スマートフォンによる医用画像の共有で遠隔診断を支援する「SYNAPSE ERm」:院外の専門医とも画像共有が可能
一刻を争う救急医療の現場。富士フイルムの「SYNAPSE ERm」は、モバイル端末を活用してリアルタイムな画像や治療状況を医療スタッフ間で共有し、適切かつ迅速な医療提供を支援する。
写真フィルムで培った画像処理技術を応用し、X線など各種画像診断システムを提供する富士フイルム。同社はPACS(医用画像管理システム)を核とする「SYNAPSE」シリーズで、病院のIT化を推進している。その1つとして、2012年12月に遠隔画像診断治療補助システム「SYNAPSE ERm」を販売開始した。製品名のERmの「ER」は救急救命室、「m」はモバイル端末を表す。SYNAPSE ERmは、Android端末やiPhoneなどのスマートフォンやタブレット端末を活用して救急医療の現場の診断や治療、コミュニケーションを支援するツールだ。
場所を問わない画像やメッセージのやりとりを実現
SYNAPSE ERmは、救急患者を受け入れた病院から、専門医が持つモバイル端末に患者の検査画像や診療情報を送信し、治療に必要な処置情報の共有や病院内での診断や治療を支援するシステムだ。脳卒中の救急医療をサポートするために2011年に発売した「i-Stroke」がベースになっている。SYNAPSE ERmでは、心疾患などの治療の基礎情報として必須である生体モニター情報の表示機能などを追加。救急医療全般での広範な活用を可能とした(関連記事:2012国際医用画像総合展に見る、モバイル端末利用や地域医療連携の広がり)。
従来、医療現場では携帯電話やメールで専門医に相談するという取り組みが進められてきた。富士フイルムのメディカルシステム事業部 ITソリューション部 担当課長、中村幸司氏は「SYNASE ERmでは、モバイル端末を活用することで、医療スタッフが院外にいた場合でもMRIやCTの画像を確認できる。また、検査や処置に関する的確なアドバイスにつなげられ、迅速で適切な処置を実施可能だ」と説明する。
規模の大きい大学病院などでは、研修医や非専門医が救急診療に当たることも珍しくない。その際、自身で判断が難しければ、院外にいる上級医に相談することになる。しかし、電話の通話だけでは院外の上級医との状況の精緻な共有は困難だ。そのため、上級医が病院に到着するまで指示が出せなかったり、実際にはまだ経過を見るべき段階であったりということも少なくない。SYNAPSE ERmは、こうした状況を改善する診断補助ツールに位置付けられる。
SYNAPSE ERmは、PACSと連携するSYNAPSE ERmサーバを院内に設置し、院内では無線LAN経由で、院外からはVPN(Virtual Private Network)接続でアクセスしてユーザーに情報を配信する。救急患者の来院をスタッフに一括伝達したり、場所を問わずにリアルタイムで検査画像や動画、3D画像などを閲覧できる。
SYNAPSE ERmの特徴的な機能は、医療スタッフ間での患者の診断情報などを共有するための「タイムライン」機能である。タイムラインは、患者の登録やPACSの検査画像をSYNAPSE ERmサーバに送信した際にシステムが自動的に作成する。以後、処置の過程や参照した画像などを時系列で表示。医療スタッフはタイムラインを確認することで、その患者の状況を一目で把握できる。
「救急医療の現場では、患者の容体に応じて投与できる薬や処置の選択肢が刻々と変わる。そのため、医療チーム全体での診療経過の把握が極めて重要。タイムラインはその徹底のための機能と位置付けられる」(中村氏)
タイムライン作成時には、通知メールが送信され、グルーピング機能によってその送信先を柔軟に振り分けられる。非番の医師への通知を避けられるなど、スタッフの負担軽減にも配慮できる。
また、タイムラインにTwitterのようにコメントできる機能や音声認識技術を基にした音声変換によるテキスト入力も可能で、緊急性の高い処置で求められる情報の迅速なやりとりをサポートする。
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