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最大容量と可用性にこだわったハイエンドストレージ「ETERNUS DX8000」エンタープライズ向けディスクストレージ紹介:富士通

富士通が提供するハイエンド向けストレージシステム「ETERNUS DX8000シリーズ」。メインフレームで培った技術やノウハウが反映された機能が多く搭載されている。

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世界最大規模の容量とこだわり抜いた可用性

 エンタープライズ向けストレージ製品を紹介する連載の第3回は、国内メーカーとしては早くからハイエンドストレージのソリューションに取り組んできた富士通の製品を紹介する。同社は、メインフレーム用の記憶装置で求められる「大容量」「高性能」「高可用性」を追求してきた過程で培われた技術やノウハウを、現在のストレージ製品にも投入している。

 同社の最新ハイエンドストレージは、2009年11月にリリースされた「ETERNUS DX8000シリーズ」(以下、DX8000)だ。同シリーズは、中規模以下のシステム向け「ETERNUS DX8100」(以下、DX8100)、中規模・大規模向け「ETERNUS DX8400」(以下、DX8400)、そして大規模システム向け「ETERNUS DX8700」(DX8700)の3製品で構成される。

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ETERNUS DX8700

 最上位機種DX8700は2760基のディスクドライブを搭載可能で、最大ディスク容量は5P(ペタ)バイト以上と、世界最大規模の容量を誇る。また性能面でも、高性能クアッドコアCPUを搭載したコントローラー8基を高速チャンネルで接続することで、世界最高水準を達成しているという。

 可用性の確保に関しては、さらに徹底している。DX8000シリーズは他社のハイエンドストレージ製品と同様にRAID 5およびRAID 6をサポートしているが、障害におけるRAIDの閉塞を極力回避するためにさまざまな仕組みが搭載されている。例えば、8個のドライブエンクロージャ(※)に分散してディスクを配置し、異なるドライブエンクロージャ内のディスク同士を組み合わせてRAIDを構成することで、RAID 5/6の耐障害性をさらに強化している。また、コントローラーとディスクを結ぶファイバーチャネル(FC)をループ化することにより、ディスク単体の障害が及ぼす影響を極小化できるアーキテクチャを採用している。

※ ドライブエンクロージャ:ディスクドライブを搭載するケース。

 また、すべてのパーツを二重化してハードウェア障害からの迅速な復旧に備えるほか、FCポートやSATAディスクのインタフェース部分におけるライト処理時のデータの妥当性確認を自動的に行うなど、データの保全性にも細かく配慮している。さらに、製品出荷前に行うテストでは、ハードウェアの各端子で意図的に障害を発生させ、そのすべてのケースできちんと障害から回復するかどうかを検証しているという。

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富士通の荒木氏

 ここまで徹底した可用性やデータ保全へのこだわりは、やはりメインフレームをはじめとするミッションクリティカルシステムに長く取り組んできた富士通ならではのものだといえよう。富士通のストレージシステム事業本部 ストレージインテグレーション統括部 プロジェクト部長 荒木純隆氏は、次のように述べる。

 「一般のユーザーには見えない本当に細かい部分での技術を1つひとつ積み上げることで、高度な耐障害性やデータ保全性を実現している。また、われわれは大規模システムに長く取り組んでいる分、世界でもまだ数例しかないようなレアなトラブルも経験している。そうした過去の知見やノウハウが、DX8000シリーズには反映されている」

効率的なデータ複製やミラーリングが可能

 このようにストレージの性能と可用性を追求しているDX8000シリーズだが、さらに信頼性を高めたり、運用管理性を向上させるための独自の機能も数々備える。

 例えば、その1つに「データコピー機能」が挙げられる。DX8000シリーズは、4種類のローカル(筐体内)コピー方式と1種類のリモートコピー方式、計5種類のデータコピー機能を備える。1、2種類のデータコピー方式をデフォルトで搭載するストレージ製品が多いことを考えると、この点は同社の大きな強みだといえそうだ。また、1つのコピーライセンスですべての方式のコピーを実施できる。

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コピー機能の仕組み
5つのコピー機能
名称 機能詳細
OPC 原本データをすべて複製する機能。レプリケーションの作成やバックアップ運用に適している
QuickOPC 一度原本データのコピーを作成した後に、更新部分のみのコピーを行う機能。バックアップ時間の短縮が求められる、データベースシステムなどに適している
SnapOPC+ 原本データにおける更新部分の更新前の状態のみを複製する機能。ディスク容量を抑えることができるとともに、複数世代のバックアップが可能で、ファイルサーバ上のデータのバックアップに適している
EC 原本データをすべて複製する機能。ミラーリング状態の切り離しにより、複製を作成する。コピー処理とバッチ処理など負荷の高い業務との競合を避けたい場合に適している
REC 原本データをすべて複製する機能。ミラーリング状態の切り離しにより複製を作成する。異なる装置にデータをバックアップしたい場合に適している(DX90でサポート)

 「追加ライセンスの購入なしで、ユーザーの運用ニーズに合致したデータコピー機能を選んで使うことができる。また、ローエンドやミッドレンジのストレージ製品でも、これら5種類のデータコピー機能をすべて備えている(※)。そのため、異機種のストレージが混在した環境でも同じ方式でデータコピーの制御を行うことができる」(荒木氏)

