?」にどう答える?
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最新の障害事例をおさらい
Scene1.社長からいきなりの質問
社長:「Cloudflareが落ちたらしいけど…うちは大丈夫ですか?」
Scene2.まずは結論を伝えつつ、安心と危機意識のバランスを取ろう
情シス:「現時点で把握している限り、弊社で大きな障害や業務停止は発生していません。ただし、今後も同様の障害の影響を受ける可能性はゼロではありません」
Scene3.社長が理解しやすい例えで事故の本質を説明する
情シス:「Cloudflareは、“会社とお客様の間に立つ高速道路の料金所”のような存在です。今回起きたことは、料金所のゲートが突然すべて閉じてしまい、車が通れなくなってしまった状況です。つまり、ユーザーのアクセスが滞ったという意味です」
社長:「なぜ、世界中のWebサイトで障害が一斉に発生したのですか?」
情シス:「Cloudflareは世界中のWebサービスが利用しているため、1つの設定不具合でも、“インターネットの主要道路が封鎖される”のと同じ状態になります」
「代表的な原因としては、設定の誤配信、ルール更新に伴うバグ、インフラ側の障害などが挙げられます。こうした障害は、設計や運用の前提を誤ると、多くの企業でも起こり得るタイプのものです。」
Scene4.社長が最も気にしている「うちには影響があったの?」にどう答える?
情シス:「今回の障害では、当社が利用しているサービスの一部で“遅延が発生した可能性”はありますが、大きな停止や業務への影響はありませんでした」
Scene5.合わせて、“今回の事故で見えた本質的リスク”を経営視点で伝える
情シス:「今回の障害で分かったのは、“クラウドサービスは単独ではなく、複数のサービスが連鎖して動く”という点です。Cloudflareに依存しているSaaSでは、ログインがしづらくなったり、社内システムへのアクセスが遅延したりする可能性があります。外部APIやECサイトも、Cloudflare経由で提供している場合は、一時的に利用や閲覧ができなくなることがあります。従業員の業務が停止するといった障害が連鎖して発生します」
Scene6.会社として備えるべき施策を、短期〜長期で伝える
情シス:「当社が同じリスクに備えるには、短期・中期・長期の3つの観点で対策を積み上げる必要があります。概要だけお伝えすると──“現状把握→仕組み強化→投資判断”という流れです。詳細は、こちらのメモに整理しています。」
メモ
短期:今日からできる改善策
- 依存しているクラウドサービスの棚卸し
- Cloudflare関連のサービス利用有無の明確化
- 影響範囲マップの作成(ログイン、API、Web接続)
中期:仕組みの強化
- 重要サービスの冗長化(Cloudflare依存を1点にしない)
- DNS(ドメインネームシステム)の二系統化
- 事業継続計画(BCP)として社内→外部の接続経路の代替ルートの確保
長期:経営判断が必要な投資
- ゼロトラストネットワークの整備
- 重要基幹サービスのサービスレベル契約(SLA)の見直し
- 外部サービス依存度の可視化と最適化
Scene7.投資判断を引き出すため、経営視点でのコメントで締める
情シス:「今回の障害は、“クラウド時代のインフラがどれだけ相互依存しているか”を示す象徴的な事件でした。もし当社の主要サービスが止まると、1時間当たりで受注、出荷、請求が止まり、直接的な損失が発生します。BCPと可用性の強化について、一度ご相談の時間をいただければと思います。」
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