「ひとり情シス」課題別解決マニュアル【第2回】
ひとり情シスに贈る、頼れる販社/SIerの見分け方
頼れる人が少ない、あるいはいない“ひとり情シス”にとって、パートナーとなる販社/SIerは日々の負荷を左右する重要な存在だ。頼れる販社/SIerを探すにはどうすればいいのだろうか? 簡単・確実な選び方を紹介する。
前回はひとり情シスの現状を俯瞰した。第2回以降は前回触れた、以下の3つの課題を順番に詳しく見ていくことにする。
- 課題1:販社/SIerとうまくコミュニケーションが取ることができず、自社が必要としているソリューションを提案してもらえない
- 課題2:スマートデバイスの効果的な活用法が分からないことに加え、拠点に散在しているクライアントPCのトラブル対応で手いっぱいである
- 課題3:クラウドコンピューティングを導入する価値が本当にあるかどうかの判断ができず、一方で個人向け無償クラウドの勝手な利用も不安である
今回のテーマは「課題1:販社/SIerとうまくコミュニケーションを取ることができず、自社が必要としているソリューションを提案してもらえない」である。ひとり情シスは社内システムの運用管理だけでなく、ITソリューションを提供する販社/SIerとの窓口もこなさなければならない。逆に、そこで販社/SIerという社外の力をうまく活用できれば、負担を大きく軽減することも可能となる。
そこで今回は「ユーザー企業は販社/SIerをどう評価しているか?」を尋ねた調査結果を基に、「提案段階」「見積もり段階」「保守/サポート段階」の各場面において、販社/SIerと賢く付き合うコツを探っていくことにする。
まずは幅広い商材を持ち、自社に関心を寄せてくれる会社を選ぼう
以下のグラフは従業員数50人未満と、従業員数50人以上500人未満の企業に対し、ITソリューションの提案を受ける段階で「販社/SIerに対して満足している」または「不満に感じている事柄」を尋ねた結果のうち、従業員数によって差の大きい項目をプロットしたものである。
前回、「従業員数50人未満の企業になると、ひとり情シスの割合も高くなる」ことを紹介した。つまり、従業員数50人を境界線として傾向差を見ることで、ひとり情シスが留意すべきポイントが見えてくるはずだ。以下では便宜的にグラフ中の従業員数50人未満の層を「ひとり情シス企業」、従業員数50人以上500人未満を「非ひとり情シス企業」と記すことにする。
グラフでまず目に留まるのが、項目1-1「自社に固有の事情や背景を理解した営業やSEが担当するため、自社業務の説明がしやすい」における、「ひとり情シス企業」と「非ひとり情シス企業」の差だ。
IT投資規模が比較的小さい「ひとり情シス企業」に対しては、販社/SIerも企業の個別事情に関係なく定型的なIT商材を勧めがちだ。その結果が項目1-1の差となって表れていると考えられる。だが、ひとり情シスとしてはそこで遠慮をせずに自社の業務を理解してもらうように努めることが大切だ。「ITに限らず自社の課題や悩みを話したとき、メモを取るなどして真摯に耳を傾けてくれるかどうか」が、付き合うべき販社/SIerを判断する有効な基準となってくる。
項目1-2「幅広い商材を持っており、どんなことでも窓口を一本化して対応してもらえる」と、項目1-3「扱える商材が限られており、他の業者にも相談をしなければならないことが多い」は、いずれも「販社/SIerが扱う商材の幅広さ」に関する事項だ。項目1-2は満足している事柄、項目1-3は不満に感じている事柄となる。だが両方とも「ひとり情シス企業」の方が「非ひとり情シス企業」よりも回答割合が高い。つまり、同じひとり情シスでも、幅広い商材を扱う販社/SIerと付き合うことで窓口の一本化を実現できている場合と、個別に複数の販社/SIerとやりとりすることで負担を感じている場合の両方があることになる。当然ながら、ひとり情シスとしては少しでも広い商材のカバレッジを持つ販社/SIerを選んだ方が効率的といえる。
このように提案段階で販社/SIerの力をうまく活用するには「幅広い商材を扱うことができ、自社に興味や関心を持ってくれる」パートナーを選ぶことが重要だ。
「見積もり段階」では提示の早さより網羅性を重視しよう
以下のグラフは、「提案段階」と同じ設問を「見積もり段階」について尋ねたものである。
項目2-1「見積もり金額の提示が迅速で正確である」については、「ひとり情シス企業」の方が「非ひとり情シス企業」よりも満足度が高い。つまり、「急いで見積もりを出してほしい」というニーズに対しては販社/SIerもひとり情シスの求めに比較的迅速に対応できているといえる。
だが、ひとり情シスが重視すべきなのは速さではなく、むしろ網羅性だ。項目2-2「サーバなどのハードウェアも含めたトータルでの見積もりを算出してくれる」と項目3-3「連携する他社製品については別途、他の業者から見積もりを取る必要がある」は、「ハードウェアや連携製品を全て合わせた一括の見積もりを提示してもらえるか」を調べた項目だ。項目2-2は満足している事柄、項目2-3は逆に不満に感じている事柄に当たる。
