体感型コントローラーの価値に向けられる企業の目
ゲームコントローラー「Kinect」にビジネス用途の可能性はあるか?
米MicrosoftのゲームマシンXbox 360のコントローラー「Kinect」が、プログラマーや企業の研究者などの関心を集めている。
発売後6週間で400万台を売った米Microsoftのゲームコントローラー「Kinect」には、エンタープライズコンピューティングアプリケーション向けの思いもよらない可能性があるようだ。Kinectが2010年11月に発売されてから、コンピュータプログラマーたちが同コントローラーを買い求めている。ロボット工学、ビデオ会議、画像処理、拡張現実(AR)システム、3Dレンダリングほか企業利用向けアプリケーションで利用するのが目的だ。
たかがおもちゃ(洗練されたものであるにしても)が、なぜこのような騒ぎになっているのだろうか。
三軸加速度センサー(3方向の振動を同時に測定する技術)を搭載したUSB周辺機器が、150ドルで手に入るのだ。また、Kinectには本体を上下に傾けるための制御可能なモーターや、4つのマイク、幾つかのビデオカメラが付属する。さらに、本体から発するマトリクス状の赤外線の点を本体のカメラで記録する複雑な赤外線深度システムも搭載する。
Kinectの要は、誰もがデスクトップPC向けに欲しいと思う、あるアプリケーションだ。映画「マイノリティ・リポート」に登場するような3Dのユーザーインタフェースがそれで、画面の前で手を動かすことで操作できる。iPodやiPadの基本操作である「スワイプ」を空中で行えるようにしたものといえる。だが、この機能を一般のデスクトップアプリケーションで利用できるようにするのは難しいだろうし、平均的なデスクトップ向けに動作の標準を設定するのも困難だろう。
ユーザーインタフェースの専門家であるヤコブ・ニールセン氏は自身のブログで「ジェスチャー操作の世界基準がまだ存在しないこと自体が問題だ。(Kinectは)学習行動に依存することができないからだ」と書いている。
例えば、単純な「戻る」コマンド(メニューツリーで1つ前に戻ったり、動作を取り消す命令)は、Kinectを利用する市販ゲームには実装されていない。そうしたゲームで1つ前に戻るためには、画面の指定された部分をポイントしたり、複雑な一連の動作を行う必要がある。
もう1つの問題は、一般的なデスクトップPCにはビデオカメラが付いていないことだ。ノートPCの多くはカメラを1台搭載しているが、これでは単純な動作しか追跡できないだろう。
Kinectをめぐっては、Adafruitとマット・カッツ氏がそれぞれ、数千ドルの賞金を懸けたハッキングコンテストを開催した。いずれのコンテストにも数百のエントリーがあったという。
これらのコンテストは、Kinectのデータストリームを操作するLinuxベースのオープンソースツールの開発を競わせるというものだ。Kinect関連のコーディングについて話し合うOpenKinect Google Groupには1400人以上のメンバーが参加しており、活発な議論が交わされている。
米ニュースメディアのCNETは、プログラマーらの成果を示す一連の動画を掲載した。中には85万回以上再生された動画もある。Kinectを利用してさまざまなものをコントロールする様子を見ることができる。クリスマスツリーの電飾、コンピュータ式操り人形、物体認識、「スター・ウォーズ」のライトセーバーのシミュレーションなどだ。
興味を持っているのはアマチュアプログラマーだけではない。
ハッキングコンテストの1つを主催したカッツ氏は、米Googleのエンジニアだ。英科学誌『New Scientist』によると、コンピュータ科学者のディーター・フォックス氏はシアトルのIntel Labsの同僚と共に、Kinectを使って建築内装の立体モデルを構築する方法を開発した。
Microsoftは当初、こうしたプログラミング行為を快く思っていなかったが、こうしたハッキングにもっと寛容になる必要があることに気付いた。Microsoftはまだ公式のSDK(ソフトウェア開発キット)をリリースする予定があるかどうかを明らかにしていない(“非公式のSDK”であれば、ここにある)。さらに、Windowsの次期版にはユーザー認証のための顔認識ソフトが搭載されるといううわさもある。そうなれば、現在うまく動かないLenovo製ノートPCの顔認証機能が向上するかもしれない。また、ソーシャルネットワーキングサービスの米Facebookが投稿写真内の人物にタグ付けする自動顔認識機能の追加を計画中の他、米LuxandのFaceSDKのようなサードパーティー製の顔認識機能のSDKが多数リリースされている。
Kinectをめぐるこうした初期の盛り上がりは、より大規模な動きにつながるかもしれない。プログラマーたちがOpenKinectフォーラムで知識を共有し、企業や教育機関の研究者がさらに経験を積むに従って、さらに多くのアプリケーションがリリースされる可能性がある。将来的にはKinectのアイデアを統合したマルチカメラのノートPCや、スワイプ、その他のジェスチャーでうまく操作できるタブレットベースのアプリケーションが登場するだろう。
本稿筆者のデビッド・ストロム氏はセントルイスを拠点とするフリーランスのライター。TomsHardware.com、Network Computing、DigitalLanding.comでの編集長経験を持つ。
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