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申請書600種を100種に集約 老舗チョコメーカーが1年でやり遂げた“脱・紙”「紙をデータ化する」だけでは失敗する

プロパー社員、属人化、アナログ文化を前提とする企業がDXで成果を出すには? 業務用製菓メーカーの日新化工は、紙中心の申請業務を1年でデジタル化した。システムの導入を進める上での秘訣は何だったのか。

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 業務用チョコレートメーカーの日新化工は、年間数万件に上る紙中心の申請業務を見直し、年間申請数の約7割に当たる約1万4000件をデジタル化した。600種類以上あった申請書を約100種類に集約し、用紙購入量を40%削減した。

 同社が目指したのは、紙の申請書を電子化することだけではない。承認後のデータ転記や関係者への通知、基幹システムからのデータ取得も自動化し、申請業務の前後に残る手作業を減らした。工場を含む各部門が導入に参加したことで、社内には「デジタルが当たり前」という意識も広がりつつある。

 約80年にわたり事業を続けてきた企業は、根強く残るアナログな業務文化をどのように変えたのか。日新化工が、住友電工情報システムの電子承認・電子決裁システム「楽々WorkflowII Cloud」を起点に進めたDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトを紹介する。

導入開始から約1年で成果を創出 その秘訣は

 日新化工は1948年設立の業務用チョコレートメーカーだ。同社は生え抜きの従業員が多く、熟練者が持つ技術やノウハウを事業上の強みとしてきた。一方、社内にはアナログな組織文化が根強く残り、多くの業務が紙の帳票を前提に運用されていた。

 しかし、紙の帳票に情報が閉じ込められたままでは、熟練者の知識や業務データを共有し、組織的に活用することが難しい。情報が個人や部門にとどまり、属人化する懸念もあった。

 さらに、同社は千葉県の船橋市や東金市に工場を構え、札幌市や名古屋市にも営業所を展開している。拠点をまたいで紙の帳票を承認者に回すため、社内便や郵送を利用しなければならず、申請や情報共有に時間がかかっていた。

 こうした状況を変えるため、日新化工は2023年に「DX推進室」を設置し、組織変革を目的とする全社的なDXプロジェクトを始動した。

 同社が最初に着手したのが、紙の削減である。情報共有やデータ活用を進めるためには、業務情報を紙からデジタルデータへ移す必要があると考えたからだ。中でも紙の利用量が多かった申請業務を対象に、ワークフローシステムを導入することにした。

既存業務に対応する柔軟性と、外部システムとの連携性を重視

 ワークフローシステムの選定に当たり、日新化工が重視したのは、既存の承認業務に対応できる柔軟性である。

 同社には、長年の事業活動を通じて形成された独自の組織文化や業務手順がある。申請内容や申請者の所属などに応じた回付ルートの自動選択、複雑な条件分岐、承認者が不在の場合の代理承認など、日本企業の細かな運用に対応できる機能が必要だった。

 もう1つの選定条件が、他のシステムと連携できることだ。日新化工が目指していたのは、紙の申請書を電子フォームに置き換えるだけではない。承認前後に発生するデータ入力や転記、通知といった作業も含めて自動化する必要があった。

 同社は、既存の業務フローに対応する柔軟な機能に加え、「Webhook」(複数のWebサービスを連携させる仕組み)や「WebAPI」(API提供者とAPI利用者とのやりとりをHTTP/HTTPSベースで実現するAPI)を使って外部システムと連携できる点を評価し、楽々WorkflowII Cloudを採用した。

各拠点が導入を主導、600種類以上の帳票を整理

 システムの導入は、DX推進室や情報システム部門だけで進めたわけではない。日新化工は、本社と船橋、東金の各拠点に導入リーダーを配置し、その下に各1〜3人の導入担当者を置いた。各拠点や部門が、自分たちの業務で使用する申請書や承認ルートを確認し、現場主導でシステムを構築する体制を整えた。

 導入作業と並行して取り組んだのが、紙の申請書の棚卸しだ。社内で使われていた600種類以上の申請書をリストアップし、重複するものや利用されていないものを整理・統廃合した。

 既存の帳票をそのまま全て電子化するのではなく、申請業務そのものを見直したことで、業務のスリム化とシステム構築の効率化につなげた。

 プロジェクトには、普段はITに接する機会が少ない工場の製造部員も参加した。個人用PCを持たない従業員も、承認ルートの設定や申請書の修正といった操作を繰り返すことでシステムに慣れていったという。

