フィジカルAIが変える現場の現実 シャープら44社がNoetraに参画:海外依存脱却へ1兆円規模の国家プロジェクト
海外製AIへの依存が強まる中、シャープら国内有力44社が1兆円規模の国産AI開発プロジェクトに結集した。ロボットを自律制御する「フィジカルAI」の実現は、日本の産業競争力をどう変えるのか。
「言語モデルはすごいが、工場のロボットを自律的に動かすとなると話は別だ」。そんな現場のジレンマを解消するため、国内有力企業44社が1兆円規模の巨大プロジェクトに結集した。
シャープも参画を決めた新会社「Noetra(ノエトラ)」が狙うのは、海外製AIへの依存脱却だけではない。物理空間で自律的に動く「フィジカルAI」という次なる産業の主戦場だ。電機、自動車、建設など44社もの異業種連合が同じ船に乗った背景には、日本の産業競争力を左右する切実な危機感と、実務に即した戦略的な勝算がある。
1兆円規模で国産マルチモーダル基盤モデルを開発
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シャープは2026年7月17日、ソフトバンクや本田技研工業などが主導するNoetraに出資し、国産AI基盤モデルの実現に向けた枠組みへの参画を発表した。
Noetraは2026年7月1日に事業を開始した新会社で、AIロボットやフィジカルAIの開発基盤となる「国産マルチモーダル基盤モデル」の研究開発を推進している。同社と国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)が提案したプロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」に採択された。2030年度までの総事業規模は約1兆円が見込まれている。
開発の核となるマルチモーダル基盤モデルとは、言語だけでなく音声、画像、動画、センサーデータなど多様なデータを統合して扱うことができるAIモデルを指す。Noetraには2026年7月16日時点で、電機、自動車、製薬、建設、金融といった製造業を中心とした国内有力企業44社が出資している。
海外依存を脱却し「物理世界を動かすAI」を確保
今回の参画の背景には、急速に進む海外製AIへの依存に対する危機感がある。現在、国内では海外の大規模AI基盤モデルへの依存度が高まっており、産業競争力の維持や経済安全保証から見て国内で開発・運用が可能な基盤モデルを確保することが重要な課題となっていた。
特に期待されているのが「フィジカルAI」の実現だ。センサーやカメラから得た情報をAIが解析・判断し、その結果に基づいてロボットや移動機器が自律的に物理的な行動を行う技術である。シャープは、こうしたフィジカルAIの社会実装についての知見や動向を早期に獲得することが自社のAI事業展開で有用であると判断した。
シャープは2026年6月に発表した事業方針で、あらゆるシーンにAIを掛け合わせる方向性を打ち出している。既存事業の変革に加え、AIサーバ、衛星通信、電気自動車(EV)といった新規事業の立ち上げを加速させている。また、鴻海精密工業との連携でもAIを核に据えており、Noetraを通じて得られる技術や知見をこれら広範な製品・サービスへ活用していくとしている。
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