GoogleとIBM、MicrosoftのAIサービスの特徴は? チャットbotやAIエージェントの開発に役立つツールを比較:企業で使えるAIサービス10個を比較【後編】
生成AIの登場によって、企業は自社の用途に合わせて細かく調整されたチャットbotやAIエージェントを開発できるようになった。本稿はGoogleとIBM、Kore.ai、Microsoft、OpenAIの5ベンダーのAIサービスを比較する。
企業向けAIチャットbotは、生成AIの登場によって単なる問い合わせ対応ツールから業務プロセスの自動化や従業員の生産性向上を支えるシステムへと進化しつつある。いまやさまざまなベンダーがAIチャットbotやAIエージェントの開発サービスを提供しているが、それぞれ機能や適した利用シーンが異なる。本稿では前編に続き、各ベンダーのAIチャットbotサービスを取り上げ、特徴や課題、適したユーザー企業像を比較しながら解説する。
目次
- 1.Amazon Web Services(AWS)の「Amazon Lex」と「Amazon Bedrock」(前編で紹介)
- 2.Anthropicの「Claude」(前編で紹介)
- 3.Automation Anywhereの「Aisera」(前編で紹介)
- 4.Boost AIの「Boost.ai」(前編で紹介)
- 5.Cognigyの「Cognigy」(前編で紹介)
- 6.Googleの「Conversational Agents」(旧Dialogflow CX)
- 7.IBMの「IBM watsonx Assistant」
- 8.Kore.aiの「Kore.ai」
- 9.Microsoftの「Azure OpenAI」と「Copilot Studio」
- 10.OpenAIの「ChatGPT Enterprise」
6.Googleの「Conversational Agents」(旧Dialogflow CX)
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連載:企業で使えるAIサービス10個を比較
AIチャットbotとAIエージェントについて詳しく
Google Conversational Agentsは、生成モデルやマルチモーダル機能を備えた対話型AIエージェント開発サービスだ。会話を業務プロセスに沿った段階として定義し、ユーザーの入力に応じて次の段階へ遷移させるフロー(状態遷移)ベースの設計が可能なことが特徴で、世界中のさまざまなチャネルへの利用に適している。Conversational AgentsはGoogle Vertex AIの一部で、さまざまな用途のチャットbotの開発を支援する基盤モデルとインフラを提供する。
- 主な用途
- カスタマーサービスや取引フロー(商品購入や申し込みなど)の自動化、音声アシスタントの構築、プロセス自動化、クロスチャネル戦略。
- 特徴
- 多言語対応のための機能が充実している。Googleのクラウドサービス群「Google Cloud」インフラで実行されるため、同サービスとの親和性が高い。フローベースの処理と従来の自由対話型の生成AIの処理の両方が可能な点が特徴だ。
- サービスの課題
- Google Cloudのサービス構成が複雑で、高度な機能は生成AIモデルを利用して処理する必要があるため、フローベースの処理の導入設計や運用に工夫を要する場面がある。
- 他のシステムとの連携機能
- SalesforceやServiceNowなどのサードパーティーベンダーが提供するサービスや、GoogleのDWH(データウェアハウス)サービスの「BigQuery」、コラボレーションツール、電話システムなどとコネクターやAPIを利用して連携させることが可能だ。
- どのような企業に適しているのか
- システムの世界規模での拡張や、多言語での自動化システムの構築を目指すユーザー企業に適している。
7.IBMの「IBM watsonx Assistant」
IBMの「IBM watsonx Assistant」は、対話型のAIアシスタント構築サービスで、クラウドインフラとオンプレミスインフラの両方で利用できる。ガバナンスやコンプライアンスのための管理機能を備えており、企業での利用に適している。
- 主な用途
- カスタマーサポートの自動化やHR(人事)部門、情報システム部門の社内サポート、金融業務のワークフロー自動化、医療サービス運用など。
- 特徴
- 管理機能が充実しており、規制の厳しい業界で利用できる。
- サービスの課題
- IBMのAI関連製品群「IBM watsonx」には多数のサービスや機能が含まれている。それらの機能は一部重複しているため、アーキテクチャの設計に注意が必要だ。
- 他のシステムとの連携機能