 各拠点に複数の担当者がいたことも、導入を支えた。分からないことがあっても、同じ時期に類似した作業を進めている従業員同士で相談し、解決できる体制ができていた。

 こうした現場参加型の導入を進めた結果、日新化工はプロジェクト開始から約1年で楽々WorkflowII Cloudを全社展開した。

年間約1万4000件をデジタル化、用紙購入量を40%削減

 現在、日新化工では、年間申請数の約7割に当たる約1万4000件を楽々WorkflowII Cloudで処理している。600種類以上あった申請書は、統廃合によって約100種類に集約された。

 紙の使用量も減った。同社は導入前、年間130箱以上の用紙を購入していたが、システム導入後は購入量を40%削減した。

 紙の帳票を承認者の席まで持ち回ったり、遠隔拠点から郵送したりする作業もほぼなくなった。申請者や承認者は、帳票が到着するまで待たずに手続きを進められるようになった。

 紙の保管場所や固定席での帳票処理が不要になったことで、働き方にも変化が生まれた。本社では、従業員が決まった座席を持たないフリーアドレス制を導入することができた。

承認後のExcel転記とTeams通知を自動化

 日新化工は、申請書の電子化に加えて、申請業務の前後に発生していた作業の自動化も進めている。

 その一例が、営業担当者が製造部門に提出する「特注品製造依頼」である。この申請書には、顧客から受注した商品の量や加工方法などを記載する。

 従来は申請が承認された後、製造部門の担当者が申請内容を「Microsoft Excel」(以下、Excel)の管理表へ手作業で転記していた。電子化によって申請そのものが効率化されても、承認後に転記作業が残れば、入力の手間やミスのリスクは解消されない。

 そこで同社は、楽々WorkflowII CloudのWebhookを使い、承認後のデータをMicrosoft 365の「Power Automate」へ送信する仕組みを構築した。

 Power Automateは受け取ったデータをExcelの管理表へ自動で転記し、処理が完了すると「Microsoft Teams」で関係者に通知する。これにより、担当者が申請内容をExcelに入力し直し、別途完了を連絡する作業を省いた。

 現在は、管理表に蓄積されたデータを「Microsoft Copilot Studio」のAI機能で要約し、別の業務に二次利用する仕組みの整備も進めている。

基幹システムのマスターデータを申請書に反映

 日新化工はWeb APIを使い、基幹システムとのデータ連携も実現している。

 申請書を作成する際、商品名や取引先名などを申請者が手入力すると、入力に時間がかかるだけでなく、表記揺れや入力ミスが生じる可能性がある。

 同社は、楽々WorkflowII Cloudから基幹システムのWeb APIを呼び出し、基幹システムが保有するマスターデータを取得する仕組みを構築した。

 申請者がフォーム上の参照ボタンを押すと、取得したデータが一覧で表示される。利用者が必要な項目を選択すると、申請書に内容が自動反映されるため、手入力を減らしながら正確なデータを使用できる。

 こうした連携を他の申請業務にも広げ、申請書の作成から承認後の処理まで、一連の業務を効率化している。

「紙を電子化する」から「デジタルが当たり前」へ

 日新化工がワークフローシステムの導入で得た成果は、用紙や作業時間の削減だけではない。

 全ての部門が日常的にデジタルのワークフローを使うようになったことで、紙を回付する業務や、同じ情報を手作業で転記する業務は非効率であるという認識が社内に広がった。

 DX推進室は、この意識の変化を「最大の収穫」と位置付けている。システムを一部の部署だけで利用するのではなく、ITに不慣れな従業員を含めて全社で使う仕組みにしたことが、「デジタルが当たり前」という風土の醸成につながった。

 同社は現在、工場へのデジタルサイネージの導入や、生成AIを使ったヘルプデスク業務の自動化など、新たなDX施策にも取り組んでいる。

 紙の申請書をなくす取り組みは、単独のペーパーレス化施策ではなく、業務データを活用し、周辺作業を自動化するための土台になった。日新化工は、ワークフローシステムを全社員がデジタルに触れる入口とすることで、その後のDXを進める組織文化の変革につなげた。

(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「日新化工、ワークフロー導入で用紙4割削減 業務自動化で風土改革」(2026年7月16日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。

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