「スピード優先、低品質」なソフト開発が招く”負の連鎖” 休日出勤やクレーム処理も :深刻化するQAエンジニア不足
システムの不具合は売り上げ減だけではなく、緊急の復旧作業などの重い負担を生む。約7割の企業が、低品質に起因するトラブル収束までに多大な時間と労力を奪われている。目先の費用削減が招く、品質リスクの実態とは。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やアジャイル開発の浸透によって、ソフトウェアやWebサービスの開発にはかつてないスピードが求められている。しかし、市場への投入スピードを重視するあまり、品質保証に十分な資源を割り当てることができず、リリース後の不具合や仕様不備に悩まされる現場が散見される。
ITエンジニアの派遣事業を展開するラクスパートナーズは、2026年3月19〜20日に、開発プロジェクトにおける品質保証の実態に関する調査を実施した。本調査は、ソフトウェアやWebサイト、アプリケーション開発に携わる経営および事業責任者、部門責任者、プロジェクトマネジャー、エンジニア、エンジニア採用担当者の計1003人を対象に実施された。
調査結果からは、全体の7割以上の企業が内製あるいは外部パートナーを含めて専任の品質保証担当者を活用しているにもかかわらず、過半数の企業が低品質を原因とする深刻な事業損失を経験しているという厳しい現実が浮き彫りになった。その被害は一時的なものにとどまらず、修復に向けて多大な労力を奪う結果を招いている。
多大な事業損失をもたらす品質リスクに対し、企業はどのように対策を講じようとしているのか。体制を強化する上で、どのような障壁が立ちはだかっているのか。
深刻化する低品質の代償
2025年3月から2026年3月の直近12カ月間で、不具合や障害、仕様不備などの低品質が原因で事業上の損失や機会損失を経験したかという問いに対し、「はい(複数回)」が25.5%、「はい(1回)」が32.3%に上った。合わせて約6割の企業が実際の損失を経験しており、低品質が事業運営に直接的なダメージを与えている実態が明らかになった。
具体的な損失内容としては、「リリース延期/差し戻しによる機会損失」が33.5%で最多となった。次いで「売上機会損失(購入離脱/停止による売上減)」が28.6%、「緊急の不具合修正による工数損失(残業や休日出勤によるカバー)」が27.6%と続く。サービスの公開遅延による機会損失や売り上げへの直接的な打撃が上位を占め、品質低下が企業の利益を強く圧迫している状況がうかがえる。緊急対応による工数増や顧客からのクレーム処理や状況説明といった二次的被害も発生しており、単なる修正作業の増加にとどまらず、現場の疲弊や企業ブランドへの信頼低下を招く重大な要因となっている。
損失から復旧するまでに要した規模感については、「中規模(数日程度の復旧期間)」が46.9%、「大規模(1週間以上の復旧期間)」が23.5%に達した。これらを合わせると、約7割の企業がトラブルの収束までに多大な時間と労力を費やしている。数時間から1日程度で収束する「軽微」なケースは23.1%にとどまっており、一度不具合が流出すれば、そのリカバリーには膨大な費用と人手が要求されることが示されている。
体制強化への意欲と立ちはだかる採用の壁
こうした深刻な品質リスクへの危機感を背景に、企業は品質保証体制の強化に向けて積極的に動き出している。2026年3月から2027年3月の今後12カ月における体制強化の意向について尋ねたところ、「すでに強化中」から「12カ月以内に検討したい」という回答を合わせると、全体の約7割が人員拡充や投資に前向きな姿勢を示した。システムの高度化や複雑化が急速に進む中、網羅的なテストや品質管理を少人数でカバーすることは事実上困難になりつつあることが背景にあると考えられる。
しかし、体制強化を図る上では、専門人材の確保という大きな壁が存在している。品質保証を担うエンジニアの採用が進まない理由として最も多かったのが「求めるスキルの人材がいない」で、32.0%を占めた。次いで「年収レンジが合わない/採用競争が激しい」が26.1%となった。即戦力となる高度なスキルを持った人材が市場全体で不足していることに加え、企業間での獲得競争が激化しており、条件面での折り合いがつかない状況が浮き彫りになった。
「社内に育成/オンボーディング(受け入れ)体制がない」を理由に挙げる企業も19.7%存在した。即戦力の採用が難航する一方で、未経験者や若手を採用して自社で育成することも難しく、体制の拡充が停滞してしまう現場の実情が明らかになった。
「経費」から「重要な事業投資」への転換
今後のソフトウェア開発現場においては、品質保証を単なる開発の最終工程や消化すべき経費として捉える、従来の認識を改める必要がある。事業損失を未然に防ぎ、提供するサービスの価値を根底から高めるための重要な事業投資として明確に位置付けることが不可欠だ。
自社での人材採用や育成に限界を感じている場合、専門技術に特化したエンジニアなど、外部の専門的な知見を持つパートナーの活用は有効な解決策になる。社内の教育体制の抜本的な見直しとともに、こうした外部サービスを賢く活用する戦略的なアプローチが、慢性的な採用難の時代を乗り越え、強固で安定した開発体制を構築するための鍵になる。
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