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「Windows Phone 8.1」を徹底分析、MS版「Siri」の“コミュニケーション能力”は?iOS、Androidに次ぐ3位を脱せるか

「iOS」「Android」に次ぐ第3位のモバイルOS「Windows Phone」の最新版「Windows Phone 8.1」が発表された。注目の音声アシスタント「Cortana」をはじめ、主要機能を紹介する。

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 米Microsoftは、2014年4月2日(米国時間)に同社のモバイルOS「Windows Phone」の最新版「Windows Phone 8.1」を発表した。Windows Phone 8.1には、競合企業である米Googleの「Android」と米Appleの「iOS」に対抗するための多数の機能強化が施されている。

 このアップデートでは、3番手のモバイルOSといわれるWindows Phoneに多数の調整が加えられている。中でも注目すべきは、「Siri」や「Google Now」などの音声デジタルアシスタントに対抗する機能として長くうわさされてきた「Cortana」である。Microsoftによると、数カ月のうちにWindows Phone 8.1を新しいデバイスで提供し、既存のWindows Phone 8デバイスについてはアップデートとしてWindows Phone 8.1を提供する準備が整っているという。

他のモバイルOSに追い付く

 Windows Phone 8.1に施されたさまざまな機能強化は、モバイルOSの競合他社に追い付くためにMicrosoftが打ち出した対策である。米テキサス州のサンアントニオで市場調査とコンサルティングサービスを提供しているCompass Intelligenceで主任モビリティストラテジストを務めるゲリー・パーディ氏は、「世間の認識が少しでも変われば、Windows Phoneは全体として今よりも受け入れられるようになるだろう」と話す。

 パーディ氏は次のように指摘する。「Microsoftは“自社で発明したものではない(から使わない)”という姿勢を貫いてきた。“自分たちのやり方が気に入らなければ、使わなくて構わない”というような考えを持っていた。そのため、他のモバイルOSで利用できるサービスを提供してこなかった。しかし、他のモバイルOSの機能に追い付かなければ、ユーザーの検討候補にも入らないことに気付いたのだろう」

Windows Phone 8.1の新機能

 Microsoft主催の年次カンファレンス「Microsoft Build Developer Conference」が4月初頭に開催され、Windows Phoneの責任者ジョー・ベルフィオーレ氏がWindows Phone 8.1のアップデートを発表した。カンファレンスの数週間前からWindows Phone 8.1に関するさまざまな詳細情報がリークされていた。そのため、変更内容に対する驚きはそれほど大きなものではなかった。Windows Phoneは、さらに安定した近代的なソフトウェアへと進化するようだ。

 例えば、Windows Phone 8.1では「アクションセンター」と呼ばれるドラッグダウン式の通知ハブが追加される。アクションセンターは、Androidデバイスで採用されているメニューのような機能を持つ。ネットワークの設定をWi-Fi、Bluetooth、機内モードなどに素早く切り替えることができ、アプリに関する実用的な通知がアクションセンターに直接表示される。

 また「Wi-Fi Sense」という新機能も追加されている。ベルフィオーレ氏によれば、この機能を使用すると、近くの無料Wi-Fiスポットに自動的に接続できるという。また、自分のWi-Fiスポットを友達とすぐに共有することも可能だ。その際、パスワードを手動で提供する必要はない。

 その他にも小さな調整や機能が多数追加されている。このような変更が相まってWindows Phoneの機能性が全体的に向上したように感じられる。例えば、ネイティブのソフトウェアキーボードではスワイプ形式の入力が可能になる。ネイティブのカレンダーアプリではビューの種類が増える。また、ロック画面では、新しい多数のテーマやレイアウトを用意したことで、より柔軟にカスタマイズできるようになる。またホーム画面では、一度に表示できるタイルの数が増える。カスタマイズした静止画の壁紙を設定してパララックス(視差)スクロール効果を作り出せるようにもなっている。

