SAP ERP「自律型AI」導入はなぜ難しい? 成功と失敗の境界線:3週間で成果を出す“現実解”
SAPやOracleが提唱する「自律型AI」はERP運用の救世主か、それとも新たな負債か。先行導入を率いるエキスパートが、短期間で成果を出すための構築プロセスを語る。
AI(人工知能)技術を使ってさまざまなタスクを自律的に実行する「エージェンティックAI」は、ERP(統合基幹業務システム)分野で注目されているトレンドの一つだ。SAPやOracleなどERPベンダー各社は、自社ニーズに合ったAIエージェントの構築ツールを提供し、ユーザー企業にとって選択肢が広がりつつある。
SAPのERPのAIエージェント利用に取り組んでいる1社が、ITコンサルティング会社Capgeminiだ。同社はAIエージェントをどのように使っているのか。Capgeminiのバイスプレジデントで、技術とイノベーションの最高責任者を務めるジャンルカ・シメオネ氏に聞いた。
エージェンティックAIの成果を出すためには
SAPは2023年頃に生成AIが登場したときから、生成AIを同社のERP製品に採用することに取り組んでいる。まず、AIエージェント「Joule」を投入し、その後、エージェンティックAIを用いた機能を広げてきた。AIの効果を高めるためには、SAPのERPや外部から分析用データを統合して管理するためのツール「SAP Business Data Cloud」も提供している。
しかし、SAPのエージェンティックAIを活用するためのシステム構築は容易ではない――。そう語るのは、Capgeminiのシメオネ氏だ。同社はフランスに本社を置き、世界各国でITコンサルティングを手掛けている。シメオネ氏はCapgeminiでSAPのエージェンティックAIの導入を統括し、システムの設計や開発、調整のプロセスからさまざまな教訓を得ているという。
シメオネ氏はイタリアのミラノを拠点としており、SAP製品のシステム開発について20年以上の経験を持つ。同氏は2013年に、CapgeminiにSAPエンタープライズアーキテクトとして入社し、その後、「Amazon Web Services」(AWS)、「Google Cloud」「Microsoft Azure」といったクラウドサービスに関する開発を担当した。近年は、SAPのエージェンティックAI利用に注力している。
例えばある石油・ガス会社向けプロジェクトでは、シメオネ氏のチームがJouleのAIエージェント開発ツール「Joule Studio」を使用し、SAPと非SAPの製品や技術を組み合わせたシステムで動作するカスタムAIエージェントをわずか3週間で開発した。そのAIエージェントを用いて調達から支払いまでのプロセスを自動化したと同氏は説明する。
シメオネ氏は、異なるベンダーやツールからのAIエージェントが協力して動作する「マルチエージェントオーケストレーション」がまだ開発段階にあると述べる。現在、Capgeminiはプロトコルの標準に取り組んでいる。同社はSAPとGoogleと手を組み、Googleのオープンプロトコル「Agent2Agent」(A2A)を利用して、両方のAIエージェントが相互に通信しデータを共有できるようにする実証実験を進めているという。今後、この仕組みをユーザー企業に提供する予定だ。
シメオネ氏によると、AIエージェント連携の価値は特定のビジネスプロセスをエンドツーエンドで調整し、包括的な自動化につなげる点にある。「CapgeminiがシステムインテグレーターとしてSAPとクラウドベンダー、ユーザー企業の間に入り、調整役としてAIエージェントの価値を引き出したい」と語る。
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