医療再生を支援する地域医療連携システム、2020年の市場規模は240億円:地域医療連携システム市場調査リポート
シード・プランニングが2011年7月に発表した「地域医療連携システム」に関する市場規模調査によると、2010年の市場規模は約18億円。2020年には240億円まで成長するという。
さまざまな課題を抱える医療分野の解決策として、各地域で進んでいる「地域医療連携」(関連記事:地域医療の問題解決を支援する情報ネットワーク)。シード・プランニングは2011年7月、同市場の調査リポート「2011年版 地域医療連携システムの現状と今後の方向性」を刊行した。このリポートは、システム提供ベンダーへの個別取材や医療機関へのアンケート調査を基に、地域医療連携を支援するICTシステムにおける市場規模の現状および予測、普及への課題などをまとめたものである。本稿では、その概要を紹介する(編集部)。
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地域医療の崩壊と行政施策
まずは、地域医療連携が進んでいる背景を紹介する。以前は、大学病院のようないわゆる大病院の他に「一般病院」や「療養型病院」などがあり、さらに一般病院の中でも複数の診療科を備えた「総合病院」と呼ばれる病院が数多くあった。また保険医療制度上も、さまざまな疾患を抱えた患者の「日常の健康管理」「入院」「手術」「救急」「退院後の継続治療」などを1つの病院で全てまかなえる「総合病院」を奨励していた。いわゆる「病院完結型医療」である。
しかし、医療の高度化や患者の高齢化、慢性疾患の増大によって医療費が膨張。厚生労働省が医療費抑制のために打ち出した医療改革は、地方の総合病院を直撃した。在院日数の短縮化、医療費の定額支払い評価方法「DPC(Diagnosis Procedure Combination)」の導入、クリニカルパスの整備、医療費の自己負担の増額、在宅医療の支援などによって、医師の負担が増加するとともに経営が圧迫され、医師不足や医師の偏在も重なって医療崩壊が顕著となった。
医療技術の進歩と医療機関の機能分化が加速する中で、もはや1つの病院が単独で効率的経営を持続することは困難といえる。そこで行政は、急速な高齢化の進展や医療従事者の不足、地域医療問題などの解決策の1つとして「医療機関の機能分化や広域の医療連携、患者情報の共有」などを推進。地域全体で医療の質の向上と効率化を図り、地域の医療資源を有効活用する施策に取り組んでいる。
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地域医療連携システムとは
地域医療再生の解決策の1つとして、地域において患者情報を共有する共通情報基盤が必要である。それには「IT」の持つ統合力が不可欠となる。地域の患者情報の共有化を図るツールとして各ベンダーから「地域医療連携システム」が提供されている。
本稿で取り上げる地域医療連携システムは、「医療機関間で情報を共有するためのシステム」と「連携室支援システム」の2種類に分類した。医療機関間の連携システムについては、主として「診療情報共有システム」と「画像を共有システム」に分けて整理した。また連携室支援システムとしては、紹介元医療機関への返書や検査予約などの地域医療連携室の業務を支援する院内システムに位置付けた。
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