※ DX60/DX80を除く。

 また、DX8000シリーズは非常にユニークな「ミラーリング」機能を備えている。近年、コストを抑えてディザスタリカバリシステムを構築するために、リモートサイト間のデータのミラーリングをIPネットワーク経由で行う例が増えてきている。その場合、ストレージ装置とつながるFCのトラフィックをIPネットワークに変換するためのゲートウェイ装置を導入することになる。

 しかし、DX8000シリーズでは、iSCSIをそのままイーサネットに直結するアダプターをサポートしている。そのため、高価なゲートウェイ装置を導入することなくIPネットワーク経由でのリモートミラーリングが可能になる。また、低品質な回線でもデータ転送レートが極端に低下しないように制御するチップが搭載されている。そのため、安価な回線でも安定したデータ転送を行うことができるという。荒木氏は「ミラーリング機能はどのベンダーのハイエンドストレージ製品でも実装されているが、安価に、かつ安定的にデータ転送を行うための仕組みを実装しているのがDX8000シリーズの特徴だ」と説明する。

セキュリティやシンプロビジョニング機能も実装

 DX8000シリーズはセキュリティ面でも数々の機能を備えている。その1つが「ストレージ装置内部でのデータ暗号化」だ。LUN(論理ユニット)ごとに、「AES 128ビット」方式でのデータ暗号化が可能になっている。この機能は、特にハードウェアのメンテナンスや入れ替えのためにディスクが外部に持ち出される際の情報漏えい防止に有効だ。暗号化されていないディスクは、情報漏えいを防止するために別途データ消去サービスを使ったり物理的に破壊する必要があるが、あらかじめストレージ装置内部で暗号化が施されていれば、そうした作業は不要になる。

 また、ディスク使用効率を向上させるための「シンプロビジョニング」機能も搭載している。エンタープライズ向けストレージ製品ではすっかり当たり前の機能となった観のあるシンプロビジョニングだが、これまではファイルシステム上でファイルが消去されてもその領域が解放されないという問題を抱えていた。これに対してDX8000シリーズでは、シマンテックのストレージ管理ソフトウェア「Veritas Storage Foundation」との連携により、ファイル削除操作に伴い物理ディスク領域が解放されるようになっており、ディスク使用効率のさらなる向上に成功している。

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物理ディスク領域の解放

 さらに、SAN環境のFCとストレージ装置を介してメインフレームやUNIXサーバ、PCサーバ間で高速なデータ転送が行える。これは、SAN環境での高速ファイル転送を実現する同社のソフトウェア製品「ETERNUS SF XL-DATA/MV」と、セゾン情報システムズのSAN環境ファイル転送ソフトウェア「HULFT-SAN」を組み合わせることで実現される。

 このソリューションを導入すると、ネットワークを経由せずにFCを介してファイル転送が可能になるため、セキュリティ上の都合により外部ネットワークに接続できないイントラネット上のサーバと、インターネット上のサーバとの間でセキュアかつ高速にファイルの転送を行うことができる。実際にこのソリューションを使って、ウイルス対策ソフトのパターンファイルを社外のサーバからリアルタイムに直接取得している企業もあるという。

ストレージシステム全体を可視化する管理ツール

 ハイエンドのストレージ装置は、それ自体の運用もさることながら、接続されるサーバやネットワーク機器も膨大な数に上る。そのため、システム全体の運用管理が煩雑になりがちだ。富士通では、そうした大規模かつ複雑なストレージ環境の運用管理を支援するために「ETERNUS SF Storage Cruiser」というツールを提供している。このツールを利用すると、ストレージ装置内部の各コンポーネントの状態が分かりやすく可視化されるとともに、接続されているサーバやFCスイッチなど外部機器の内部状態も併せて把握することができる。また、ストレージやスイッチ、サーバ間をつなぐ物理結線と論理結線も結線図の形で可視化され、サーバや機器が追加されるとそれを自動的に検知し、結線図に追加してくれる。

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ETERNUS SF Storage Cruiser画面

 さらに、ストレージ側で何らかの問題が発生した際には、その影響がどのサーバに及ぶかを自動的に導き出して表示する。しかも、単に「どのサーバか」というだけではなく、そのサーバ上の「どのマウントポイントか」「どのデータベースのどのテーブルか」という粒度まで表示される。そのため、障害発生時の問題切り分けと、障害が業務に与える影響度の判断を素早く行うことができるという。

 なお、DX8000シリーズの各製品の価格は、搭載されるディスク容量やコントローラー数、キャッシュメモリの容量などによって大きく異なるが、ETERNUS DX8000シリーズの最小構成時の参考価格は、2178万円(税別)となっている。

ETERNUS DX8000の主要仕様一覧
項目 仕様
ドライブ数 最大2760ドライブ
システム容量 5456Tバイト
コントローラー数 2〜8
RAIDレベル RAID 0、RAID 1、RAID 1+0、RAID 5、RAID 6
キャッシュメモリ 最小16Gバイト〜最大512Gバイト
ホストインタフェース ファイバーチャネル、iSCSI、OCLINK/FCLINK(富士通の独自規格)

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