キーパーソンが語る、クラウドバックアップ運用のコツクラウド統合ストレージが企業にもたらすメリットとは

クラウド普及を背景に、クラウドストレージでは移行ノウハウの蓄積が進んでいる。ただし、忘れてはならないのは、移行後の運用段階にも課題が存在することだ。

2015年11月04日 18時00分 公開
[TechTargetジャパン]

クラウドへのバックアップの手間をどう抑えるか

 クラウドストレージが適する用途とは、具体的には「バックアップ/アーカイブ」「テスト/開発環境」「DR(ディザスタリカバリ)」などが挙げられる。実際にこれらの用途でクラウドストレージを利用する企業の数は増えている。そんな中、クラウドの運用段階での課題とは何か。

 まず挙げられるのが、オンプレミスとクラウドとのデータのやりとりには、依然として処理の手間がかかることがある。膨大な量のデータをバックアップする場合、夜間のバッチ処理などで時間内に作業を完了するために、ネットワーク増強が必要な場合がある。その場合、通信コストの増加は避けられず、増加コストの累計は極めて高額となる。

 これらの課題解決を支援する切り札として、今、注目を集めているのがネットアップのクラウド統合ストレージ「NetApp AltaVault(AltaVault)」である。

 AltaVaultは、オンプレミスとクラウドとのデータの効率的な橋渡しを実現する新発想の製品である。まずオンプレミス環境に導入してAltaVaultの内部ディスクにバックアップデータを格納。その後、データを順次、自動的にクラウドへ書き出すことで、人手を介さないオンプレミスとクラウドとの連係を実現する。クラウドへ書き出すまでの時間、つまり、手元にどれだけデータを保持しておくかも自由に設定可能だ。

photo AltaVaultの運用イメージ

 また、クラウドへのバックアップに有効な機能も備える。転送容量を最大で30分の1にまで圧縮するインラインでの重複排除やデータ圧縮などの機能だ。これらの機能は、ネットワーク負荷を大幅に軽減し、WAN帯域を増強することなく、より短時間での作業完了を可能にする。

photo 米NetApp クリス・ウェークリィ氏

 米NetAppでクラウドアーキテクトのグローバルチームの最高責任者を務めるクリス・ウェークリィ氏は、次のように説明する。「AltaVaultではデータの暗号化によって、クラウドでのデータ管理によるセキュリティリスクも抜本的に低減できます。しかも、他ベンダーのバックアップツールでの管理にも広く対応しており、容易に利用に乗り出せる点も見逃せません。クラウドだからといって、従来の運用フローを見直す必要はないのです」

データの管理能力を維持し、囲い込みの回避を目指す

 また、クラウドの運用には「データの管理性」という課題も残されている。多くのオンプレミス環境では、データの種類や重要性を踏まえて異なるストレージ製品が混在利用されてきた。クラウド環境のデータ増に伴い、今後は同様の使い分けがクラウドでも進むと推察される。しかし現状では、データの可搬性が十分に確保されているとは言い難い。そのため、データの管理面が今後問題視されることは確実だ。

 この課題解決に向け、ネットアップが提唱するコンセプトが「Data Fabric」である。

Data Fabricでは多様なクラウドをまたがった、ポリシーにのっとったデータの移動や統合管理を目指す。AltaVaultもこのコンセプトの一翼を担うものだ。

 ウェークリィ氏は、その狙いを次のように打ち明ける。「近い将来、企業は『Amazon Web Services』『Microsoft Azure』などに代表されるグローバルで利用されるハイパースケール(大規模)プロバイダーや、日本国内の主要なクラウドサービスプロバイダー、自社で保有するプライベートクラウドの利用バランスの再検討に乗り出すはずです。Data Fabricは、それらのデータ移動の柔軟性を確保し、クラウドベンダーによる囲い込みからの脱却を実現するものなのです」

