よく知られている「クラウドバックアップ」のメリット、ではデメリットは?適切なプロバイダーを選ぶために確認したい

クラウドベースのバックアップは、安価な帯域幅とキャパシティーの最適化テクノロジーにより、テープなどの持ち運び可能なバックアップメディアの代替テクノロジーとして人気を集めている。

2015年10月01日 10時00分 公開
[Lauren WhitehouseTechTarget]

 現在クラウドベースのデータバックアップで一般的に使用されているアプローチには2種類ある。1つはSaaS(Software as a Service)で、もう1つはクラウドストレージサービスだ。オンプレミスソフトウェアとセカンダリストレージの代替手段として利用できるバックアップSaaSは、ホストと管理を一元的に行い、ブラウザベースのインタフェースでアクセスするWebネイティブのアプリケーションだ。通常SaaSには、マルチテナントアーキテクチャと公共料金のような価格モデルという特徴がある。マルチテナントアーキテクチャでは、データを仮想的に分離した状態で維持する共有のスケーラブルなインフラストラクチャが採用されている。保護対象のシステムに常駐する軽量エージェントでは、プライマリサイトのデータをクラウドに送信する。

 クラウドストレージサービスは、オンプレミス/オフプレミスのコンポーネントを融合したアプローチだ。バックアップの場合、IT部門は、オフプレミスのサービスやインフラ(高性能なコンピュータ、ネットワークおよびストレージリソースを収容する大規模なデータセンター)を利用しながらソフトウェアと、必要に応じてハードウェアをオンプレミスで管理する。バックアップサービスの料金は、使用量に応じてユーザーに請求される。基準となるのはキャパシティー、帯域幅またはシート数だ。

クラウドベースのバックアップで考えるべきこと

 クラウドには長所がある。そして、クラウドベースのバックアップには複数のメリットがある。どちらのクラウドベースのバックアップテクノロジーのアプローチも便利だ。その理由としては「インターネットに接続している任意のデバイスから情報にアクセスできる」「情報が共有しやすい」「セキュリティ機能が組み込まれている」「デジタル情報を管理/検索/取得/転送しやすい」という点が挙げられる。また、バックアップストレージの全て/一部の管理を外部委託した場合と比較すると、コストや予算に関するメリットを得られる可能性もある。

クラウドベースのバックアップに関するメリット

 クラウドベースのバックアップを使用すると、次のような幾つかのメリットがある。

効率性と信頼性

 クラウドサービスプロバイダーは「SAS 70」の認定を受けたデータセンターで最新鋭のテクノロジーを使用している。例えば、ディスクベースのバックアップ、圧縮、暗号化、データ重複排除、サーバ仮想化、ストレージ仮想化、アプリケーション固有の保護機能などだ。大半のクラウドサービスプロバイダーは、自社の証明書を使用したセキュリティ機能に加え、24時間365日体制の監視/管理/リポートという、多くの企業が資金的な理由で利用できない機能を提供している。その上、サービスを利用する企業はアップグレード、移行またはテクノロジーの陳腐化を懸念する必要がない。バックアップインフラの整備する責任はクラウドサービスプロバイダー側にある。

資本を節約できるスケーラビリティ

 企業は、先行投資費用を用意することなく、サードパーティーのクラウドサービスプロバイダーが提供する無限のスケーラビリティを活用できる。さらに、従量制モデルによって、バックアップの調達/準備の問題を大幅に軽減することができる。このアプローチにより、キャパシティーの増大や運用コストを予測しながら管理することが可能だ。

小さなデータセットによる復元時間の短縮

 テープからデータを復元する場合、管理者はテープを回収して読み込み、データを探して復元する必要がある。一方、クラウドストレージからファイルを復元する場合は、オフサイトの場所から物理的に輸送する作業も、テープの処理も、シーク時間も不要になる。そのため、より短時間で作業を完了することができる。復元するファイルはWAN接続経由で見つけてストリーミングするため、時間を節約することが可能だ。また、社内にテープインフラを用意する必要もない。

アクセスのしやすさ

 ディザスタリカバリインフラの投資や保守に充てる資金を確保できない企業にとって、クラウドベースのバックアップテクノロジーは魅力的な選択肢かもしれない。資金の有無に関係なく、外部委託が効率アップやコスト削減につながることを認識している企業にも魅力的な選択肢だろう。インターネットに接続した任意のデバイス/場所からアクセスできるオフサイトにデータのコピーがあれば、特定の地域で災害が発生した場合にデータを保証する付加的な手段にもなる。