- APIやWebhook(あるシステムでイベントが発生したことを、別のシステムにリアルタイムで通知する仕組み)、オンプレミスインフラとのコネクター、企業アプリケーション連携、ハイブリッドクラウドインフラでの実行といった機能がある。
- どのような企業に適しているのか
- 細かいデータ制御機能を必要とし、厳格なコンプライアンス要件がある組織に適している。
8.Kore.aiの「Kore.ai」
Kore.aiの同名サービスは、チャットbotやプロセス自動化システムの開発を可能にする。銀行やヘルスケアなどの業界向けに特化したツールを備えている点が特徴だ。
- 主な用途
- カスタマーサービスやHR(人事)部門、情報システム部門の社内サポート、銀行の業務プロセスの自動化、ヘルスケアサービス、企業検索、ワークフロー自動化。
- 特徴
- エージェントオーケストレーション(複数のAIエージェントの協調動作)やマルチモーダル処理が可能な点、業界や業務別のアクセラレーター(開発テンプレートや業務関連機能)が250種類以上ある点が特徴だ。
- サービスの課題
- 機能が多岐にわたるため、システムの構築や管理の際に、構造化された導入手順やガバナンスが必要になる場合がある。
- 他のシステムとの連携機能
- CRM(顧客関係管理)システムやERP(統合基幹業務)システムとのコネクター、音声システムとの連携、ハイブリッドクラウドインフラやオンプレミスインフラでの実行が可能だ。インテントチューニング(ユーザーの意図を正確に理解して応答するようにAIモデルを調整すること)やAIエージェントオーケストレーションツールも利用できる。
- どのような企業に適しているのか
- 部署横断のチャットbotや自動化システムを、一つの製品やサービスで実現したい企業に適している。
9.Microsoftの「Azure OpenAI Service」と「Microsoft Copilot Studio」
Microsoftは、チャットbotを構築するためのAIモデルとインフラを提供する「Azure OpenAI Service」と、「Microsoft Office」アプリケーションに埋め込むためのAIエージェント開発を開発するためのサービス「Microsoft Copilot Studio」を提供する。
- 主な用途
- 顧客サービスチャットbotの構築、ワークフロー自動化、知識検索(ナレッジリトリーバル)、従業員向けの生産性支援AIアシスタント。
- 特徴
- Microsoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」が提供するID管理サービスやセキュリティサービス、「Microsoft 365」などのコラボレーションツールとの連携に加えて、OpenAIの最新のAIモデルが利用可能である点が特徴だ。
- サービスの課題
- さまざまな構成要素を組み合わせて複数部門向けの大規模なシステムを構築する場合、システム構成が複雑になりやすい。
- 他のシステムとの連携機能
- Azure Cognitive Services、Microsoft Graph、Teams、Office アプリケーションに利用可能なAIエージェントの構築が可能だ。ファインチューニング(特定の用途に最適になるようにAIモデルを調整すること)機能やナレッジ検索機能も利用できる。
- どのような企業に適しているのか
- Microsoft AzureやMicrosoft 365などのMicrosoftサービスを主要な業務システムとして利用する企業に適している。
10.OpenAIの「ChatGPT Enterprise」
OpenAIの「ChatGPT Enterprise」はAIモデルの「GPT」シリーズとそれを実行するインフラを提供する、企業向けのサービスだ。企業向けのチャットbotを構築するための基礎として機能する。
- 主な用途
- ナレッジ検索の自動化や業務アシスタント、コード生成、コンテンツ生成。
- 特徴
- 業界をリードする推論能力と言語性能を備えたAIモデルが利用可能な点が強みだ。
- サービスの課題
- 標準で用意された企業向けコネクターが本稿で紹介した他のサービスと比較して少ないため、システム連携にはAPIを自前で実装したりパートナー企業のツールを用意したりする必要が生じることがある。
- 他のシステムとの連携機能
- APIやSDK(ソフトウェア開発キット)を通じて、サードパーティーのチャットツールや業務システムと連携できる。特定の用途や業務向けに設定された「Custom GPTs」の作成やファインチューニング、RAG(検索拡張生成)の利用が可能だ。
- どのような企業に適しているのか
- 自社独自の要件に基づいて対話型のシステムを構築したい企業にとって有力な選択肢になる。
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