目指すのは、クラウドとオンプレミスとの協働

 Data Fabricを実現することで、企業のデータ管理が大幅に簡素化される。しかし、オンプレミス環境からクラウドへの移行が促される点で、ネットアップのストレージ製品の売り上げに影響を及ぼす可能性もある。ネットアップがData Fabricに舵を切ったのはなぜなのだろうか。「背景にはハイパースケールプロバイダーの台頭があります」と、ウェークリィ氏はその理由を話す。

photo 米NetApp マイク・スリシンガー氏

 米NetAppでクラウド事業のチーフアーキテクトを務めるマイク・スリシンガー氏は次のように続ける。「クラウドは柔軟性、拡張性などの面で優れる点が多く、とりわけ先進的な企業を中心に中核事業以外のITをそれらに切り出したいとのニーズが盛り上がっています。しかし、クラウドにもデータ保護が確約されていない場合があるなど、問題も残されています。Data Fabricはクラウドとオンプレミスの弱点を互いに補完するための、当社からの新たな価値提案。クラウドとオンプレミスは、いわば“競合”ではなく“協働”すべきものなのです。しかも、データ管理の点では長年のオンプレミスでの経験により、当社に一日の長があります」

photo ネットアップのData Fabric

Data Fabricが導く、データ管理の未来とは?

 ネットアップでは現在、AltaVaultやData Fabricの普及拡大に向け、足場固めを行っている。まず前者では、パートナー企業を含む関係者への製品の教育活動「AltaVault Academy」を実施。パートナーのAltaVaultへの関心は非常に高く、「AltaVaultを販売することが楽しい」という声が寄せられるなど、ウェークリィ氏は大きな手応えを感じているという。

photo 2015年10月には、日本のパートナー企業にウェークリィ氏が講演するセッションも開かれた

 また後者では、多くのクラウドサービスベンダーと協業について合意しており、今後のロードマップを共有することで、ネットアップとプロバイダーの双方ともメリットのある関係構築を目指している。今後もサービスプロバイダーを含むパートナー各社とのアライアンスを戦略的に推し進める考えだ。

 「クラウドファーストやDevOps、オブジェクト指向などをキーワードとする、クラウドへの深い理解を備えたパートナーの開拓がData Fabricの実現に向け欠かせません。一方で、各クラウドベンダーの特徴が異なることから、よりよい協業に向けて個別にアライアンスの内容を詰める計画です」(ウェークリィ氏)

 また、Data Fabric環境の構成要素には、AltaVaultやクラウド環境向けストレージOSの「Cloud ONTAP」、クラウド環境向け接続サービス「NetApp Private Storage for Cloud」、ストレージ仮想化ソフトウェアの「FlexArray」、オールフラッシュアレイ(フラッシュストレージで全ての容量をまかなうストレージアレイ)の「NetApp All Flash FAS」などが含まれる。

 「高度なセキュリティやアクセス制御、QoS(サービス品質)の実現に向け、現状の製品群で満足しているわけではありません。Data Fabricの普及に併せ、その時々でパートナーがデータを確実に移行できるよう、自社の製品ポートフォリオを充実させていきます」(ウェークリィ氏)。ネットアップが描くのは、「さまざまな場所から、ファイルであれブロックデータであれ、オブジェクトデータに変換してあらゆるクラウドへのバックアップの一元管理が実現された近未来のデータ管理の姿」だといえる。

 ウェークリィ氏に、「もし他のストレージベンダーが同様にクラウドに舵を切った場合、ネットアップに勝算はあるのか」という質問をしてみた。この点について、同氏は言葉を選びつつも自信を持って次のように断言した。「プライベートクラウドやパブリッククラウド、オンプレミスなど、プラットフォームによってOSは異なりますが、その全てで共通のデータ管理基盤「clustered Data ONTAP」を持つ点で、当社は圧倒的な優位な立場にあります」

 興味を持った方はネットアップがAltaVaultの無償評価プログラムを実施しているので、簡単に試してみることができる。

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  • 無償版は、www.NetApp.com/AltaVaultTrialからダウンロードできます。

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提供:ネットアップ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:TechTargetジャパン編集部

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