クラウドベースのバックアップに関するデメリット

 クラウドベースのバックアップには、次のようなトレードオフもある。

データの取り込みと完全な復元

 データの全体量によっては、サイトデータの完全バックアップや復元の初回実行時、処理に長い時間がかかり、運用システムに大きな影響を与えることがある。

サイズの制限

 企業は利用可能な帯域幅に応じて、1日にクラウドに転送できるデータ量についてしきい値が設けられる。この制限はバックアップ戦略に影響を与えるだろう。

サービスの中断

 サービスに最適な「出口戦略」を理解することは、特定の機能を調べるのと同じくらい重要な作業だ。解約/期日前解約による違約金、解約通知およびデータ抽出は、考慮すべき要素のほんの一部にすぎない。

サービスレベル契約(SLA)が無い

 サービスのパフォーマンスや正常にバックアップが行われたことに対する「保証」はクラウドサービスプロバイダーの管理対象にならない場合がある。例えば、十分な帯域幅の可用性、ネットワーク経由で転送しなければならないデータ量および保護対象システムにアクセスできることの全てが保証されるわけではない。

適切なプロバイダーを選ぶ

 利用できるクラウドベースのバックアップサービスプロバイダーの数は、ニーズや企業の規模によって異なる。クラウドサービスプロバイダーは幾つかのカテゴリに分類できる。

バックアップSaaS

 昔ながらの大手バックアップサービスプロバイダーのポートフォリオにはSaaSコンポーネントが含まれている。米EMCは2007年10月に米Mozyを買収した。一般消費者のデスクトップ/ノートPCから中小企業向け(SMB)サーバおよびアプリケーションまでを対象とするサービスを提供している。米IBMも米Arsenal Digitalを買収している。現在サーバとアプリケーション向けのリモートデータ保護やArsenal Digitalの「CDP for Files」製品を基盤としたデスクトップ/ノートPCのオンラインバックアップサービスを提供している。米Symantecは、社内のバックアップテクノロジーを活用して独自のバックアップSaaS機能を「Symantec Protection Network」に搭載している。米Hewlett-Packard(HP)は、「HP Electronic Vaulting Service for Enterprises」を提供している。その他には、「LiveVault」サービスや「Connected」サービスを提供する米Iron Mountain、「Evault SaaS」バックアップを提供する米Seagate i365、「Online Backup」を提供する米Carboniteなどがこのカテゴリに分類される。

クラウドパートナーを利用するバックアップソリューション

 幾つかのバックアップソフトウェアベンダーは、クラウドインフラの構築や買収は行わず、クラウドストレージプロバイダーと業務提携を結ぶことでクラウドベースのバックアップを実現している。米CA Technologiesは「XOsoft」テクノロジーとサードパーティープロバイダーのサービスを組み合わせて「Instant Recovery on Demand」の提供を開始している。米Zmandaは、同社のオープンソースベースのバックアップソフトウェアと「Amazon S3」クラウドストレージを組み合わせて「Cloud Backup」製品の提供を開始している。

クラウドストレージ

 他のベンダーが利用するためのクラウドインフラを構築しているベンダーも存在する。クラウドストレージプロバイダーは、ストレージのキャパシティーを「貸し出し」て、ベンダーが簡単にテクノロジーの統合できるようにするAPIを提供している。Amazon S3、米Iron Mountainの「Virtual File Store」はその一例だ。

MSP向けSaaS対応のバックアップ

 米CommVaultは、マネージドサービスプロバイダー(MSP)が同社の「Simpana」ソフトウェアを使用してバックアップSaaSを提供できるようにする手法を提供している。これはカナダのAsigraの戦略に似ている。Asigraは、HPのElectronic Vaulting Service for Enterpriseや米AmeriVaultの「AmeriVault-AV」など、現在提供されている多くのバックアップSaaSソリューションに携わっているベンダーだ。米Remote Backup Systemsは、自社のテクノロジーを他のベンダーに販売して、他のベンダーがバックアップSaaSを提供できるようにしているベンダーの一例だ。また、新規参入企業の米Axcientは、外部委託したIT製品/サービスの導入や配布に対応するオンプレミスとクラウドのソリューションを組み合わせたサービスを提供している。


 クラウドコンピューティングとバックアップテクノロジーの進歩により、クラウドベースのバックアップテクノロジーの分野では活気あふれる成長が見られる。クラウドベースのバックアップソリューションは、ITリソースや資本予算が限られている企業に、「効率性」「信頼性」「スケーラビリティ」「アクセスのしやすさ」「小さなデータセットによるデータ復元の向上」といった確かなメリットをもたらす。また、従量制という価格設定により、運用予算から資金面の支援を得られるというメリットもある。この価格モデルは、クラウドベースのバックアップがテープを中心としたオンプレミスの実装に対する魅力的な代替手段として浮上する十分な要因となるだろう。

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アイティメディア営業企画/制作:TechTargetジャパン編集部

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