ユーザーアプリやiCloudコンテンツの管理に課題
AppleのiOS標準MDMでできること、できないこと
米Appleは、iPhoneやiPadの管理を効率化するMDM機能を標準提供する。標準MDM機能は端末設定の一斉適用やリモートロックなどが可能だ。一方で、アプリやコンテンツの管理機能には制限がある。
企業のIT部門は米AppleのiOSに用意されたMDM(モバイルデバイス管理)機能を利用することにより、iOS端末を誰が所有しているかにかかわらず、iPhoneやiPadをリモートで管理することができる。
Appleは企業市場への進出を本格化すべく、一元的な端末管理を可能にするMDM機能をiOSの各バージョンに組み込んできた。さらにiOS 5において、Appleはついに管理機能におけるクライアント端末への依存性を取り払い、IT部門が社内のiPhoneやiPadをより厳格に管理できるようにした。だがiOSの標準MDM(以下、iOS MDM)には、重要な機能が幾つか欠落している。
クライアント端末依存からの脱却
初代iPhoneがリリースされた時点では、同端末の初期化や同期、バックアップのために、iTunesが動作するMacintoshやWindowsマシンに接続しなければならなかった。それ以外の設定(パスコードやメールアカウント、Wi-Fi、アプリケーションなど)は端末に手作業で設定する必要があった。
Appleはその後、iOSのMDM機能を追加していった。まず「iPhone 構成ユーティリティ」、その次が「Mobile Device Management API(MDM API)」だ。そして2011年にリリースされたiCloudとiOS 5では、クライアント端末とiOS端末との間に残された最後の綱が断ち切られた。現在では、エンドユーザーやIT部門はiOS端末の初期化やアップグレードを無線経由で実行できる他、iCloudを利用したコンテンツの同期やバックアップが可能だ。iCloudでは高度な暗号化を使ってドキュメントやデータ、ユーザー情報が保存され、SSL(Secure Sockets Layer)経由でiOS端末と自動同期する。
標準MDMによるiOS端末の一元管理
iOSの進化のおかげで、IT部門はiPhoneやiPadを管理しやすくなった。現在、IT部門はiOS 5端末に対して以下の管理タスクを実行できる。
- ユーザーIDや端末のプロパティ、ポリシーに基づく端末の登録
- パスコードポリシーの設定や端末機能の制限、メール、カレンダー、Microsoft Exchange Serverのアカウント、VPN、Wi-Fi、認証などの適用と設定
- 業務アプリケーションのインストールやアップデート、削除、実行を許可するプロファイルの設定
- 端末の状態や属性(iOSのバージョンや機種名、ID、ハードウェア機能など)、ネットワークプロパティの確認
- 端末のロックやパスコードのリセット、データの消去
IT部門はiOS MDMを利用することで、暗号化によるバックアップ制限を一元的に配備、適用でき、社内データが個人のクライアントPCに流出するのを心配しなくて済む。IT部門は業務用アプリケーションの購入を従業員任せにするのではなく、iOS MDMを利用してアプリケーションのインストールを促したり、ライセンスを配布することができる。さらに、IT部門はアプリケーションのインストールとアップデートのタイムリーな実行を従業員に任せなくても、更新されたプロファイルをプッシュ配信したり、更新が遅れている端末を自動的に隔離したりできる。
iOS 5端末管理の問題点
残念ながら、iOS MDMはあらゆる管理ニーズに対応できるわけではない。例えば、IT部門はiOS MDMを使ってアプリケーションのインストールを促し、その状況を確認することはできるが、従業員がインストールしたアプリケーションを削除することはできない。また、iOS MDMを利用してiCloudでのバックアップやドキュメントの同期を有効にしたり無効にする制限付きプロファイルを配信することはできるが、連絡先と音楽ファイルのバックアップを許可しつつ、メールとドキュメントのバックアップを禁止する、といったことはできない(これは従業員が端末に設定するしかない)。
Apple IDとパスワードがあれば、従業員はiCloudにあるコンテンツにアクセスできる。ここでIT部門は厳格なアクセスコントロールを行使することはできない。また、バックアップされた社内データを復元したり、従業員の個人用端末への転送を防ぐために社内データを消去するための手段も存在しない。
このような制約があるものの、iOS MDMを利用すればIT部門はiOS 5端末の管理をかなりの程度まで実現できる。経営幹部はまず、自社の管理ニーズやポリシーと、iOS MDMでできること、できないことを比較する必要がある。その上で、社内のiPhoneとiPadを一元的に管理するためのiOS向けMDM製品を選ぶといい。その際には、端末配備の方式や対応する端末の種類、社内ディレクトリとの連携、拡張性、自動化、リポート生成機能などをチェックすることが大切だ。
iOS MDMの歴史
Appleは2008年、iPhone 構成ユーティリティ(iCU)をリリースした。iCUはデスクトップ端末で動作するプログラムで、管理者はiCUを使って構成プロファイルをUSB経由でiPhoneに(後にiPadにも)プッシュできる。Appleがその後追加したアプリケーションプロファイルにより、IT部門は1つのユーティリティで設定とアプリケーションを配備できるようになった。だがiPadやiPhoneの初期化はUSB経由でしかできず、ユーザーは端末をコンピュータに同期する必要があった。
Appleは2010年にリリースしたiOS 4で、MDM APIを追加。端末設定やアプリケーションプロファイルのインストール、アップデート、削除を無線経由で実行できるようになった。プッシュ配信機能である「Apple Push Notification Service」を通じたプロファイル配信も可能。さらに、管理対象端末の承認や設定の監視、端末のリモートロック、リモートワイプといった機能もある。IT部門はこれらのAPIとMDM製品を組み合わせることにより、iOS端末のさまざまな管理ができるのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] 複雑化しがちな「SASE運用」 IT・医療・金融などの事例に見る導入成功の秘訣 -
製品資料
[フォーティネットジャパン合同会社] 「SD-WAN」導入で失敗しないための5つの重要事項 -
技術文書・技術解説
[フォーティネットジャパン合同会社] VPNの代替候補「ZTNA」を理解できるようになる“3大要素”とは? -
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] すぐ分かる「SD-WAN」選定のポイント 成功企業はどんな成果を出した? -
製品資料
[SCSK株式会社] 「Dropbox」管理・運用の困りごと解決ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
みずほ証券が「液冷サーバ」を採用 1日3.6億件の計算を支えるための要件
-
4
Microsoft月例パッチ1400件超で過去最多 「限界点」を迎えたパッチ管理
-
5
SAP導入後も残る“Excel依存” 京急電鉄は「kintone」でどう解消した?
-
6
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
7
いまIBM iエンジニアが直面する「5つの技術的課題」とその解決策
-
8
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
9
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
10
Microsoft 365の「テナント統合・分離」問題 手戻りのない道を選ぶ秘訣とは?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー