常識として知っておきたい「デスクトップ仮想化」と「サーバ仮想化」の違いシステムの運用も変わる

デスクトップ仮想化とサーバ仮想化は種類が異なる仮想化だ。これらの違いを知らなければVDI導入に失敗する恐れがある。

2015年11月18日 20時22分 公開
[TechTargetジャパン]

 デスクトップ仮想化とサーバ仮想化の違いは分かりにくい。この2つの用語は似て非なるものだ。用途が大きく異なる別個のテクノロジーで、区別することが肝要だ。

 「デスクトップ仮想化」と「サーバ仮想化」には、どちらも「仮想化」という言葉が含まれている。だが、それが唯一の共通点だろう。デスクトップ仮想化は複数のデバイスを使ってリモートで作業する従業員の増加に対処するためのテクノロジーだ。一方、サーバ仮想化は、作業負荷を分散してサーバの効率化を最大限に高めたい企業のニーズに応えるためのテクノロジーである。

 デスクトップ仮想化をサーバ仮想化と同じくらい簡単な作業だと見なしたり、どちらも同じツールで管理できると考えることは導入が失敗する原因となる。失敗しなかったとしても時間の無駄になるだろう。本稿では、これらのテクノロジーの違いを説明する。

サーバ仮想化とは

 サーバ仮想化では、1台の物理サーバを複数の小さな仮想サーバに分割する。サーバ仮想化によって1台の物理マシン上に複数のサーバが存在するようになる。最も一般的なサーバ仮想化では「仮想マシン」を使用する。仮想サーバは1台の独立したコンピュータのように動作する。一般的にIT部門は、各種ワークロードにサーバ仮想化を使用している。例えば、データベース、ファイル共有、グラフィック仮想化、メディア配信などだ。サーバ仮想化によって、サーバを少数のハードウェアに統合し、効率化を図ることができる。その結果、コスト削減につながる。だが、通常デスクトップ仮想化ではデスクトップを統合することはない。むしろデスクトップは分散される。

デスクトップ仮想化とは

 デスクトップ仮想化では、仮想コンピュータ環境を作成して従業員に配信する。従業員は物理コンピュータの代わりに仮想コンピュータ環境を使用する。仮想コンピュータ環境はリモートサーバに保存されてから従業員のデバイスに配信される。仮想コンピュータ環境は物理コンピュータとほぼ同じように動作する。また、1台のサーバから複数の仮想コンピュータ環境のイメージを配信することが可能だ。

 デスクトップを仮想化する方法は1つではない。例えば、ターミナルサービス、OSのストリーミング、仮想デスクトップインフラ(VDI)、Desktop as a Service(DaaS)などがある。

 ターミナルサービスとVDIを導入するには、どちらも企業が自社でインフラを用意することが条件となる。つまり、「デスクトップのイメージをホストするサーバ」と「従業員にシームレスな操作性を提供できるだけの十分な帯域幅」が必要になる。また、企業はインフラのセキュリティと構成に責任を負わなければならない。

 OSのストリーミングでは、デスクトップのイメージは従業員のデバイスにストリーミングされる。サーバにはホストされない。ストリーミングされたOSは、デバイスにインストールされているかのように動作する。また、クライアントからデスクトップのイメージに接続する必要はない。

 DaaSでは、インフラの動作の大半をサードパーティーのプロバイダーに任せることになる。プロバイダーは必要なサーバ構成、帯域幅、バックアップ、セキュリティの面倒を全て見てくれる。企業で対応が必要なことはサブスクリプションの料金を支払うだけだ。

 デスクトップ仮想化は、従業員がどのデバイスからでもリモートで作業できるというメリットをもたらす。ほとんどのスマートフォンやタブレットには仮想デスクトップクライアントが用意されている。また、デスクトップ仮想化では複数のイメージを1台のサーバに保存することが可能だ。そのためハードウェアのコストも抑えられる。サーバの容量がいっぱいでイメージを保存できなくなった場合はサーバを追加購入すればよい。そのため、比較的簡単に拡張できるが、設備投資は増加することになる。

違いを知っておくべき理由

 サーバでは毎日同じ機能を実行する傾向がある。そのため、デスクトップよりも動作が予測しやすい。サーバ仮想化には専用のソフトウェアとツールが必要になる。そのツールはデスクトップ仮想化にも使用できる。

 デスクトップ仮想化でも仮想コンピュータ環境のイメージをホストするサーバが必要になる。だが、サーバ仮想化よりもずっと複雑だ。従業員はデスクトップの操作がシームレスであることを期待する。ただし、仮想コンピュータ環境で実行される操作を明確に予測するのは不可能だ。つまり、物理コンピュータ環境でサポートするアプリケーションやタスクだけでなく、デスクトップを仮想化する全てのインフラをサポートする必要がある。普段の業務では、仮想コンピュータ環境をホストするサーバでは仮想サーバよりもランダムな動作がずっと多い。

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