ケッセル上級副社長から漏れたAmazonの本音
AmazonのKindle FireはiPadに対抗できるか
日本でも注目されている、Amazonの「Kindle Fire」。デモを見て実機に触れた筆者が、Amazonのケッセル上級副社長から同社の戦略を聞いた。
米Amazon.comが9月28日に発表した新しいタブレット端末「Kindle Fire」と電子書籍リーダー端末の新モデル。これらの製品を直接目にして感じたのは、デモで披露された一連の新機能が、なぜKindleの「ファミリー」全体にもっと均等に行き渡っていないのかという疑問だった。Kindle Fireを、それよりも安価な電子書籍端末「Kindle Touch」と同じ無料3Gに対応させれば、米Appleのタブレット「iPad」に対抗する上でさらに有利になっていたはずだ。結局のところ、Kindle Fireは違うレベルでiPadに対抗しようということだろうか。
例えば、発表会のデモ中にAmazonのスティーブ・ケッセル上級副社長から聞いた話によれば、電子書籍専用端末の新モデル3機種に搭載されている白黒の「E Ink」を使った画面に代わって、Kindle FireにはiPadと同じIPS技術を使ったカラー液晶が搭載される。
さらに、多分AppleのApp Storeに触発されて、Amazonは既にWeb上で確立されているAndroid向けのAmazon Appstoreとは別に、Kindle Fire向けのアプリストアを提供する。AmazonのKindle担当副社長デイブ・リンプ氏は発表会のインタビューで、アプリをAndroid 2.3(コードネーム:Gingerbread)搭載のKindle Fireに対応させるためのテストを実施し、次にKindle Fireのアプリストアを「監修」する計画だと話していた。
さらに、AmazonはクラウドサービスのEC2を活用し、新型ブラウザの「Silk」経由で超高速ブラウジングを提供して、Appleをはじめとする競合他社のタブレットを追撃したい考えだ。また、別の技術を通じてユーザーが介在しない自動ストレージ/同期機能も提供する。この強化型のブラウザはKindle Fireのみで利用できる(少なくとも当面は)。ただ、「もしユーザーから要望があれば」、Silkを他の端末にも搭載することを検討すると、ケッセル氏は話している。
Kindle Fireで3Gは実現しない
また、ケッセル氏によると、AmazonはいずれKindle Fireに「EasyReach」と「X-Ray」を搭載する見通しだという。これは電子書籍専用端末Kindle TouchとKindle Touch 3Gのために発表された新機能だ。別のブースのデモを見たところでは、EasyReachは片手のみ(右手でも左手でも)を使った動作で画面を操作できるように設計された。例えば片手で地下鉄のつり革につかまりながらもう片方の手で電子書籍を読む場合などに便利なのは間違いない。
一方、X-Rayは電子コンテンツをダウンロードする際に、コンテンツの登場人物や過去の出来事などに関する補足的な情報を自動的にダウンロードできる機能。好奇心をそそる用語が出てきたらいつでも、電子書籍の文中から直接この情報にアクセスできる。
しかしEasyReachやX-Rayがマイナーな機能であるのに対し、この端末の売れ行きを決定付けるのは3Gモデルに搭載された無料の(そして契約も不要の)3G無線通信機能だ。米国でTouch 3Gを買えば、米国内ではAT&Tの3G接続を利用でき、海外に旅行したときは海外のキャリアを利用できる。
だがAmazonが現時点でKindle Fireを3G接続に対応させる計画はない。その理由は価格にある。約500ドル以上もするiPad 2やBarnes & Nobleの249ドルのタブレット端末「Nook Color」と比較して、Kindle Fireの価格はわずか199ドルなのだ。
Amazonの新しい電子書籍端末3機種はさらに安い。Touch 3Gが149ドル、Touchが99ドル、タッチ操作に対応していないモデルは79ドルだ。
「無料の3G接続は、Kindle Fireの199ドルという価格では実現できない」とケッセル氏は言い切った。これ以上ないほどはっきりした口ぶりだった。
実機を試す
Amazonの記者発表会では多くのデモが行われたにもかかわらず、新製品4機種に触れられる機会は最低限しかなかった。建前では記者は一切実機に触れてはいけないことになっていたが、Amazonのスタッフの中には比較的寛大な人もいた。
あるスタッフはKindle Fireの背面には触らせてくれたが、前面はダメだった(画面に指紋が付くのを避けるために違いない)。しかしタッチ画面を搭載していない79ドルの廉価モデルは使ってみるチャンスがあった。
新製品4機種はいずれもハードキーボードを搭載しておらず、このモデルも例外ではない。代わりにTouchおよびTouch 3Gと同じ仮想キーボードを使っているが、操作はタッチ式ではなく、画面の下に並んだ5つのボタンを利用する。
電子書籍のページ操作にもこの5つのボタンを使う。ボタンは極めて反応が良さそうだったが、操作方法を習得するためにある程度の慣れが必要なことは間違いない。
Kindle FireとiPadの違い
それではKindle Fireはどの程度iPadに対抗できるのか。iPadが圧倒的な成功を収めているスマートフォン(iPhone)や広く普及している音楽プレーヤー(iPod touch)と同じAppleのiOSを搭載しているのに対し、Kindle Fireは電子書籍専用端末の流れをくむ。
Amazonは、例えばクラウドサービスを活用した超高速ネット閲覧機能や簡単に同期できる機能を提供しているが、それ以外に「スマートな」端末は持っておらず、確立されたアプリ開発者層もない。アプリ開発と最適化では多少苦労するかもしれない。
半面、iPadと比較したKindle Fireの価格の安さ、Amazonの電子書籍や映画などの豊富なコンテンツとクラウドサービスは、ある面では有利になるかもしれない──特に経済が依然として低迷する中で年末商戦が近づく現状ではなおさらだ。少なくともこの週の時点ではそう見えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
「IBM iはDXのボトルネック」は誤解 意外と知らない今風モダナイズの効果
-
9
「朝8時にバッチが終わらない」データ爆発の危機をJPX総研はどう乗り越えたか
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー