企業ユーザー垂涎の的、Windows 8.1が持つこれだけの新機能:セキュリティ機能はWindows 7の6倍
Windows 8に対する企業ユーザーの反応の鈍さを受けて、Windows 8.1には大企業のIT部門にアピールする複数の新機能が盛り込まれている。
米Microsoftは、Windows 8ではエンタープライズ向けに強力なメッセージを届けることができなかった。ユーザーインタフェースに注力し、一般消費者を派手にあおったものの好評を博したとはいえない。しかもそのことで、主要顧客であるITスペシャリストらのコミュニティーにおける同社の影響力も危ういことになっている。
2013年6月初めに米国で開催された「TechEd North America 2013」カンファレンスにおいて、「Windows 8は大規模企業ユーザーへの配慮が足りない」と不満を漏らしている参加者を複数見かけた。だがMicrosoftは、組織での利用に役立つ機能をWindows 8.1でようやく実装した。これを受けてWindows 8の導入を検討し始めた企業もある。あるIT管理者は匿名を条件にこう明かしてくれた。「弊社では、年内にもある小売店のストアマネジャー向けにWindows 8を導入する予定であるが、それはWindows 8タブレットには競争力のポテンシャルがあると判断したからだ」。
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Windows 7よりはるかにセキュアなWindows 8.1
同カンファレンスの席上で、Microsoftは「Windows 8.1ではセキュリティ関連の機能を統合した。その結果、Windows 8のセキュリティ機能はWindows 7と比べて6倍もの強化を施したことになる」と説明した。
セキュリティとユーザー管理のために追加されたコンポーネントは、Windows 8.1の新機能の目玉ともいえる。実際、同カンファレンスでは、Windows 8.1のセキュリティ機能への理解促進を目的とするセッションが複数用意されていた。新機能とは、具体的にはバイオメトリクス認証のサポート、仮想スマートカードによる多要素認証、全てのWindowsデバイスに適用されるデータの暗号化などだ。Windows Defenderには、マルウェアなどの攻撃からユーザーを保護するためのコンポーネントも追加された。
ITコンサルティング会社、米Enderle Groupの主任アナリスト、ロブ・エンダール氏は、「セキュリティに注力したことは、製品のてこ入れとしては名案で、多要素認証はセキュリティに力を入れるというMicrosoftからの強いメッセージだと感じた」と話す。
Windows 8.1では、製品などのデジタル証明書に対する攻撃を防ぐ第一歩として、証明書のデータをクラウドに収集し、分析することができるようになる。WebサイトのデジタルIDが攻撃された場合、Microsoftは証明機関と連携し、改善策を実施する。
MicrosoftでWindows Client Securityを担当するシニアプロダクトマネジャー、クリス・ハラム氏によると、「既存のマルウェア対策製品を既に利用しているローカルのマシンでは検出できないマルウェアを検出する、マルウェア対策のソリューションも無償で提供される」という。
Windows 8.1ではデータの暗号化が提供されるが、これはWindows Phone、タブレット、PCの全てのバージョンのWindowsで共通だ。この機能はWindows 7にはなく、Windows 8でも当初は追加される予定はなかった。
「Windows 7かWindows 8でデータ暗号化機能を追加してほしいというのは、顧客からの要望だった。ただし、Trusted Platform Module(TPM)チップはハイエンドPCだけの対応となる。現在は個人所有のスマートフォンやタブレット端末を業務で使うBYOD(Bring Your Own Device)プログラムやTPMが急激に普及しつつあるので、この機能はもっと広範囲に、例えばファームウェアとして提供する可能性もある」(ハラム氏)
ただしMicrosoftは、セキュリティの急所の1つであるDirect Memory Access(DMA)については、モバイルデバイスではサポートしない。
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Windows 8.1の改善点
この他、Windows 8.1の改善点としては、企業において、Windows 8の社内環境のインストールイメージを容易に作成する機能なども追加される。
流通業界のあるIT管理者は、「Windows 8デバイス上で基幹業務(LOB)アプリケーションのイメージを作成するのは苦痛だった」と語る。その管理者は、Windows 8.1でその問題が解決されたのを見て満足したそうだ。社内展開用のイメージを1つ作成して、使用するタブレット全てにそのイメージを展開できれば、作業がずっと楽になるからだ。
また、Windows 8.1はOpen Mobile Alliance(OMA)のデバイス管理標準をサポートしているため、大規模組織でサードパーティーのMDM(モバイルデバイス管理)製品も活用できる。
さらに、Windows 8.1では、Workplace Joinや選択ワイプの機能も加わる。これによって、システム管理者が業務用と個人用のファイルを区別できるため、BYODシナリオでもデバイスの管理が容易になる。「IT管理者が業務用のデータをデバイスからワイプする必要が生じた場合、選択ワイプ機能を利用すれば個人使用のデータをデバイスに残したまま必要なデータだけをワイプできる」と、MicrosoftのWindows ServerおよびSystem Centerプログラムマネジメント担当副社長、ブラッド・アンダーソン氏は話す。
現在、この機能はWindowsベースのデバイスのみで動作する。アンダーソン氏は、米AppleのiOSや米GoogleのAndroidベースのデバイスへの対応については、具体的な時期を表明しなかった。Workplace Joinとは、ユーザーが個人で使用しているデバイスをActive Directory経由で登録することによって企業のネットワークにアクセスする機能だ。
この他にも、Windows 8.1の大規模組織向けの機能としては、近距離無線通信(NFC)のサポート、タップ・ツー・ペア(Tap-to-Pair)印刷のサポート、Wi-Fi経由のダイレクト印刷、無線でテレビに画面を表示するMiracastへの対応、広帯域テザリング、自動トリガーの仮想プライベートネットワーク(VPN)のサポートなどが挙げられる。
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なおも立ちはだかるWindows 8適用へのハードル
それでもMicrosoftの前途には、一筋縄ではいかない課題が待ち構えている。Windows 7に特に不満はなく、Windows 8で一新されたユーザーインタフェース(UI)には今でもなじめないという組織が少なくないことだ。
化学製品メーカー、米Gaska TapeのITエンジニア、ジェイソン・クラウ氏は、「Windows 8を使ってみてUIに特に問題は感じなかったものの、旧バージョンのWindowsデスクトップに慣れきった新し物好きではないユーザーは、このUIには戸惑うだろうと感じた」とコメントする。
一方、Windows 8.1のUIが気に入らないわけではないが、単純に、すぐにはアップグレードできない状況にあるユーザーもいる。石油精製会社、米Western Refiningで社内利用のWindows製品サポートを担当しているエンジニア、アラン・プラット氏は「システムが穴だらけなので、それを埋めるのが先決だ。新しいOSに移行するよりも、他の技術上の問題を解決することの優先度の方が高い」と話す。
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