自社データセンターで磨かれた技術を仮想化・クラウド環境に 〜NRIのSenju Family V12:標準ツールでは足りない!? サーバ仮想化の運用管理【第2回】
野村総合研究所の「Senju Family」は、自社データセンターの管理ノウハウが詰め込まれた、仮想化・クラウド環境における統合運用管理ソフトウェアである。
サーバ仮想化技術の進展は、これまで業務単位で構築されてきた情報システムを統合・集約の方向へと導いた。しかし、その一方でサーバ仮想化によって統合されたシステムでは、物理環境と仮想環境の両方を監視・管理し、障害発生時の影響範囲を的確に把握する必要があるため、情報システム部門の負荷が増大するという懸念がある。
そこで重要な役割を果たすのが、物理・仮想環境を一元的に扱える統合運用管理ソフトウェアである。運用管理ソフトウェアを必要なところに適材適所で導入すれば、情報システム部門の業務効率化に大きく寄与することは間違いない。さらに今後、クラウドサービスを利用した情報システムの構築が進むと、クラウド環境にも対応する統合運用管理ソフトウェアの価値はますます向上する(関連記事:読者に聞いた、仮想化の統合運用管理ツールの魅力と懸念)。
そうした仮想化・クラウド環境をサポートする運用管理ソフトウェアの1つとして、野村総合研究所(NRI)の「Senju Family」がある。本稿では、2011年11月8日に発表されたSenju Familyの最新バージョン「V12」に搭載された新機能を含め、Senju Familyの特徴を探ってみたい。
3つにまとめられたシンプルな製品体系
40年以上にわたってデータセンター事業を営むNRIが、自社の運用管理ノウハウを結集し、製品化したソフトウェア――それがSenju Familyだ。「システムの可視化と運用の自動化を実現することで、運用管理業務の効率化とコスト削減を実現する」が製品のコンセプトだ。ITIL V3で取り入れられているライフサイクル管理の概念を強く意識しており、情報システムのライフサイクルのうち、可用性やキャパシティー管理に必要なデータの収集、統合的な構成管理・変更管理などのプロビジョニング、イベント管理やジョブ管理などのサービス運用に関する機能を幅広く提供している。
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Senju Familyは、統一されたインタフェースでシステムの監視・運用管理を一元化する「Senju Operation Conductor」、複雑化したシステム運用業務を効率化・自動化する「Senju Enterprise Navigator」、インシデント管理・問題管理・変更管理を担当するサービスデスク製品の「Senju Service Manager」という3つの製品によって構成されている。運用管理ソフトウェアは、詳細に機能が分類された製品を別々に調達するというのが一般的だが、Senju Familyの場合は大きく3つに機能分けされた製品を必要に応じて購入すればよい。こうしたシンプルな製品体系は、Senju Familyの特徴の1つでもある。
最大の強みは、「運用管理の現場で開発されたソフトウェア」ということだ。Senju Familyの開発部門は、NRIのデータセンター運用管理を担当する部門と同じ組織であり、運用管理部門の要望を実現する形で機能が進化してきた。いわば、運用管理の本番環境への適用によって、機能が磨かれてきたわけである。画面のインタフェースも、派手さはないものの、運用管理の現場に即した使いやすさが売りだ。
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