 ビジネスユーザーは、より充実したVPNとS/MIMEが利用できる。一方、「Windows Phoneストア」では、注目のアプリやユーザーに合わせたお勧めのアプリが表示されるようになる。モバイル対応の「Internet Explorer」のバージョンは11に引き上げられ、通話画面には、音声通話からビデオ通話へ切り替えるオプションが追加されている。ビデオ通話には「Skype」などのビデオ会議アプリを使用する。

仮想空間の新しいパートナー「Cortana」

 さまざまな機能が追加されているが、Windows Phone 8.1の目玉はCortanaである。先に登場したSiriやGoogle Now、韓国Samsung Electronicsの「S Voice」と同様に、Cortanaは個人向けのデジタルアシスタントだ。Cortanaでは、電話を取る、予定を管理する、テキストを作成する、Webを検索する、「Wikipedia」に掲載された詳細情報を提供するなどの機能を持つ。また、音声コマンドとテキストコマンドのどちらでも操作できる。

 Microsoftのデジタルアシスタントは、Microsoftのゲーム「Halo」で信頼の置ける仲間として登場する人工知能ロボットにちなんでCortanaと名付けられた。検索エンジン「Bing」を原動力としているが、これまでWindows Phoneに搭載されていたBing検索インタフェースに完全に置き換わるものとなっている。ホーム画面にCortanaのライブタイルが作成され、青い輪が表示される。この輪はCortanaを操作すると振動したり回転したりする仕様だ。

 実際に使ってみると、Cortanaは、Google NowとSiriの両方の特徴を兼ね備えている。Google Nowの予測に基づいた動作とわずかながらもSiriの個性が取り入れられている。Cortanaでは、Google Nowと同様にメールやWeb閲覧履歴を読み上げたり、電話をかけた人物や頻繁に訪れる場所を記憶したりすることが可能だ。

 また、Cortanaでは記憶した情報を使って状況に応じたメッセージを表示する。例えば、フライト情報を含むメールが届くと、Cortanaは今後そのフライトについて通知するかどうかをユーザーにたずねる。Cortanaが学習した全ての情報は、Cortana独自の「notebook」に保存されるようになっている。notebookでは、過去にCortanaに質問した内容を確認したり、Cortanaの精度を上げるためにデータベースをカスタマイズできる。

 Cortanaは「Facebook」「Twitter」「Hulu Plus」などのサードパーティー製アプリと連携し、これらのアプリ固有の機能を自動的に実行するよう指示できる。特定の人物と接触したり、特定の出来事が起きたときに、カスタマイズしたメモの通知を表示するように指示することも、前の質問に対して、不完全な質問を追加で投げ掛けることも可能だ。例えば、ある街の気温をたずねた後に「How about in Boston?」(ボストンは?)のような質問をすることができる。

 この全ての機能は、検索ボタンをタップして操作できる。「OK Google」のような音声コマンドはないようだ。Cortanaにも基本的な音声機能はある。Siriよりもやや機械的に聞こえるが、より自然な会話をするという点でMicrosoftが大きな進歩を遂げたことは紛れもない事実だ。Cortanaは、「Okay」(じゃあ)、「Alrighty」(よし)、「Just so you know」(言っておきますが)などのフレーズで文章を始めたり、「What's up with X?」(Xはどう?)のように口語的な言い方の質問にも回答することが可能だ。

 ベルフィオーレ氏によれば、Microsoftは現在もCortanaの音声認識テクノロジーの改良に取り組んでいる。そのため、2014年4月末にリリースが予定されているWindows Phone 8.1にはβ版のCortanaが搭載される。Cortanaは、まずは北米でのみ提供を開始し、改良が進めば他の地域でも提供される見込みだ。興味深いことに、ベルフィオーレ氏はライブデモ中に何度かしゃっくりをしている。だが、Cortanaの動作は、開発段階にあるものとしては全体として極めて滑らかに機能していたように思える。

Windows Phoneの情勢を好転させられるのか

 長い間、Windows Phoneは、iOSやAndroidに次いで第3位に着けていることを売りとしてきた。だが、機能に関しては上位2つのOSに多くの面で後れを取っていた。パーディ氏は、Windows Phone 8.1のアップデートにより、この点の改善が促されると考えている。

