50代管理職の63%が「AIを活用できていない」 育てる側が育っていない:AI人材育成最大の壁は? SHIFT AI調査
SHIFT AIは、管理職・経営層271人を対象にした生成AI活用調査を発表した。AI活用スキルが評価や昇進に影響するとの認識が広がる一方、管理職自身の活用不足が課題として浮かんだ。AI人材育成の最大の壁は?
生成AIの活用が広がる中、企業ではAIを使いこなせる人材の獲得や育成が重要な経営課題になりつつある。AI活用力は業務成果だけでなく、人材評価や昇進にも影響し始めている。一方で、管理職や経営層自身が十分にAIを使いこなせているとは限らない。AI人材を育てる側がAIを理解し、学習機会や利用ルールを整えられるかどうかが問われている。
生成AI学習コミュニティを運営するSHIFT AIは2026年6月26日、全国の管理職・経営層271人を対象に実施した「管理職・経営層のAI活用実態と、AI時代の人材評価に関する意識調査」の結果を発表した。調査期間は2026年6月16〜22日。対象は、部下を持つ会社員の管理職、経営者、役員だ。
AI人材育成最大の壁は?
調査によると、業務で生成AIを利用している管理職・経営層は72.3%だった。内訳は「毎日利用している」が25.5%、「週に数回利用している」が29.9%、「月に数回利用している」が17.0%だ。一方、「利用していない」も27.7%あり、部下を持つ立場であっても生成AIに触れていない層が一定数存在する。
自身が生成AIを十分に活用できているかを尋ねると、「十分活用できている」は14.0%にとどまった。「ある程度活用できている」の35.4%を合わせても49.4%で、半数に届かない。「あまり活用できていない」は28.0%、「全く活用できていない」は22.5%で、合計50.6%が活用に課題を感じていた。
AI人材を育成するには、管理職や経営層が「どの業務でAIを使えるのか」「どのような成果を評価すべきか」を理解している必要がある。利用率は7割を超えるものの、使いこなせていると感じる人が半数以下にとどまる現状は、人材育成を進める上での大きな制約になる。
AI活用スキルは評価・昇進に影響する
生成AIの活用によって社員の業務成果に差が生じると思うかを聞くと、「非常にそう思う」が23.2%、「ややそう思う」が44.6%で、肯定的な回答は67.9%に上った。
今後、生成AIを活用できる人材とそうでない人材で評価や昇進に差が生じると思うかを尋ねた設問でも、「非常にそう思う」が20.3%、「ややそう思う」が39.9%で、合計60.1%が肯定した。
今後3年以内に社員の評価や昇進に影響すると思うスキルでは、「AI活用スキル」が39.5%で最も多く、「IT・データ活用スキル」が33.2%で続いた。3位は「コミュニケーション能力」の25.5%、4位は「専門知識・専門スキル」の24.7%だった。
AI活用スキルが評価対象になれば、企業はAI人材の獲得や育成を避けて通れない。ただし、単に生成AIツールを使える人材を増やすだけでは不十分だ。AIの出力を検証し、業務判断に落とし込み、成果につなげる力まで育てる必要がある。
一方で、AIの出力を吟味するために重要となる「論理的思考力」は11.1%、「批判的思考力」は4.1%にとどまった。AI活用スキルを評価軸に入れるなら、プロンプト作成やツール操作だけでなく、出力の妥当性を判断する力も育成対象に含める必要がある。
50代管理職の活用遅れが、人材育成の壁になる
年代別に見ると、管理職・経営層のAI活用には大きな差があった。「AIを活用できていない」と答えた割合は、30代が33.4%、40代が48.1%、50代が63.2%、60代が51.5%だった。特に50代では、30代の約2倍に達している。
50代の内訳を見ると、「あまり活用できていない」が34.0%、「全く活用できていない」が29.2%だった。研修を「実施していない」とする割合も、30代の28.9%に対して50代は58.5%と高い。
40〜50代は、現場のマネジメントや人材評価を担う中核層である。この層がAIを十分に理解していなければ、部下のAI活用を正しく評価できず、育成方針も曖昧になりやすい。AI人材を増やすには、若手だけでなく、評価する側である管理職のリスキリングが欠かせない。
