仮想デスクトップインフラ(VDI)の普及が進んでいるが、ストレージが原因でVDIプロジェクトが失敗に終わることもある。代表的な5つのパターンとその解決策を紹介する。
米ニューヨークで2014年11月に開催された「Storage Decisions」カンファレンスにて基調講演を行ったブライアン・マッデン氏は、ストレージ管理者は仮想デスクトップインフラ(VDI)に関して大きく成長してきたと語る。だが、今でも意識しておくべき大きな落とし穴があるという。スムーズな動作に十分なIOPS(1秒当たりのI/O数)が欠かせないのは周知のことだが、VDIの専門家であるマッデン氏は、注意すべき部分を把握していないと、ストレージが原因でVDIプロジェクトが失敗に終わるパターンを幾つか紹介した。
本稿では、ストレージがVDIの管理を複雑にしている最も一般的な5つのパターンを示し、事前に改善する方法を紹介したい。
デスクトップPCのストレージワークロードは、サーバのそれと大きく異なる。これを認識していないことがVDIに関する大きな間違いの1つだ。技術的な観点では、VDIは標準のサーバよりも、読み取りと書き込みのバランスがかなり優れている。サーバのワークロードは、読み取り処理を高速に行えるように調整されていることがほとんどである。一方、仮想デスクトップテクノロジーは、読み取りと書き込みの両方で適切なパフォーマンスを発揮するように調整されていることが多い。読み取りに重きを置いた通常のデータセンターストレージをVDIに使うと、期待した通りに動作するとは限らないとマッデン氏はいう。
遅延はどのプロジェクトでも重要な課題だが、デスクトップPC環境では特殊な問題をもたらす。バックエンドサーバで遅延が発生してもユーザーがそれに気付くことはない。だが、スタートメニューをクリックしたり、米Microsoftの「Word」文書を開いたときに、期待するものがすぐに表示されない場合は、ヘルプデスクへの問い合わせが行われる。
仮想デスクトップテクノロジーに最も固有な要件は、予測不可能なユーザーを考慮することだ。サーバのストレージについて計画を立てれば、繁忙期の対策を講じることはできる。だが、ユーザーの行動は予想できないとマッデン氏は指摘する。例えば、デスクトップPCのユーザーは、たった数分の間に、Wordの文書を作成して、メールを開いたり、メールに記載されたリンクをクリックして動画を視聴したりする。ストレージは急速に変化するワークロードに対応できなければならない。
「VDI用に構築するストレージでは、赴くままに行動するユーザーに対処できる柔軟性とユーザーに快適な操作性を提供する必要があることを理解しなければならない」(マッデン氏)
VDIのハードウェアとソフトウェアに関する議論では、ストレージの専門家の間で意見が分かれることがある。だが、マッデン氏は、そこばかりに目を向けてもあまり意味がないと語る。
ストレージがハードウェアとソフトウェアのどちらに重点を置いているかについて、あまり気に掛ける必要はない。基本的にスタックは、HDDやSSD(ソリッドステートドライブ)、プロセッサーなどのコモディティな部分だ。パフォーマンスや管理といった価値はソフトウェアから生まれる。重要なストレージをソフトウェアベンダーに任せることを渋ると、選択肢は狭まり、本来ならプロジェクトに恩恵をもたらすストレージベンダーを遠ざけることになる。
「私たちが購入するのは容器ではなく中身である。自社のストレージベンダーがソフトウェアベンダーであっても悩むことはない。なぜなら、どのストレージベンダーもソフトウェアベンダーだからだ」(マッデン氏)
米Hewlett-Packard(HP)が最近発表した「HP Moonshot」製品ラインは、物理コンピューティングのカートリッジで、最近のブレードサーバのようなものである。VDIと併用すると、ユーザーとカートリッジの比率を1対1にすることが可能だ。各ユーザーには専用の物理CPUとHDDが提供される。
HP MoonshotなどのマイクロサーバはVDIに似ているが、仮想マシン(VM)と実際に接続することはない。その代わりに物理PCと接続するが、仮想化にありがちで面倒なキャパシティープランニングは不要だ。自分のカートリッジのIOPSストレージは計算しなくても、既に用意されている。
ここ10年ほどの間に仮想化が大きなテクノロジーへと成長したことで、VMには多くの関心が向けられるようになった。だが、ホスト型のブレードサーバも同じ目的を問題なく果たすとマッデン氏はいう。
「VDIは、デスクトップPCをデスクから撤去して、データセンターに移動するというものだ。デスクトップが仮想マシンである必要はどこにもない」(マッデン氏)
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