徹底解説! VMware Horizon Suiteの世界【第1回】
EUCを再定義する「VMware Horizon Suite」のコンセプトと主要機能
ヴイエムウェアが提供するEnd User Computing(EUC)の包括的なプラットフォーム「VMware Horizon Suite」は、どのようなコンセプトで何を実現するのか。主要な機能の概要を解説する。
ポストPC時代の到来
2013年2月、ヴイエムウェアは、より柔軟なワークスタイルを実現する包括的なプラットフォームである「VMware Horizon Suite」(以下、Horizon Suite)をリリースした。多様化する「End User Computing(EUC)」をHorizon Suite製品にまとめることで、ますます加速するポストPC時代を促進させることをコンセプトとしている。そもそもEUCという言葉に明確な定義はないが、ヴイエムウェアは、今までサーバの仮想化によって培われてきた仮想化技術を、日々進化していくPCやスマートデバイスなどのエンドポイントに応用していくことをEUCと呼んでいる。
それでは、Horizon SuiteのコンセプトにあるポストPC時代とは、一体どのような時代を意味するのだろうか。最近では、IT環境は利用者により近いところが急激に進化している。筆者自身、Windows PCの他に、iPhone、Androidデバイス、iPad、そしてWindowsタブレットと多くのデバイスを所有している。このマルチOS、マルチデバイスを日常生活や業務の中で使いこなし、使い分ける時代をポストPC時代と呼んでいる。その中で、多くのエンドユーザーは、それら複数のデバイスを利用して会社のIT環境に接続し、利便性を上げていきたいと思っている。
もう少し背景を追いながらかみ砕くと、ヴイエムウェアといえば、仮想化ソフトウェアのトップベンダーであり、「VMware vSphere」などのサーバ仮想化製品が有名だ。多くの企業がサーバ仮想化による恩恵を受けたことは、今や周知の事実となっている。ヴイエムウェアがHorizon Suiteで実現しようとするEUCのコンセプトは、サーバ仮想化で培った技術をエンドポイントに応用することで、ポストPC時代に求められるIT環境実現の課題となる手間やリスクを低減することだ。
Windows XPが発売された2001年ごろは、会社のメールを会社のPC以外で閲覧することは考えられなかったが、今や自分のデバイス(スマートフォンや携帯電話)でどこからでもメールを確認するのは当たり前になった。また、クラウドアプリケーションの増加と、エンドユーザーによる多様なデバイスの利用は、企業にBYOD(Bring Your Own Device)導入を推し進める要因にもなっている。システム管理者は、そのようなIT環境をセキュリティやコンプライアンスなどさまざまな観点から管理していく必要がある。
ユーザーを取り巻くIT環境には、スマートフォンやスマートタブレットといった多くのデバイスが登場している。システム管理者は、ユーザーが個人のデバイスを社内環境に接続し、システムを利用することを禁止するのではなく、むしろ安全に接続できる環境を整える必要が出てきた。この多様化・複雑化したエンドポイント環境で、ユーザーの利便性を向上させ、かつシステム管理者にはより高度な管理機能を提供することを目的に作られたのがHorizon Suiteだ。
2.Horizon Suiteとは
それでは、ヴイエムウェアがEUCソフトウェア群の統合プラットフォームと位置付けるHorizon Suiteについて説明していきたい。
Horizon Suiteは、デスクトップの仮想化基盤(VDI)で知られる「VMware Horizon View」(View)、クライアントPCのOSを階層化しイメージ管理とバックアップを行う「VMware Horizon Mirage」(Mirage)、エンドユーザー向けのポータルを提供し、ユーザーデータやアプリケーションの連携を提供する「VMware Horizon Workspace」(Workspace)の3製品で構成される。各製品は単体での購入や利用も可能だが、3製品を統合的に利用することでシームレスなIT環境の利用が可能となる。それぞれの概要を簡単に説明していく。
VMware Horizon View
Viewは、デスクトップを仮想化し、場所を問わず多様なデバイスからのアクセスと、デスクトップの集中管理を実現する。全てのデータはサーバ側に集約されるため、高度なセキュリティを維持することができる。iOSやAndroidを搭載した端末に対しては専用のクライアントアプリケーションを提供。Windowsアプリケーションをより利用しやすいようにユニティ機能(※)を提供することで、タッチインタフェースで利用するデバイスに対してユーザーインタフェースの最適化をしている。また、HTML5対応ブラウザがあれば、HTML5に変換された仮想デスクトップを利用できることも特徴だ。これによって、専用のクライアントアプリケーションをインストールすることなく、仮想デスクトップへの接続が可能となり、外出先など自身の端末がない環境下においてもWebブラウザからセキュアに自身のデスクトップを利用することができる。
