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やっぱり「勘と経験」が頼り? データアナリティクスを定着させるには活用はまだ世界的に初期段階

アナリティクスの活用はまだ基本的な課題と直面しているフェーズにあり、「世界的に“アナリティクス時代の幕開け”といえる状況にある」とデロイト トウシュ トーマツは指摘する。

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 ビッグデータの利用が叫ばれる昨今、「アナリティクスの活用は世界的に見て初期段階にあり、部分的な活用にとどまっている」とする調査結果をデロイト トウシュ トーマツが発表した。「回答者の多くは、データ収集、社内の理解浸透、推進体制の構築、人材の確保、システムの高度化といった基本的な課題と直面しているフェーズにあり、世界的に“アナリティクス時代の幕開け”といえる状況にあることが読み取れる」と分析している。

 同社では、2012年4月25日〜9月19日にかけて「グローバル アナリティクス サーベイ 2013」を実施。データ活用領域、データ品質、人材、ITインフラ、推進体制、導入の課題/効果などを含む幅広い領域をカバーし、そこからアナリティクスの活用状況と今後の見通しが示されている。有限責任監査法人トーマツ デロイトアナリティクス日本統括責任者の矢部 誠氏に調査結果について詳しく聞いた。

 同調査は、100件超のオンライン調査と、北米、英国、アジア(日本を除く)の企業35社の経営幹部への直接のインタビューから得られた結果をまとめた。アナリティクスの重要性と今後の活用への期待が高まる一方で、推進体制や管理手法を含めた根本的な課題が存在することが明らかになったという。矢部氏によると、そのうえで調査リポートでは、「アナリティクス活用が意思決定資源として浸透しつつありながらも、いまだ初期段階にあり、今後進歩と成熟を遂げていくであろうことを示している」としている。

 この調査結果を見ていくとともに、アナリティクスの活用状況や課題点などを明らかにしていきたい。

多くの業界でアナリティクス導入に向けた動きが活発化

 まず、回答企業の96%が、アナリティクスは今後3年間で「ますます重要性を増す」「ある程度重要性を増すと回答し、「重要性は低下する」とする回答は0%だった。アナリティクスへの期待の高さは一目瞭然である。また、アナリティクスが最も効果を発揮する局面としては、「意思決定」との回答が49%で半数近くを占める結果となった。


デロイト「グローバル アナリティクス サーベイ」より

 一方で、アナリティクスを未活用と回答した企業は2割未満にとどまり、多くの企業が業務運営、財務管理、顧客管理、サプライチェーン、人事管理、ビジネス機会の創出、競争力の向上を目的としてアナリティクス活用を始めているという。実際に、競争上の地位向上に役立ったとする回答も過半数を占めた。こうした結果を受け、「多くの業界の企業がアナリティクス導入に向けた動きを活発化させていることが分かった」と調査リポートでは分析する。

根強い「勘と経験」頼りの経営思想

 ただ、こうしたアナリティクスの推進企業であっても、最初から全社的なサポートを得られていたわけではない。特に、経営幹部には懐疑的な見方も少なくなかったようだ。日本では、「勘と経験」を頼りに意思決定する経営が多いとの話を頻繁に耳にする。矢部氏によると、世界的に見ても同じ傾向にあるのだという。また、欧米では投資効果が計りにくいといった理由も、アナリティクス導入の障害になっているとのことだ。

 では、企業はどこから手を付ければいいのだろうか。成功企業の共通点として、矢部氏は「スモールスタートを切ることが現実的なアプローチだ。まず、1つ、2つの小さな成功を収め、効果を確かめながら着実に活用を推進していき、経営陣にアナリティクスの重要性を訴求していくことである」と話す。実際、アナリティクスが重要視される企業では、経営幹部が関与していることが多いことが分かっており、経営層をいかに巻き込むかが必要となる。

主な課題はデータ収集/品質、情報システム基盤、人材不足

 アナリティクス活用に当たっての主な課題としては、「データの収集・分析のための一元化されたアプローチがない」(32%)、「データ収集のための技術インフラがない」(23%)と、データ収集のためのアプローチ技術や情報システム基盤の不足を挙げる企業が多かった。


デロイト「グローバル アナリティクス サーベイ」より

 データ品質の課題にも直面している。調査結果によると、自社のデータの品質が「良い」または「非常に良い」とした回答者は34%であり、「適切」と答えたのが31%、「未統合」「悪い」と回答したのが35%に上った。データ品質を高めるには、一貫性のないプロセスとシステム、地域・事業ユニット間の情報定義の違い、データサイエンティストなどの人材不足といった問題を解消する必要があるという。

 データマネジメントに関しては、矢部氏も「まずは部門ごとで個別に管理していたデータを統合し、それから部門間を超えてデータを統合するなど徐々に適用範囲を拡大していくことが重要」と説明する。


デロイト「グローバル アナリティクス サーベイ」より

 企業内の人的リソースとスキルレベルの不足も、回答者の半数近くが指摘する大きな課題の1つだ。調査結果によると、十分な人的リソースとスキルを社内で保有すると答えた企業は22%にとどまった。スキルを保有人材の採用や輩出促進のための活動が求められる。コンサルティング企業など外部の協力を模索するのも1つの手段だろう。

 また、非構造化データを活用していると回答した企業は16%にとどまる。一方で、技術基盤がスプレッドシートやリポーティングツールなど基本的なものにとどまっていると回答した企業が過半数を占める。この結果から、いわゆる「ソーシャルデータ」などを用いた先進的なデータ活用にはまだ至っていない、と分析している。


デロイト「グローバル アナリティクス サーベイ」より

スモールスタートが現実的なアプローチ

 本稿の冒頭で取り上げたように、「アナリティクスの活用は世界的に見て初期段階」にあるという。導入を推進するためのステップとして、矢部氏は「アナリティクスを導入する目的を明確にすることが大事だ。何を目的に分析が必要なのか、課題は何なのか、ツールを導入することが目的となってはいけない。課題を設定し、データに基づいた改善のための仮説を立てることが重要だ。その結果、最初はMicrosoft ExcelやMicrosoft Accessといったツールを使ったデータ分析で十分であるかもしれない」と話す。

 「繰り返しになるが、スモールスタートを切ることが現実的なアプローチである。限られたリソース、予算の範囲内で、小さな成功を重ね、経営層にアピールしていくことが重要である」(矢部氏)

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