BBC Worldwideの最高デジタル責任者が描くコンテンツビジネスの可能性:「BBC Storeは偉大な事業になるだろう」
BBC商業部門のダニエル・ヒーフ最高デジタル責任者(CDO)が、デジタルイノベーションを駆使してコンテンツを全世界の視聴者に届ける方法を語る。
英BBC Worldwideの最高デジタル責任者(CDO)ダニエル・ヒーフ氏は世界で最もイノベーションを起こしているメディア企業の1社に勤務しているが、「イノベーションのためのイノベーション」は信用していない。毎日「もっとイノベーションを起こせる方法」を考えるのではなく、デジタルを駆使して自社の顧客体験を向上する方法を考えるようにしていると同氏は言う。
「イノベーションが視聴者の役に立つのであれば素晴らしいが、イノベーションのためのイノベーションは時間の無駄だ」
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BBC Worldwideは200カ国以上で取引を行うBBC(British Broadcasting Corporation:英国放送協会)の商業部門である。ヒーフ氏は、BBC.comの運営やGoodFood.comなどのサイト運営、米国やオーストラリアでのB2Bセールスを含め、BBC Worldwideの巨大なポートフォリオのユーザーテクノロジーを管理している。
新興企業との取引の背景
同氏は個人生活でもテクノロジーを楽しんでおり、自分の子どもたちにRaspberry Piのアプリケーションを使うよう勧めている。「私はデジタルを使わざるを得なくなった管理者ではなく、根っからのデジタル愛好家だ」と同氏は語る。
ヒーフ氏は2010年7月にBBCで現職に就く以前は、英Channel 4傘下の4iPファンドに投資家として勤務し、テクノロジー企業に投資していた。そこでAudioBooやMyBuilder.comなど英国の設立間もない新興企業に投資してきた経験は、同氏がデジタルビジネスの経済学を理解するのに役立っている。
前職での新興企業への投資経験から、小規模企業との提携が取り沙汰されることが多いが、同氏はBBCで新興企業から大企業まで広範囲に及ぶテクノロジープロバイダーと仕事をしている。
「新興企業と合併するつもりはない。私たちは支援する立場にあるからだ。そして彼らを支援するのは彼らが支援に値する企業だからだ」とヒーフ氏は語る。
BBC Worldwide Labsの新興企業支援
BBC Worldwide Labs最初の新興企業支援プログラムは2つの商談を成立させた。1つは食材リストを扱う新興企業の英FoodityとレシピサイトのGoodFood.comとの商談、もう1つはモバイルテクノロジーの新興企業の英KO‐SUとBBC Motion Gallery Educationとの商談だ。
ヒーフ氏はFoodityの例を引き合いに出し、「新興企業は他の誰もやらないことに手を出すのが特徴だ」と話す。
FoodityのIngredoテクノロジーとTesco.comとの統合により、GoodFood.comのユーザーはオンラインレシピの食材をシームレスに購入することができる。ユーザーはGoodFood.comでの操作を続けながらTescoでショッピングでき、ボタン1つで食材がショッピングカートに入る。
GoodFood.comは、幾つかのデジタルサービスを組み合わせてシステム全体を形成する1つの例であると同氏は説明する。同氏によれば、「Drupal(オープンソースのコンテンツ管理システム)やFoodity、分析も機能の一部として含み、サービス一式をつなぎ合わせたシステムだ」
Labsプログラムでは3つ目の商談も持ち上がっている。今回の商談は、動画のタグ付けの新興企業の英wireWAXとBBC News Onlineが共同で対話型の動画ストーリーを構築するものだ。
BBC Storeの可能性
BBC Worldwideは、2012〜2013年期の利益を1億5600万ポンドと公表している。同社はこの利益を自社に還元し、独自事業に投資する。BBC Worldwideは2007年以降10億ポンド以上をBBCに還元しているとヒーフ氏は語る。
現在、BBC Worldwideのテレビカタログには5万時間分の番組が収録されている。2013年、BBCはBBC Storeという放送済み番組のオンラインカタログを作成し、BBCのコンテンツを無料でダウンロードできるようにすると発表した。
BBC WorldwideはBBCのコンテンツを商品化しているが、商品化しているのはわずか10%にすぎない。残りは視聴者の目に触れることなく眠っているとヒーフ氏は話す。
「BBC Storeは大量の在庫を活用する偉大な事業になるだろう」
BBCのためにコンテンツを製作したテレビ製作会社は、新たな収益を受け取れるようになる。「独立系の番組制作会社のプラットフォームとしての役割を果たせる方法を模索している。人気のあるドラマ『Sherlock』(邦題『SHERLOCK(シャーロック)』)を製作した会社だけでなく、日常の番組コンテンツを作る会社が収益を受け取れるプラットフォームだ。また、このような事業を長続きさせる方法も模索している」
コンテンツビジネスにかける思い
しかし、ヒーフ氏はオンデマンドコンテンツの実現に不安がある。
続きはComputer Weekly日本語版 3月5日号にて
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