評価や昇進への危機感は若い年代ほど高く、AI活用力によって差が生じると答えた割合は30代で66.7%、50代で56.7%だった。AI活用力の重要性を強く意識する層と、実際に活用できていない層がずれている。このずれを放置すると、世代間で育成機会や評価への納得感に差が生まれる可能性がある。
小規模企業ほどAI人材育成の土台が不足している
企業規模による差も明らかになった。従業員50人未満の企業では、「AIを活用できていない」と回答した割合が65.1%に上った。従業員1000人以上の企業では39.6%で、25ポイント以上の差がある。
業務でAIを利用している割合も、従業員50人未満では50.8%にとどまった。一方、従業員1000人以上では82.4%だった。
研修体制にも差がある。従業員50人未満では、生成AIに関する研修を「実施していない」が69.8%だった。従業員1000人以上では26.4%にとどまる。生成AIの利用ルールが「整備されている」と答えた割合も、50人未満では3.2%、1000人以上では28.6%だった。
大企業は専任人材や教育予算を確保しやすく、AI人材の育成プログラムや利用ルールを整えやすい。一方、中小・小規模企業では、AI人材を外部から獲得することも、社内で育成することも容易ではない。研修、利用ルール、相談先が不足したままでは、AI活用は個人任せになり、組織全体の能力向上につながりにくい。
経営層がAIを使えなければ、人材戦略も進まない
自社で生成AIの活用が最も進んでいる層を尋ねると、「管理職」が33.9%、「現場の一般社員」が32.5%でほぼ並んだ。「層による差はない」は26.2%だった。一方、「経営層・役員」を挙げたのは7.0%にとどまった。
AI人材の獲得や育成は、人事部門や情報システム部門だけで完結するテーマではない。どの業務にAIを使い、どのような成果を期待し、どの職種にどの程度のAI活用力を求めるのかは、経営判断に関わる。経営層自身のAI活用が遅れれば、人材要件や投資判断も曖昧になりやすい。
管理職・経営層が懸念していることでは、「AIを活用できる人材とできない人材の格差拡大」が33.9%で最も多かった。次いで「情報漏えい・セキュリティリスク」が32.1%、「AI依存による社員の思考力・スキル低下」が26.6%だった。「評価制度が実態に合わなくなること」も18.1%あった。
AI人材を増やすには、積極的に使わせるだけでなく、安全に使うためのルール、成果を測る評価基準、AIに依存し過ぎない業務設計が必要だ。こうした土台がないままAI活用力を評価に組み込めば、現場の不公平感やリスクの増大につながりかねない。
AI人材育成の最大の壁は「学ぶ時間」
生成AI活用をさらに進めるために必要なものを聞くと、1位は「社員がAIを学ぶ時間」の44.6%だった。2位は「自分がAIを学ぶ時間」の42.4%で、学習時間の確保が上位を占めた。
3位は「社内の推進人材」と「明確な活用ルール」がいずれも28.8%だった。「相談できる相手・伴走支援」は20.3%、「経営層の理解・関与」は19.9%、「予算」は19.2%だった。
AI人材の育成というと、研修コンテンツやツール導入に目が向きがちだ。しかし調査結果は、現場が求めているのは、学ぶ時間、相談できる相手、利用ルール、推進体制であることを示している。業務時間の中でAIを試し、成果や失敗を共有し、実務に合った使い方を定着させる仕組みがなければ、人材育成は一部の意欲ある社員任せになる。
AI活用力が評価や昇進に影響するという認識が広がる中、企業はAI人材をどう獲得し、どう育てるかという課題に直面している。外部からAIに詳しい人材を採用するだけでは不十分だ。管理職や経営層自身がAIを理解し、社内で学ぶ時間とルールを整え、評価制度に落とし込むことが求められる。AI人材育成の出発点は、現場任せではなく、管理職・経営層が自ら使い、育成環境を設計することにある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.