プライベートクラウドへのマイグレーションを考える:エンタープライズクラウドを定義する【第3回】
クラウドにメリットを感じ導入を検討する企業ユーザーの多くは、最初にオンプレミスからプライベートクラウドへの移行を検討するケースが多い。今回は、プライベートクラウド導入に向けたマイグレーションの例を紹介。
第1回「エンタープライズクラウドを構成する4つの利用モデル」でクラウドコンピューティングの利用モデルについて解説したが、プライベートクラウドはパブリッククラウドとは形態が大きく異なり、導入にも時間を要す。
パブリッククラドは企業のファイアウォールの外側に構築される形態で、インターネットを介して不特定多数の企業などに提供されるサービスである。一方、プライベートクラウドは、仮想化や標準化、自動化などのクラウド技術を活用し、顧客または提供事業者側のデータセンターに自社専用の環境を構築することによって、コンピュータリソースをユーザーに柔軟に利用させるシステムである。プライベートクラウドは企業のファイアウォール内に構築される形態だ。
また、パブリッククラウドの場合は、カスタマイズの範囲は限定的ではあるが短期間で導入でき、必要に応じてコンピュータリソースをスケールアップ/スケールダウンすることが容易である。一方、プライベートクラウドの場合は、データセンター内に自社専用の環境を構築することから、データセンターのレイヤーからサービスレイヤー、そして運用管理まで検討すべき対象が多く、中長期的なロードマップを策定し、段階的にマイグレーションを進めていく必要がある。
ここで、プライベートクラウドのメリットを整理する。プライベートクラウドは、仮想化や自動化などのクラウド関連技術の活用によりパフォーマンスとコストが最適化され、カスタマイズへの柔軟性が高い点が挙げられる。また、自社において運用ポリシーやサービス品質保証に対するコントロールができる。そのため、パブリッククラウドには(運用ポリシーやサービス品質保証で)不安を抱いているがクラウドにメリットを感じ導入を検討している企業ユーザーは、最初にオンプレミスからプライベートクラウドへの移行を検討するケースが多い。
プライベートクラウドへのマイグレーション
プライベートクラウドの導入を検討するに当たっては、パブリッククラウドと比較した場合、初期導入コストが高く構築にも時間がかかる。また、対象範囲が広いためどの部分から導入を進めていけばいいのか分からず、導入を見送るケースも見受けられる。
そのため、導入目的と効果を明確化した上で、性能、信頼性、拡張性、セキュリティなど、業務システムの要件を決める必要がある。中長期的に拡張可能であることを見越した設計を考慮し、ロードマップを策定してマイグレーションを段階的に進めていくことが重要となる。
プライベートクラウドの導入に向けたマイグレーションの例を紹介したい。
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