「Facebookスイッチ」を見つめるエンジニアたちの視線の温度差:次世代の潮流かニッチなブームか
Facebookの新しいオープンソーススイッチとSDN OSは、ネットワーク環境にどのように影響するのか。ネットワークエンジニアの意見は大きく分かれている。
米Facebookは2014年6月、同社のSDNスイッチOS「FBOSS」(コードネーム)のフォワーディングエージェントと、ベアメタルスイッチングハードウェア「Wedge」(コードネーム)をオープンソース化する意向を明らかにした。
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評価は3つに分かれた
われわれのほとんどは、ハイパースケール(超大規模)事業者がここ数年、ひそかにベアメタルスイッチングハードウェアの導入を進め、SDN OSで運用していることを知っている。Facebookの発表の少し前にも、米Googleが自社のネットワーキングプラットフォーム「Andromeda」(コードネーム)について明らかにしており、以前にはGoogleが構築したのではないかとされる「Pluto」というスイッチのうわさが流れたこともある。
こうした発表や他のホワイトボックススイッチのリリースは、既にスイッチの市場シェアに影響を与えている。実際、米市場調査会社Dell'Oro Groupのアラン・ウェッケル氏は、2013年には固定型ToR(Top of Rack)10ギガビットイーサネット(GbE)スイッチの出荷ポート数に占めるベアメタルスイッチのシェアが10%強に達し、米Arista Networks、米Juniper Networks、米Extreme Networksの合計シェアを上回ったと報告している。
ネットワーキングコミュニティーは、こうしたハイパースケールネットワーキング技術が、これまでの市場を越えて広く利用されるようになるのか、それとも、一部の事業者だけが採用するニッチな技術にとどまるのかという大きな問題に直面している。
Facebookの発表を受けて、台頭するハイパースケールネットワーキング技術に対するコミュニティーの関心が徐々に高まっているのは確かだ。そこで、これを機に私はこのニュースについて多くのネットワークアーキテクトと話し合い、彼らがFacebookの取り組みの潜在的影響をどう考えているかを調べた。
この対話を通じて、まず前提として、われわれネットワーキングコミュニティーのメンバーのほとんどは、「ハイパースケールデータセンターの設計上の課題は、従来のデータセンターとは異なっている」という認識で一致していることが分かった。ハイパースケールデータセンターネットワークの設計は、私の好きな例えで言うと、象の調教のようなもので、全てのエネルギーを1つのソフトウェアのニーズに集中させることになる。これに対し、従来のデータセンターネットワークの設計は、動物園の経営に近い。すなわち、アーキテクトは、同じインフラを共有しつつ技術資産やニーズがさまざまに異なる多様なアプリケーションセットのバランスを取らなければならない。
多くのアーキテクトとの議論から見えてきたのは、ハイパースケールデータセンターと従来のデータセンターのこうした明確な違いに関する共通認識だけではない。FacebookによるWedgeとFBOSSの発表に対する受け止め方を見ると、ネットワークエンジニアは3つのグループに大別されることが明らかになった。
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グループ1:FacebookスイッチとSDN OSを今すぐ導入可能
このグループのエンジニアは、自社のデータセンターにFBOSSとWedgeをそのまま導入したいと考えている。こうしたエンジニアの勤務先は、自前の制御/管理システムを構築するソフトウェア開発チームを抱え、Facebookが例示している「初期ターンアップとデコミッショニング、アップグレードとダウングレード、ドレインとドレイン停止」といった管理を自社で行おうとする企業だ。つまり、実力のあるネットワーキングソフトウェア開発チームにとって、FBOSSは、すぐに使いたい新しいソフトウェアコンポーネントというわけだ。
グループ2:WedgeとFBOSSは素晴らしいが、パッケージ化された管理システムが必要
このグループのエンジニアは、Wedge/FBOSSのようなアプローチを試したいと考えてはいるものの、パッケージ化され、従来のネットワーキングチームがすぐに使えるようになっている制御/管理システムを求めている。こうしたエンジニアは、データセンターネットワーク全体を一度に設計するのではなく、特定のプロジェクト(OpenStack、VDI、ビッグデータなど)を通じて新しいネットワーク設計を取り入れてきた傾向がある。こうしたエンジニアの勤務先は多くの場合、強力なネットワークエンジニアリング資産を蓄積しており、アーリーアダプターになることがよくある。
グループ3:WedgeとFBOSSはハイパースケール事業者のためだけのものであり、一般企業向けではない
このグループのエンジニアは、FacebookのWedgeとFBOSSのようなニュースはハイパースケール事業者にしか関係がなく、大きなトレンドの始まりではないと考えている。こうしたエンジニアは、コミュニティーで広く導入が進むのを目にして初めて、そうした技術に注意を払うようになる。従来の技術を使い続ける傾向があるため、こうしたエンジニアを相手にした既存ベンダーのビジネスは、長く続きそうだ。
展望
私の考えを述べたい。FacebookでWedgeやFBOSSに取り組んでいるチームは切れ者集団であり、非常に忙しい。彼らは、既存ネットワーキングベンダーが提示したルートとは全く異なるルートに大きなネットワーキングコミュニティーを導こうとしているはずだ。そうでなければ、せっかくうまくいっているエンジニアリングプロジェクトを、混沌としたオープンソース民主主義にわざわざ委ねたりしないだろう。私としては、ハイエンドネットワーキングユーザーがリーダーシップを発揮すれば、コミュニティーのより幅広い層も徐々に続いていくという見方に傾いている。
これからの彼らに期待したい。次の展開が楽しみだ。
本稿筆者のカイル・フォースター氏は、米Big Switch Networksの共同創立者。
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