 以前から指摘されているWindows Phoneの最大の欠点はアプリのラインアップだ。非常に大きな市場シェアを占めるiOSとAndroidには、Windows Phoneよりも豊富で多種多様なアプリが用意されている。

 この点に関しても、Microsoftはこの状況を変えるための対策を講じている。詳細な具体策はなかったが、同社は早急に全てのWindowsデバイスに「ユニバーサルWindowsアプリ」を組み込む取り組みを開始している。この取り組みにより、スケールダウンしたWindowsデバイス用のアプリをWindows Phoneデバイスで実行するという道を切り開ける可能性がある。

 パーディ氏はこの動きについて次のような見解を示している。「この取り組みには、Windows Phoneのコンテンツ増加を促す効果があるだろう。ただし、AndroidやiOSのアプリストアからダウンロードしたアプリのように、完全なエクスペリエンスをユーザーに提供することを考えた場合、長期的な解決策にはならないだろう」

 「この動きが状況改善の一助となることは間違いない。しかし、長期的に見た場合、Windows Phoneにとって必ずしも正しい解決策かどうかは分からない。現時点で優れたモバイルアプリについて考えると、最良のユーザーエクスペリエンスが提供されるのはネイティブアプリだ。Windows Phone 8.1のネイティブアプリを、Windows Phone専用アプリとして作成する必要があることに変わりはない」(パーディ氏)

 パーディ氏は次のように続ける。「“モバイル向けの開発で3つのプラットフォームについて検討する必要がある”場合にようやくWindows Phoneについて開発者が検討するという、Microsoftが置かれている状況は変わっていない。開発者が考慮するプラットフォームは2つで、必要な場合にWindows Phoneを検討しているのが現状だ。依然としてMicrosoftはこの状況に対応しなければならない」

 結局のところ、この取り組みで提供されるアプリは、ネイティブアプリの完全な代替にはならない、と同氏はいう。

 「アセットが用意されて活用できるため、これは賢明な策だ。有益であることは間違いない。だが、問題の解決になるかといえば、そうではない」とパーディ氏は語る。

 Windows Phoneアプリのラインアップが充実していないことは引き続き障害となるだろう。だが、Microsoftはこれまでの安定した環境から抜け出し、モバイル開発競争の3番目のオプションとしてWindows Phoneの競争力を高めようとしているようだ。同社が2014年4月2日に、画面サイズが9インチ未満のデバイスを製造しているメーカーにWindowsを無料で提供すると発表したことは、この変化の表れの一例である(参考:“ゼロ円Windows”で格安タブレットが急増? Microsoft新戦略を深読みする)。

 このような市場シェアに対して積極的な行動を取ったことで、Microsoftの通例のポリシーが良い方向に変化している。また、Microsoftが競争力を高めるために状況に合わせて変化する意思があることを示すもう1つの好例となった、とパーディ氏は述べている。

 「この動きからMicrosoftが特にGoogleに追い付こうとしていることが見て取れる」と同氏はいう。「Googleは、デバイスの使用料を課しておらず、活動が発生するところにサービスの需要があることを知っている。Microsoftは、この点についてGoogleに同調しているようだ。“デバイスの使用料で稼ぎ、あわよくばサービスでも収益を出そう”といった古い信念をついに捨てる決心をしたとMicrosoftがいっているように受け取れる」

 「これは、Microsoftが競合他社と同じ行動を取ることを示唆する重要な変化で良い兆候だ。同社はモバイルの分野で良いニュースがあまりなかった」とパーディ氏はいう。

 Windows Phone 8.1は、Microsoftがより広範な分野で勢いを増すきっかけとなるのだろうか。その可能性は低いとパーディ氏は見ているが、次のようにも述べている。「この変化によって、Windows Phoneの堅ろう性は確実に高まるだろう。また、Microsoftがモバイルに関して以前よりも少しは柔軟な姿勢を見せる可能性があることを示している」。少なくとも、パーディ氏は、この変化によりMicrosoftに対する世間の認識が改善するかもしれないと考えている。

 「この1週間でMicrosoftに対する信頼性は高まっただろう」と同氏はいう。

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