古いアプリケーションもクラウドへ、米酒造メーカーの取り組み:パブリッククラウドはレガシーアプリに適するか?【前編】
新規アプリケーションに向いているといわれるパブリッククラウドだが、既存アプリケーションの移行にも適しているのだろうか。実際にレガシーアプリケーションを移行させた米酒造メーカーを紹介する。
最新のツールと流行のプログラミング言語を使って開発されたパブリッククラウドは、新規のアプリケーションを動作させるのに適した環境だ。では、企業のデータセンターに散乱している多数のレガシーアプリケーションもクラウドに移行していいのだろうか。
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アプリケーションの更新時期を迎えている場合、ハードウェアの段階的アップグレードや新しいGUIの採用など、手直しだけで満足していいのだろうか。それよりも、スケーラブルなパフォーマンス、高い柔軟性と障害復元性を備えた最先端のクラウドプラットフォームにアプリケーションを移行すべきではないだろうか。これは、CAPEX(設備投資コスト)モデルからOPEX(設備維持コスト)モデルに移行することでもある。
「実際、このような質問をしてくるITプロフェッショナルが最近増えている」と話すのは、米調査会社IDCでアプリケーション開発ソフトウェアの調査を担当するプログラムディレクターのアル・ヒルワ氏だ。彼らは、レガシーアプリケーションを刷新する取り組みで、移行先プラットフォームとしてクラウドに関心を示しているという。
「クラウドに適したワークロードもある。例えば、社外向けのアプリケーションだ」とヒルワ氏は説明する。しかし既存のレガシーアプリケーションをクラウドに移行する場合には、プロジェクトに着手する前に検討すべきことが幾つかある。
立ちはだかる障害
米酒造メーカーのPabst Brewingは2012年夏、データセンター全体をテキサス州サンアントニオのオフィスからRackspace Hostingに移行し、米Rackspaceのクラウドサービスとマネージドサービスの利用を開始した。作業は比較的スムーズに進んだが、2つの古いアプリケーションを移行する段階でつまずいたという。「Microsoft Dynamics GP」(以前は「Great Plains」と呼ばれていたERPシステム)と「Salient Margin Minder」(売上管理ソフトウェア)だ。
「どちらのアプリケーションも5年以上運用しているもので、多数のアップグレードやパッチ適用が行われてきた」と説明するのは、移行業務を統括した米ITインテグレーターVirtessentialのスティーブン・ブレイクCEOだ。
「Pabstではインストール用のソースファイルやこれまでの構成変更に関するドキュメントも見つからなかった。また、何がインストールされたのかを知っている人は誰もいなかった。アプリケーションが一種のブラックボックスになっていた」とブレイク氏は話す。
一方、多くのマネージドサービスプロバイダー(MSP)がそうであるように、Rackspaceもよく分からないアプリケーションに対してSLA(Service Level Agreement:サービスレベル契約)を提供するのを嫌がった。
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