偽情報や誤情報の拡散経験者は「リテラシーテスト全問不正解」が2倍 総務省:誤情報拡散の影に「過信」あり
総務省は全国5640人を対象としたICTリテラシー実態調査を実施した。偽情報や誤情報を拡散した人は未経験者に比べ、テストの全問不正解率が約2倍に上り、情報に対する過信と拡散行動の相関が浮き彫りになった。
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の普及や生成AIの進化に伴い、根拠がない偽情報や誤情報が瞬時に拡散し、社会的な混乱を招く事態が相次いでいる。企業においても、従業員による不確かな情報の発信や誤情報の拡散が、ブランド毀損(きそん)やセキュリティリスクにつながる懸念がある。
こうした中、総務省は2026年5月8日から13日にかけて、インターネット利用者のICTリテラシーに関する調査を実施した。対象になったのは全国47都道府県の15歳以上の男女5640人だ。全5問のテストを実施した結果、全問正解者はごくわずかにとどまった一方、全問不正解者が4割近くを占めた。過去に偽情報や誤情報を何らかの形で拡散した経験を持つ層とそうではない層を比較すると、テストの正答率に顕著な差が見られた。
なぜ人は偽情報や誤情報を拡散してしまうのか。企業のセキュリティやリテラシー教育を担うIT担当者は、この実態をどのように受け止め、対策を講じるべきなのか。調査結果から、拡散を防ぐための具体的なアクションが見えてきた。
過信が招くリスクと、拡散行動の実態
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身に付けるべき知識
誤情報の拡散経験と利用者のICTリテラシーには、統計的に明確な相関があることが判明した。本調査で実施されたリテラシーテストにおいて、全問正解できた回答者は全体の5.6%にとどまり、全問不正解者は39.5%に上った。
偽情報や誤情報を「拡散した」と回答した群において、リテラシーテストの全問不正解率は48.9%に達している。これに対し、「拡散していない」と回答した群の全問不正解率は24.7%だった。ICTリテラシーが低い層ほど、誤った情報を安易に拡散してしまうリスクが約2倍高いことを示している。
AI技術を用いて合成された「ディープフェイク」などの偽コンテンツについて、「自分は見破ることができる」と回答した層は、テストの全問不正解率が61.5%と突出して高かった。「自分はだまされない」という根拠のない過信が、かえって偽情報に対する脆弱(ぜいじゃく)性を生み出している皮肉な構図が浮かび上がる。
だまされないと考える理由として、「気になる情報は自分で検索して確認しているから」(38.6%)などが上位に挙がるものの、実際には自分のICTリテラシーについて「平均的、または平均より高い」と自己評価している人は全体の83.0%に上る。自己認識と客観的なリテラシーレベルの間には深刻なギャップが存在しており、このギャップが偽情報の拡散を助長する一因になっている。
「立ち止まる行動」の重要性と認知バイアスのわな
では、偽情報や誤情報の連鎖的な拡散を防ぐにはどうすればよいのか。有効な防波堤が、SNSなどで情報を投稿、拡散する前に「一度立ち止まって考える」行動だ。
調査では、SNS上で見かけた情報に対して立ち止まって考える意向を持つ人が79.2%に上った。しかし、実際に偽情報や誤情報を拡散してしまった人のうち、45.8%は「立ち止まって考えずに拡散した」と回答している。さらに気掛かりなのは、残りの54.2%が「立ち止まって考えたにもかかわらず拡散してしまった」と答えている点だ。情報についていったんは考えたものの、結果として誤情報の発信を食い止められなかったケースが半数を超えている。
ここで重要になるのが「認知バイアス」の理解だ。人は無意識のうちに、自分の考えや好みに合う情報ばかりを集め、信じ込んでしまう傾向がある。調査結果によれば、認知バイアスを「知識として知っている」と答えた割合は、拡散経験者の方が多かった(66.5%対52.3%)。その一方で、認知バイアスを「自分も持っている実感がある」と答えた割合は、拡散未経験者の方が高かった(59.3%対54.3%)という逆転現象が見られた。
この結果は、認知バイアスという概念を単なる知識として知っているだけでは意味がなく、「自分にも起こり得る思考の癖」として自覚することが、慎重な情報判断と拡散抑制につながることを示唆している。
リテラシー向上に向けた課題と求められる仕組み
インターネット利用者の大半が自分のリテラシーを平均以上だと見積もっている一方で、ICTリテラシー向上のための具体的な取り組みをしていない人は65.8%に上る。その理由として最も多かったのが「取り組み方が分からない」(50.4%)だった。学ぶ意欲が完全に欠如しているわけではなく、日々の生活の中でどのように情報と向き合えばよいのか、適切な手段が提供されていないことが大きな障壁になっている。
利用者からは、ICTリテラシー向上を助ける具体的な仕組みとして、「フェイクニュース注意報」「ファクトチェック結果の表示」「出典の明示」といったシステムの機能実装を望む声が多く挙がった。安心できる情報社会の実現に向けて、マスメディアやWebメディア、大手SNS事業者といった情報発信の主体に対し、「正しい情報の発信」を強く期待する声が目立った。
IT担当者が主導して社内体制を整える上では、以下の施策が効果的だ。
- リテラシー診断、チェックツールの導入
- 従業員の客観的な知識レベルと自己認識のギャップを可視化する。
- 実際のトラブル事例を用いたケーススタディー研修
- 単なるルール周知ではなく、認知バイアスによって「正義感や不安感から誤情報を社内外に共有してしまうケース」を疑似体験してもらう。
- 情報発信時のガイドライン整備とシステム支援の検討
- 従業員が情報ソースを確認しやすい仕組みを構築したり、ファクトチェックを支援する社内ツールを提供したりする。
総務省は今回の調査結果を踏まえ、官民連携プロジェクト「DIGITAL POSITIVE ACTION」を通じた普及啓発教材の作成や、認知バイアスに着目した周知活動をさらに推進する構えだ。社会インフラとして欠かせないデジタル空間を安全に保つためには、利用者一人一人の自覚を促す教育にとどまらず、情報を提供する各種サービス事業者側が情報の真偽確認を直感的に行える機能的支援を提供することが、今後の重要な戦略となる。
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