Hyper-V、XenServer、KVMに足りないもの
VMware、仮想化の機能競争でMicrosoft、Citrix、Red Hatを依然リード
仮想化ベンダー各社の技術革新によって、ハイパーバイザー間の違いが薄れつつあるが、Hyper-V、XenServer、KVMには、いまだ機能的に弱い部分が残っている。
米VMwareが米MicrosoftのHyper-Vの仮想マシン(VM)を管理できる試用ソフトウェアを配布していることからも分かるように、さまざまなハイパーバイザー間の違いが薄れつつあることは明らかだ。しかし、Hyper-V、米Citrix SystemsのCitirx XenServer、米Red Hatが積極的にサポートしている KVM(Kernel-based Virtual Machine)は、機能的に弱い部分が残っている。ユーザーからは、このことが導入展開のネックになっているとの声が出ている。
Hyper-V:改訂ペースが速過ぎる?
Microsoftは、市場シェアと機能の両面でVMwareに最も近いライバルであり、仮想化製品のHyper-VでVMware vSphereとの差を縮めてきた。特に、Hyper-V Server 2008 R2とWindows Server 2008 R2 Service Pack(SP)1は、それぞれライブマイグレーションやDynamic Memoryといった目玉機能が追加され、大きく改良された。
しかしMicrosoftは、プライベートクラウドを展開するための高度な機能、例えば、仮想ネットワークデバイスや、VMwareのVMware vCloud Directorに相当するツールなどについては、まだかなりの追い上げが必要だ(だが、MicrosoftのSystem Center Virtual Machine Manager(SCVMM) 2012の登場により、2011年はこの分野の競争が激しくなりそうだ)。また、この1年程度の間に、Hyper-VをサポートするISV(Independent Software Vendor)は増えたものの、ユーザーは、Hyper-Vをサポートする監視、リポート、バックアップ、仮想ネットワーキング製品の充実をなお求めている。
一方、Hyper-Vユーザーは新機能を歓迎しているが、Microsoftの仮想化管理製品でHyper-Vの新機能のサポートが遅れていることが、導入を阻害しかねない。また皮肉にも、製品の改訂ペースが速いために、ユーザーがついていけない恐れもある。
例えば、SCVMMの現行版は、Windows Server 2008 R2 SP 1のDynamic Memoryをサポートしていないと、米ダートマスヒッチコック医療センターのシニアシステムエンジニア、ロバート・マクシンスキー氏は語る。同氏は23台の物理ホストと、Hyper-V上で動作する400台のVMを管理している。
また、新機能が頻繁にリリースされるため、同氏の組織では運用管理が大変になっている。「いつも更新に追われている感じだ」と同氏。「最新の統合エージェントで常にVMを更新し、最新の状態に保って、パッチやサービスパック、新バージョンの導入をどうにか遅れずにこなしている状態だ」
XenServer:HAやメモリ管理に改善を求める声
調査会社の米IDCによると、Citirx XenServerの販売は2010年に急速に伸びたという。しかし、Citirx XenServerは競合製品に比べて改善の余地がまだたくさんある。
Citrix Systemsは、サードパーティーの米Marathon Technologiesと提携して高可用性(HA)とフォールトトレランスを実現している。しかし、テキサスA&M大学コンピューティング・情報サービス(CIS)部門のインフラシステムグループでチーフシステムエンジニアを務めるトム・ゴルソン氏は、2009年末に仮想環境のディザスタリカバリ対策を始めたとき、「Citirx XenServerのHAツールは整備されていなかった。β版しかないか、あるいはまだ影も形もなかった」と語る。
そこでCIS部門は、米Xiotechのストレージシステム「Emprise 7000」に投資し、高可用性を確保した。この製品のGeoRAID機能では、大学全体でのVMのアクティブ/アクティブフェイルオーバーが実現できる。つまり、GeoRAIDは長距離vMotionに近い独自の機能を提供するわけだ。