すると、「ひとり情シス企業」では「非ひとり情シス企業」と比べて満足度が低く、不満度が高いことが分かる。必要な商材は一括して発注できた方が当然ながら負担は低い。さらに、見積もり時点で一括になっているということは、保守/サポートの段階でも窓口を一本化しやすくなるということだ。「相見積もりは手間も掛かるので、取りあえず見つかった業者に頼んでしまおう」と思ってしまいがちだ。従って、後のことも考えて少しでも網羅性の高い見積もりを提示できる業者を選んでおくことが肝要といえる。
「保守/サポート段階」ではいろいろとお願いしてみよう
「提案段階」「見積もり段階」と同じように、今度は「保守/サポート段階」についても見ていくことにしよう。
項目3-1「保守/サポート段階でも営業やSEが自社を訪問し、課題や要件のヒアリングを行ってくれる」は、「モノを売る時だけでなく、普段から自社を訪問して気に掛けてくれているか」に関する項目といえる。IT投資規模が小さい「ひとり情シス企業」は販社/SIerから見ると手間をかけずにモノを売るといった接し方になってしまいやすい。そのため、同項目に関する満足度は「ひとり情シス企業」の方が低くなっていることが分かる。
また、ひとり情シスの方に話を聞いてみると、「いろいろ相談したいことはあるが、何も買わないのに来てもらうのは悪い気がしてお願いできない」という声を聞くことも少なくない。確かにことあるごとに販社/SIerの営業担当を呼び付けるのは避けるべきだ。しかし、自分でも気が付かないうちにネットワークの帯域が落ちていたり、サーバのディスク容量が満杯に近くなっていたりといった問題が進行しているかもしれない。できれば、定期的にプロの目で簡単なチェックを行ってもらうのが理想的だ。
そうしたことを無償でお願いするのは当然気が引けるが、他社を回ったついでに立ち寄ってもらうくらいであれば許容範囲かもしれない。遠慮しすぎず、「近くに来たときにはウチにもちょっと寄って、システム周りを軽く見てもらっていいかな」といったお願いをしてみるのも良いだろう。販社/SIerの営業担当としても、何か問題が見つかれば新たな提案機会を得ることにつながるため、前向きに対応してくれるはずである。逆に、そこで「見積もり依頼がないと一切お伺いすることはできません」と冷たく断られるようであれば、その販社/SIerとの付き合いを考え直した方がよいかもしれない。
項目3-2「自社製品でないハードウェアや連携ソフトウェアについてはケアをしてくれない」は、「他の販社/SIerが販売したIT商材の面倒も見てもらえるか?」という観点である。ひとり情シスとしては当然その方がありがたい。だが、自社が販売していない商材について責任を持つことは、どんなに優秀な販社/SIerでも難しいのが現実だ。
グラフが示すように、この点で不満を感じる割合は「ひとり情シス企業」の方が高い。だが、根本的には「社内の全てのIT資産について保守/サポートの依頼先を明確にしておく」ことが解決策であるべきだ。そのためにも、既に述べた提案段階での幅広い商材提供力や見積もり段階での網羅性が重要になってくる。
現段階で、保守/サポートの契約先が不明のIT資産が多数存在してしまっている場合には、「次の更新時には何かしらのIT機器を御社から購入するので、社内のIT資産棚卸しに力を貸してもらえないか」と相談してみることも有効だ。もちろん無償で手伝ってもらえる可能性は低いが、何らかの解決策を提示してくれる可能性は期待できる。
一番大切なのは、販社/SIerとの対話を増やすこと
ユーザー企業の販社/SIerに対する評価という観点から、ひとり情シスが販社/SIerと付き合うためのポイントについて述べてきたが、一番大切なことは「販社/SIerとの対話を増やすこと」である。
ひとり情シスの方々からは、「ITの知識がないのにいろいろと尋ねると迷惑になってしまうのではないか」「何か質問をすると代わりに製品購入を強く勧められるのではないか」といった不安の声を聞くことが少なくない。だが販社/SIerから見ると、質問を受けることがニーズや課題を知るきっかけとなる。遠慮しすぎて何も情報を発信しないと、自社に合わない商材を提案されてしまう。自分から声を上げることが、相手の理解を得るための第一歩といえるだろう。本稿が「ひとり情シス企業」と販社/SIerの良い関係構築の一助となれば幸いである。
◇
次回は「課題2:スマートデバイスの効果的な活用法が分からないことに加え、拠点に散在しているPCのトラブル対応で手いっぱいである」について考えていくことにする。
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