※ タッチパネル上での操作を行いやすくするため、メニュー表記やアイコンなどの操作性を工夫・拡張したユーザーインタフェース。
VMware Horizon Mirage
Mirageは、クライアントPCのデータのバックアップを自動的に取得し、サーバ上で集約して管理する。災害や障害時にクライアントPCのリカバリを迅速に行うことができる。特徴は、OSを階層化し、システム管理者が管理する共通レイヤーと、ユーザーが作成するデータなどが格納されるユーザーレイヤーに論理的に分かれている点だ。これによってシステム管理者は、ユーザーがクライアントPCを利用中であっても任意のレイヤーを更新することができる。例えば管理者がOSを差し替えたりパッチを適用しても、ユーザーは業務を中断することなくクライアントPCの環境を利用し続けることが可能となる。そのため、ユーザーが再起動するだけで利用中のデータを維持したままWindows XPからWindows 7へとOS移行をすることもできる。また、単なるOS移行ツールとは異なり、移行後も継続的にクライアントPCを管理、保護することができる。
VMware Horizon Workspace
Workspaceでは、ユーザーがさまざまなデバイスから安全にアプリケーションやファイルなどの社内リソースへアクセスできる「ワークスペース」と呼ばれるポータルを提供する。システム管理者はあらかじめ個人やグループにアプリケーションを割り当てることができ、ユーザーは、どの端末からもシングルサインオンでワークスペースにログインできる。これによって、アカウント管理が煩雑になりがちなクラウドアプリケーションの利用も容易になる。ユーザーインタフェースはエクスプローラーに組み込まれ、エクスプローラーはユーザーデータのプレビュー機能を兼ね備える。システム管理者は個別の端末に対して設定や管理をする必要がなく、1つの管理コンソールから、ユーザーやグループ単位でデータやアプリケーションの登録、ポリシー設定を行うことができる。
3.Horizon Suiteの隠れた魅力
上述のように、3製品で構成されるHorizon Suiteには、アプリケーション仮想化ソフトウェア「VMware ThinApp」(ThinApp)が同梱されている。
昨今、多くのシステム管理者は、Windows XPのサポート終了問題に頭を悩ませており、EUCを進めていく中でも、アプリケーションは切り離すことができない落とし穴となっている。アプリケーションはOSと複雑に絡み合い動作しているが故に、別のOSに移行すると正常に動作しないことがあり、新しいOSに移行するためだけに多額のコストを必要とするケースがある。この問題を解決するのがThinAppだ。
ThinAppは、アプリケーションの動作に必要なファイル、レジストリ、iniファイルなどをアプリケーションごとに1つの実行形式のファイルにパッケージ化し、OSから切り離すことでOSに依存しないアプリケーションの動作を実現する。これによって、Windows XPで長年利用してきたアプリケーションを、インストールすることなくコピーするだけで、Windows 7やWindows 8でもそのまま利用できるようになる。
ViewやMirageでは、ThinAppを利用してアプリケーションを仮想化しOSから切り離すことで、イメージを共通化して管理対象を減らすことができ、システム管理者の運用負荷を軽減する。ユーザーは個別にアプリケーションをインストールする必要がなくなり、管理者はイメージの一元管理が可能になるため、リソースを有効活用できるようになる。また、Workspaceでは、ThinAppで仮想化されたアプリケーションがワークスペースから提供され、マルチデバイス環境で利用できるメリットを増強する。
このようにHorizon Suiteは、EUCをリードするソリューションとして、日々増えていくデバイスやクラウドアプリケーションに対応すべく、機能連携と強化を続けている。今後どのようにHorizon Suiteが進化していくのか、EUCに携わる一エンジニアとして、引き続き注目していきたい。
次回は、多くのシステム管理者の悩みの種、2014年4月9日をもってサポートが終了するWindows XPマイグレーション問題にフォーカスして、総合的な解決策となるMirageを詳しく紹介していきたい。
川本政文(かわもと まさふみ)
双日システムズ
岐阜県出身。東京農工大学工学部生命工学科卒業後、ITの世界へ。
多くのアプリケーション開発に従事した後、サーバ仮想化からストレージ仮想化を経て、「VMware ThinApp」との出会いによりEUC分野で仮想化の匠を目指す。現在は全国各地を飛び回り、VMware Horizon SuiteやThinApp、EUCについて熱い講演を繰り広げる。
BYODを駆使してワークライフバランスを追求する、一児のパパ。
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