このプロジェクトでは、インフラのネットワーキングレイヤーの調整が一番大変だったと、ゴルソン氏は振り返った。XiotechのGeoRAIDでは、接続されたVMのいずれかでのアクティブ/アクティブデータアクセスが可能だったが、そのためには拡張レイヤー2が必要だった。このため、米Cisco Systemsのレガシールータを同社の新しいNexusスイッチに置き換えなければならなかった。「NexusスイッチのNX-OSは、Cisco SystemsのIOSと似ているが、同じではない」とゴルソン氏。「そのため、CIS部門のネットワーキンググループでは学習が必要になった。大規模な環境では、これはプロジェクトの思わぬ障害になることがある」
CIS部門が仮想化を進めるとともに、ネットワーキング上の新たな問題も生じている。例えば、ゴルソン氏は現在、リソースの制約がある小規模なVMと同じアプリケーションクラスタに、それらのVMの4倍のサイズの物理マシンがある場合、一部のロードバランサが物理マシンではなくVMにトラフィックを送信する原因を究明しようとしている。「VMによってレスポンスはまちまちだ。ネットワーキングによって同期を取ることが、われわれにとって最も困難な課題となっている」(ゴルソン氏)
また、ユーザーは、Citrix SystemsがCitirx XenServerのメモリ管理機能開発を継続することを求めている。現在、Citrix Systemsの動的メモリ制御では、既存のVMで使われているメモリページを圧縮することで、ホスト上のVMの数を増やせるようになっている。だが、この機能は、VMwareのメモリオーバーコミットとは全く違う。VMwareのメモリオーバーコミットは基本的に、メモリの“シンプロビジョニング”を実現し、ゲストが物理的に存在するメモリよりも多くのメモリを仮想的に使用できるようにするものだ。さらに、VMwareは透過的なページ共有も実現している。これは、複数のVM間で同一のメモリページを単一のインスタンスとして格納することで、メモリを効率的に活用できる機能だ。また、VMwareはVMware vSphere 4.1で、Citirx XenServerに似たメモリ圧縮機能も導入している。
VMwareは仮想ネットワーキング機能でも先行しており、Citrix Systemsは追い上げを図っている。2010年10月に発表されたCitirx XenServer 5.6 Feature Pack(FP) 1には、分散仮想スイッチ機能が初めて搭載された。この最新版Citirx XenServerは「Project Cowley」のコードネームで呼ばれていたものだ。
Red Hat KVM:ツールラインアップなど大きく出遅れ
オープンソースのKVMは、機能面でVMwareに大きく水をあけられているといえる。例えば、CPUやメモリのホットアドに対応していない。Red Hatは、LinuxディストリビューションであるRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のVersion 5.4からKVMをサポートしている。だが、オープンソースのXenから手を引いてハイパーバイザーとしてKVMだけを推進するようになったのは、2010年にリリースしたVirsion 6.0からにすぎない。
Red HatはRHEL 6と最新の仮想化スイートRed Hat Enterprise Virtualization(RHEV)により、ユーザーに新しいハイパーバイザーへの移行を促そうとしている。しかし、この組み合わせでは、物理マシンから仮想マシンへの変換(P2V)や仮想マシンフォーマット間の変換(V2V)は、依然として厄介だ。RHEVにはネイティブなP2Vツールがまだ用意されておらず、V2V変換ツールを適切に動作させるには、“スクラッチ”ストレージとスクリプティングが必要になる。
オランダ在住のLinux専門家で、独立系トレーナー兼コンサルタントのサンダー・ファン・フフト氏は、XenとRHEL 5を導入済みのユーザーの多くは、KVMへの移行に二の足を踏んでいると語った。「RHEL 6は、リリースされてまだ日が浅いため、RHEL 5とXenを使っている人のほとんどは、こんな風に考えていると思う。『少なくとも最初のサービスパックが出るの待って、XenからKVMに移行するためのソリューションの実力や選択肢の豊富さを見極めよう。そして、早く移行した人の苦労を参考にさせてもらおう』」(フフト氏)
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