ビッグデータの活用方法が分かる3つのホワイトペーパー:ホワイトペーパーレビュー
日本企業のビッグデータ活用事例が紹介され始めている。先進企業はどのようにビッグデータを活用しているのか。またビッグデータを活用する上でIT部門が考慮すべきことは何か。役立つホワイトペーパーを紹介する。
「ビッグデータ活用」が注目されるようになり、その具体的な検討を始めている企業は少なくないだろう。しかし、これまで処理したことのない膨大なデータ量を活用するための分析基盤の刷新や新規構築には、相応のスキルやコストが求められるため、すぐには新システムの導入に踏み込めない企業も多いのではないだろうか。そんな中、具体的な日本企業におけるビッグデータ活用事例をはじめ、ビッグデータを活用する上での考え方や求められるスキルをまとめた技術文書が紹介され始めている。本稿ではTechTargetジャパンに登録されているホワイトペーパーの中から、ビッグデータ活用に役立つ3つホワイトペーパーを紹介する。
つぶやきと株価変動の関係性を導き出す
ビッグデータ事例:Twitterを株価変動予測に生かすカブドットコム証券の挑戦
「ビジネスに活用すべきビッグデータ」としてよく挙げられるのが、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアのデータだろう。対面や電子メール、Webサイトの問い合わせ窓口、コールセンターなどに寄せられる顧客の声と合わせて、ポジティブ/ネガティブ入り混じったソーシャルメディア上の評判を商品開発やマーケティングに生かそうという企業が増えてきている。
そんな中、ソーシャルメディアの膨大なデータを使って珍しい取り組みを行っているのが、インターネット取引を専業とする証券会社、カブドットコム証券だ。このホワイトペーパーでは、同社がシステム開発を進める「ソーシャルメディアセンサー」の狙いとシステム構成を紹介している。同システムは、つぶやきと株価変動との関係性を導き出すことを目指したものだ。テキストマイニングのツール「IBM Content Analytics」、Hadoopベースの分析ソリューション「IBM InfoSphere BigInsights」などを導入してシステム構築し、実証実験を行ったという。
実証実験では収集対象となる銘柄を46社、その銘柄に関連するキーワードを約4万3000に絞り込んで収集データの精度を上げていく試みから始め、キーワードが記述されているTwitterの情報を収集して相関分析を行った。Twitterでつぶやかれているキーワードと株価の変動とを照らし合わせることが可能となり、両者の関連を調べるなどの検証が可能になったという。ソーシャルメディア上の膨大な声をどのように自社のビジネスに生かすかを考える上で、さまざまな業種に応用できる事例といえるだろう。
関連するホワイトペーパー
- 「ビッグデータ」「ソーシャルアプリ」キーワードからひも解くこれからのコンピューティング
- 「つぶやき」から何を得る――ビッグデータにおける最適なプラットフォームの姿
- ネット上の「顧客の声」を最大限に生かす〜ソーシャルメディア分析の先進活用事例
最大8倍の処理性能向上、ソフトバンクモバイルのDWH刷新プロジェクト
スマートフォンユーザー急増に対応、ソフトバンクモバイルが選んだ「Oracle Exadata」
ボーダフォン買収以来、堅調な成長を続けるソフトバンクモバイル。買収当初、月間2万人程度だった新規加入者の増加数は、iPhone、iPadの投入以降は月間20万人のペースとなった。想定をはるかに上回る増加数に、当時利用していたユーザー情報を蓄積するデータウェアハウス(DWH)専用マシンの限界が近づいていた。本ホワイトペーパーでは、同社における「Oracle Exadata」導入の経緯と狙い、そして導入によって得られた効果を詳しく解説している。ETLやデータ抽出などの処理性能を最大8倍に向上、サーバラックの設置台数を36台から3台に削減した他、25時間かかっていたデータ解析を7時間に短縮し、結果をその日のうちに見られるようになったことで収益に直結する効果も出ているという。
基幹システムをはじめとするさまざまな社内システムのログデータは日々増え続け、テクノロジーの進化によってこれまでためるだけだったログの活用が可能になってきた。構造化データとはいえ、高速に処理することで高度な洞察や意思決定を行うための新たな知見を得られるのであれば、そのデータは「ビッグデータ」に値する(関連記事:【市場動向】企業システムの変遷に見るビッグデータ潮流の背景)。2010年の事例ではあるが、今後の成長を見越したデータ分析基盤を選定する上で、参考にしたい事例だ。
関連するホワイトペーパー
- 30時間の処理が21分に! 実環境で検証された高速マシンによる基幹業務の速度アップ
- 基幹システムのバッチ処理を劇的に高速化するHadoop活用
- インメモリテクノロジーを理解するための「6つのシナリオ」と技術解説
- 真のデータウェアハウス用途に適した製品はどっちだ?
ビッグデータ活用を考えるITマネジャーのための入門文書
ビッグデータアナリティクス:知っておくべきアーキテクチャ、スキル、ロードマップ
このホワイトペーパーは、CIOやIT部門のマネジャーが知っておくべきビッグデータ分析に関するアーキテクチャと習得すべきスキル、将来に向けた導入のロードマップの考え方を解説したものだ。米IT関連調査会社のIDCが制作している。
従来型のアナリティクスと「ビッグデータ時代」というくくりの中で取り上げられているアナリティクスとの大きな違いは、「現時点で認識している必要性の有無によらず、幅広くデータを収集する点」だとホワイトペーパーでは指摘している。そうした状況では全く新しい変数や分析モデルを適用する可能性が高いため、これまでとは異なるインフラ戦略と新たなスキルセットが必要になるという。
ビッグデータは企業やIT部門にどのような影響をもたらすのか。従来の分析基盤とはどのような変化が必要なのか。ビッグデータの定義や意義、Hadoopなどの最新技術についても豊富に解説されているので、ビッグデータ活用のためのシステム構築の考え方、製品選定の基準を考える上で、まず目を通しておきたいホワイトペーパーといえるだろう。
今回紹介したホワイトペーパー以外にも、ホワイトペーパーダウンロードセンターでは、ビッグデータを活用する上で参考となる技術文書や製品資料、事例紹介などを掲載している。ぜひダウンロードしてご活用いただきたい。
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