クラウドベースのビッグデータ分析、主権を握るのは?
Google、Oracle、Microsoft、IBMのビッグデータ対応アプローチ
いち早くクラウドベースのHadoopアプリケーションをリリースしたAmazon。それに続き、Google、Oracle、Microsoft、IBMがビッグデータ分析のためのHadoop対応を進めている。各社のアプローチを見ていこう。
米Google、米Oracle、米Microsoft、米IBMなど数社のパブリッククラウドプロバイダーは米Amazon Web Services(AWS)を見習い、多面的なオープンソースプロジェクトであるHadoop、MapReduceを利用した「ビッグデータ」分析のトレンドに乗ろうとしている。
クラウドベースのHadoop、MapReduceアプリケーションが登場したのは2009年だ。AWSがElastic Compute Cloud(EC2)とSimple Storage Service(S3)用のWebサービス「Elastic MapReduce」をリリースしたのが最初だ。それに続いてGoogleは2010年半ばに、App EngineのMapReduceツールキットの最初のコンポーネントとなるMapper APIの実験バージョンをリリースした。2011年5月以降は、開発者がGoogle App Engine上でMapReduceジョブを本格的に実行できるようになった。ただしこの場合、プログラムが全てのリソースを消費してWebアクセスの妨げることがないように、レート制限が必要とされる。
Googleは2011年3月に、中間結果用のFiles APIストレージシステムを追加し、さらに7月には小規模データベース(100Mバイト以下)用にPythonのシャッフル機能を追加した。同社では、さらに大容量に対応するとともに、JavaバージョンとMapper APIを近くリリースする予定だとしている。
2011年後半に入り、Hadoop、MapReduceへの関心および同技術を統合する動きがさらに盛り上がってきたようだ。
Hadoop、MapReduceの統合計画
Oracleは2011年10月に開催された「Oracle Open World」で、ビッグデータアプライアンスを発表した(関連記事:オラクルが示すビッグデータ活用の課題とは?)。同社の発表によると、このアプライアンスは「Apache Hadoopのオープンソースディストリビューション、Oracle NoSQL Database、Oracle Data Integrator Application Adapter for Hadoop、Oracle Loader for Hadoop、そしてMapRのオープンソースディストリビューションで構成される新開発のシステム」だという。
同アプライアンスは、主としてOracleリレーショナルデータベース(クラウドベースのバージョンもある)の抽出・加工・転送(ETL)処理用にHadoopを利用するようだ。OracleのNoSQL Databaseは、組み込み型データベースのBerkeley DBをベースとする。同社は2006年に、米SleepyCat Software買収に伴ってBerkeley DBを獲得した。
また、Oracle Open Worldでデビューした「Oracle Public Cloud」は、JSP、JSF、Servlet、EJB、JPA、JAX-RS、JAX-WSなどの標準をベースとするアプリケーションの開発をサポートする。そのため、既存のHadoopインプリメンテーションをHadoop Connectorに連係することができる。Oracleが自社のパブリッククラウド製品用にHadoop、MapReduceをパッケージ化する動きは見られないが、AWS、IBM、Microsoft、Googleとの競争を考えれば、Hadoop、MapReduceが全てのエンタープライズ用パブリッククラウドの必須要件になる可能性もある。
Microsoftは2011年10月の「PASS」カンファレンスにおいて、年末までにWindows Azure用のHadoopベースのサービスをリリースすると約束した。同社のテッド・クマート副社長によると、2012年にはWindows Server用のコミュニティー技術プレビュー(CTP)をリリースする予定だという。さらにクマート氏は、Windows AzureをHadoopに連係させるためにHortonworksと戦略提携を結んだと発表した。
クマート氏の説明によると、SQL Server 2008 R2とHadoopの間でデータ転送を行うための新技術「SQL Server-Hadoop Connector」は、コンセプトとしてはOracleのHadoop Connectorに近いようだ。MicrosoftのSQL Serverチームのメンバーであるデニー・リー氏は、HiveODBCドライバを使って、Windowsデータベース用のHadoop内でログデータに対するHiveQLクエリのデモを行った。クマート氏によると、この技術は2011年11月にCTPとしてリリースする予定だとしている。Microsoftは通常、Windows AzureのCTPは無償で提供しているが、Windows Azureのコンピューティング時間料金とストレージの月額料金が適用される。
MicrosoftとIBMで進められているプロジェクト
MicrosoftのHigh Performance Computing(HPC)は2011年6月、Windows HPC Server 2008クラスタ用の「HPC Pack」のβ2およびHPC R2 SP2用の「LINQ」をリリースした。これらは数年前からMicrosoft Researchで「Dryad」および「Dryad LINQ」として開発が進められてきたものだ。その最も一般的な構成は「バーストシナリオ」と呼ばれるハイブリッド型クラウドモデルだ。このモデルでは、最上位ノードが社内に置かれ、ロードに応じて多数のコンピューティングノードがWindows Azure仮想マシンとして動作する。ファイルセットはWindows Azureドライブに保存される。
Microsoft Researchで取り組んでいるもう1つのプロジェクト「Daytona」は、Windows Azure用のMapReduceランタイムで、ユーザーフレンドリーなExcel DataScopeインタフェースを備えるが、これはまだ初期のCTP段階だ。Hadoopの広範な普及と実績に影響されたMicrosoftのサーバ/クラウドプラットフォームチームは、このプロジェクトで「本物」を提供しようと考えたのかもしれない(関連記事:Microsoftのビッグデータ投資の成果がいよいよ形に)。
Hadoopクラウドのバスに最後に乗り込んだIBMは、IBM SmartCloud Enterprise用のHadoopベースの分析ソフトウェア「IBM InfoSphere BigInsights」を投入した。同クラウド上で動作するBigInsightsには、BasicエディションとEnterpriseエディションがあり、パブリック、プライベートおよびハイブリッドのクラウド配備オプションが用意されている。
Basicエディションはエントリーレベルの無償オプションで、ブラウザベースの分析ツールであるBigSheetsコンポーネントを使ったビッグデータの分析(what-ifシナリオなど)の方法を学ぶことができる。ユーザーはEnterpriseエディションにシームレスに移行し、データ分析を始めることができる。使用量が少ない場合の価格は、1クラスタに付き1時間当たり0.6ドルから。両エディションとも、新世代のビジネス分析アプリケーションを開発できるデベロッパーサンドボックスの他、各種ツールおよびテスト&開発環境が含まれる。私の知る限りでは、試してから製品を購入できる無償のインプリメンテーションを提供しているのはIBMだけのように思える。
Hadoopとソーシャルネットワーク
Hadoopを利用している有名なソーシャルコンピューティング企業は他にもある。米Yahoo!では、検索サービス用に1万コアのLinuxクラスタ上でHadoopを運用している。米Facebookは7月、同社のHadoopクラスタが30Pバイトの容量に達したと発表した。米LinkedInでは、Tバイト規模のHadoopデータサイクリングアプリケーションを運用している。米Twitterもツイートの保存と処理にHadoopを使っている。また米eBayでは、532ノードからなる5PバイトのHadoopクラスタを運用しているという。
結論的に言えば、今日のエンタープライズ市場では、AmazonがHadoop、MapReduceの運用実績(2年半)を有する唯一のクラウドプロバイダーだ。IBMのBigInsightsはまだ幼年期の段階にすぎず、MicrosoftのHadoop CTPにしてもRTM(製造工程向けリリース)バージョンの正式な日程がまだ決まっていない。
私の予想では、2012年半ばには、ビッグデータ分析をめぐってAmazonとIBMが競合することになるだろう。Googleはビッグデータの分野にMapReduceを投入したが、同社のApp EngineとMapReduceの組み合わせの成功の可能性については、私は楽観視していない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
「IBM iはDXのボトルネック」は誤解 意外と知らない今風モダナイズの効果
-
9
「朝8時にバッチが終わらない」データ爆発の危機をJPX総研はどう乗り越えたか
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー