「タブレット端末・スマートフォンの業務活用」調査リポート
【市場調査】現場の医師に聞いた、タブレット端末の業務活用メリット、デメリット
医療現場でのiPadやAndroid搭載端末といったタブレット活用が急速に進んでいる。その普及は今後どれくらい見込まれるのか? シード・プランニングが医師に実施したアンケート調査の結果を踏まえて考察する。
2010年5月のiPad発売以来、医療従事者の中にAppleファンが多いことも手伝いiPadが広く普及している(関連記事:内科医の75%がAppleユーザー 米国医療機関注目のiPhone/iPad管理ツール)。プライベートでの活用だけでなく、医療現場でiPadやAndroid搭載端末を業務用端末として利用するケースが増えている。
現在、病院や診療所の診察室には電子カルテ端末としてデスクトップPCが置かれ、病棟の廊下にはノートPCを設置するという風景をよく目にする。今後、これらの端末がタブレット端末に置き換わっていく可能性があるのか、気になるところだ。医療機関において、タブレット端末がどれくらい普及していくことが見込まれるのか? 本稿では、シード・プランニングが2012年3月に268の医療機関の医師に対して実施した「医療機関におけるタブレット端末・スマートフォン利用実態調査」の結果を踏まえながら考えてみる。
デメリット:「取りあえず導入」では導入効果はあまり期待できない
現場でタブレット端末を活用している医療機関に話を聞いてみると、「まず導入ありきで、その活用方法は決まっていなかった」という声が多い。タブレット端末という目新しさと、販売価格が医療機関向けのPDA端末の価格の3分の1以下であることから「導入してみよう」と判断するケースである。一方、電子カルテベンダーに話を聞くと「現在使用している電子カルテをiPad対応にカスタマイズしてほしい」と依頼されることがあり、公式対応していない場合はiPad端末を施設自ら購入してもらうこともあるそうだ(PC端末はベンダーが納品する)。しかし、この「取りあえず導入」ではうまくいかない。
ある大学病院では、電子カルテ端末としてiPadを導入してみたが、実際にはそれほど利用する機会が少ないことに気づいたという。タブレット端末の欠点として「ソフトウェアキーボードの使いづらさ」がある。そのため文章入力を多くこなす診察室の端末には適していない面もある。また、病棟で看護師が使用するノートPCについても、経過観察をはじめ文章の入力が頻繁であるため、タブレット端末には置き換えられないという。
その解決策として「医師が回診する際に持ち歩く」という使い方が考えられる。しかし、基本的に医師は回診前に担当する患者の状態を把握しているため、患者の目前で電子カルテを参照しなくてはならないニーズは少ない。では「タブレット端末が有効なシチュエーションは?」といえば、担当医以外が回診するときの参照端末としての使用ということだった。そのような状況は決して頻繁には発生しないという。
「タブレット端末に対応する電子カルテ」関連記事
メリット:さまざまな医療用アプリを活用できる
一方、患者とのコミュニケーションにタブレット端末をうまく活用しているケースがある。例えば、初診の患者が記入する問診票は、文章の入力を少なめにして、選択肢で回答する形式の方が効率的だ。その点はタブレット端末が適している。また入院病棟で医師の参照端末ではなく患者への説明用に使用する場合、医用画像や経過グラフなどを一緒に見ながら分かりやすい説明を可能にする便利なツールとなる。
アンケート調査でタブレット端末の活用方法について質問したところ、「患者への病気や治療、施設についての説明に使用」が他を大きく引き離してトップだった。施設規模ごとに見ると、診療所では80.5%になるなど、施設規模が小さいほど患者への説明用端末としての割合が高かった。
タブレット端末の魅力は、その携帯性や操作性というデバイスとしての特性だけでなく、さまざまな医療用アプリを使用できる点も挙げられる。アンケート調査では、タブレット端末で活用しているアプリの名称を質問した。回答数が多かった分野は「医用画像閲覧」「論文・学術誌の閲覧」「薬剤情報」「医学辞書」などであった。各分野で人気のアプリが存在している。
| 種類 | アプリ名(開発・販売企業) |
|---|---|
| 医用画像閲覧 | 「OsiriX」(ニュートン・グラフィックス) |
| 論文・学術誌の閲覧 | 「PubMed on Tap」(ReferencesOnTap) |
| 薬剤情報 | 「安心処方 infobox」(IMS ジャパン)、「今日の治療薬」(ジェイマックシステム) |
| 医学辞書 | 「ステッドマン医学大辞典」(メジカルビュー) |
PCとの併用を前提として特性を生かした活用を
アンケート調査では「医療機関におけるタブレット端末の普及見込み」「今後の状況について現場の医師がどう感じているか」なども質問している。
その結果によると「タブレット端末は一部の業務で活用されるものの、ノートPCは現状のまま残る」という予測が最も多かった(54.9%)。その理由については「携帯性に優れている」といったメリットが挙げられる一方で、「タブレット端末は文字入力に適していない」というデメリットを指摘するものが多かった。今後の医療機関におけるタブレット端末普及は、PCとの併用を前提としてその特性を生かした活用方法の開発が鍵を握るだろう。
今回紹介した調査結果の詳細は、シード・プランニングが発行している『医療機関におけるタブレット端末・スマートフォン利用実態調査』に記載されている。
著者紹介
久保延明(くぼ のぶあき) 株式会社シード・プランニング エレクトロニクス・IT/ヘルスケアチーム主任研究員
医療ITや医療機器、医療政策などヘルスケア分野と、ディスプレー市場などエレクトロニクス分野を担当する。
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