「Windows 9」「タッチ版Office」、注目プロジェクトの動向は:変化を迎えるMicrosoftの今後を読む(前編)
Windows 9、タッチ版Microsoft Officeなどの注目プロジェクトが進んでいるとされる米Microsoft。新CEOを迎えてどう変化するのか。今後を予測する。
米Microsoftのクラウド戦略と組織の転換は進んでいる。だが、この大手ソフトウェア企業による変化を全ての企業のIT部門が支持するかどうかは未知数である。
「Windows 8」で導入された全く新しいインタフェースは多くの顧客をないがしろにしたものだった。その結果、Microsoftは今もこの問題の対応に追われている。従来型の企業の多くは、「Windows 8.1」と距離を置いている。その理由は、「Windows 7」で満足している、現時点ではビジネスアプリのサポートが不十分など、さまざまだ。
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進む「Windows 9」の開発
米フォスターシティーにあるTECHnalysis Research LLCの創始者兼チーフアナリストのボブ・オードネル氏は次のように述べている。「MicrosoftはWindows 8の移行によって大きな打撃を受けている。現在、同社が掲げている将来のビジョンは疑問視せざるを得ない」
また、「企業がWindows 8 を採用する上で大きな課題となるのは、ネイティブなタッチ操作に対応したOfficeスイートがないことだ」と業界アナリストは指摘する。
「これからMicrosoftが対応することが予想されるのはマルチタッチ開発者プラットフォーム向けOfficeだ」と米ワシントン州カークランドにあるDirections on Microsoftでリサーチ部門の責任者を務めるロブ・ヘルム氏は予測する。
「Microsoftはタッチ操作対応のOfficeを提供できることを示し、タッチ操作対応のOfficeをWindows 8でできることの例として使用する必要がある」
使い始めたときに感じる癖のある仕様を克服し、Windows 8を展開しているエンドユーザーもいる。
「Microsoftはかつての米The Coca-Cola Companyと同じ境遇に陥っている」と米テキサス州リーグシティにあるClear Creek Independent School Districtの最高技術責任者ケビン・シュワルツ氏は指摘する。「The Coca-Cola Companyは99年続いた調合法を変えることを試みた。しかし、最終的には元に戻すことになった。新しい調合は人々が望んでいたものではなかったためだ」
伝えられるところによると、Microsoftは「Windows 9」(仮称)の開発に取り組んでいる(参考記事:「Windows 9」で今度こそ“真のスタートボタン”が復活?)。春には、Window Phone OSが更新され、エンタープライズレベルの機能を備えたものになる見込みだ。つまり、Windows 8をすぐ展開する必要はないだろう。
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クラウドへの取り組みを強化する
一方、クラウドベースのサービスはMicrosoftに収益をもたらしていることが実証されている。「Microsoft Office 365」では、年間収益が10億ドルに達する見込みだ。また、企業によるサブスクリプションモデルの導入も進んでいる。Microsoftは、さらに多くのクラウドサービスを提供し、「Windows Azure」を企業に売り込むことを目標としている。
2013年の第4四半期の収益では、消費者向けOffice 365 Home PremiumバージョンがMicrosoft Officeの15%以上を占めていた。だが、Office 365の企業向けバージョンの収益についてのデータは公開されていない。
Office 365が成功した理由の1つは、エンドユーザーがコンテンツを作成する方法と消費する方法が変化したことにある。クラウド、タブレットおよびスマートフォンの登場により、ユーザーはWindows以外のデバイスでWebベースのアプリを使用して、いつでもデータにアクセスできるようになった。
このような現状により、MicrosoftはWindowsに重点を置くべきではないとの声が多くの業界専門家から上がっている。だが、実際問題として、そのような対応がなされる可能性は極めて低いだろう。
「全てのものがOSに依存しないようにする必要がある」と米サンフランシスコにあるVista Equity PartnersでITプログラムディレクターを務めるイムラン・シェイク氏は話す。
シェイク氏は、Office 365アプリがクラウドやWindows Azureに向かったMicrosoftの方向性には満足しているとし、次のように続けた。「Office 365が成功を収めるまで、しばらく時間がかかった」
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Microsoftは最近Open Compute Projectをサポートする予定があることを発表した。このプロジェクトで、同社はサーバハードウェアのリファレンスデザインを提供するものとされている。Microsoftは2013年12月にCloud OS Networkを立ち上げた。これはMicrosoftのクラウドプラットフォームを使用してサービスを提供している25社のプロバイダーで構成されたコンソーシアムである。
「Microsoftは既にWindows Azureパッケージを使用してWindows ServerにWindows Azureを取り入れ始めている」とヘルム氏は語る。「Microsoftは、オンプレミスの環境で提供するソフトウェアと顧客のデータセンターで実行されるソフトウェアを継続して使用できるように対応する必要がある」
「Windows AzureがオンプレミスのWindows、Officeおよび『Microsoft SQL Server』のワークロードと密接に統合されているだけではない。このようなサービスをハイブリッドクラウドモデルで提供するための明確なロードマップもある」と米ニューヨークに拠点を置く451 Researchでサーバ、仮想化およびクラウドコンピューティングのリサーチディレクターを務めるピーター・フォルクス氏はいう。
目下の課題は、Microsoftが既に収益体制を確立している市場を超えて新しい市場に参入することだ。この課題への対応には新しいCEOのサトヤ・ナデラ氏の経験が役立つとフォルクス氏は推測している。
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