インフラ管理者のためのDocker解説【第1回】
企業での安定稼働に向かう「Docker」、2014年をまるっと振り返り
2014年6月にバージョン1.0をリリースして以来、すさまじい勢いで機能アップデートを続ける「Docker」。2015年はどのような進化を遂げるのだろうか。CoreOS「Rocket」との関係は?
Linuxコンテナを使った仮想化技術として注目を集めているDocker。ほぼ毎週のように新しいニュースが舞い込み、高速に進化していく様子がうかがえる。開発も活発で、コミュニティーでは絶え間なくやりとりが行われている。Dockerは2015年も確実に進化を遂げるはずだ。今回は、Dockerが2014年に歩んできた道をまとめた。
これまでのバージョンアップと主な追加機能
Dockerは2014年6月に、ようやくバージョン1.0(安定版)がリリースされた。とはいえそこで立ち止まることなく、バージョン1.1~1.4までを猛烈な勢いでリリースしている。現在の最新バージョンは2014年12月にリリースされたバージョン1.4系。つまり、2014年6月からの半年間で4回のバージョンアップが行われたことになる。以下、各バージョンの更新内容を簡単に紹介する。
Docker 1.0
バージョン1.0は後述する「DockerCon 2014」で発表された。品質、機能、安定性がエンタープライズにおける基準に達したことを示している。
Docker 1.1
バージョン1.1は1.0がリリースされた1カ月後の2014年7月に発表された。主な機能追加として、「Dockerfile」(※1)で指定したファイルやディレクトリを無視する「.dockerignore」ファイル、コンテナの動作を一時停止するポーズ機能、ログを常時監視する「tail」コマンドへの対応、「docker build」(※2)でtarファイルをビルドする機能などが挙げられる。
※1 Dockerfile:Dockerのコンテナ構成情報をまとめて記述したファイル。
※2 docker build:DockerファイルからDockerイメージを作成するコマンド。
Docker 1.2
バージョン1.2のリリースは、さらに1カ月後の2014年8月。コンテナとそのプロセスを生成する「docker run」コマンドで「--restart」フラグが指定できるようになり、コンテナの再起動ポリシーが追加できるようになった。また、権限を指定できる「--cap-add」や「--cat-drop」フラグなどが追加された。
Docker 1.3
バージョン1.3は若干間が空き2014年10月にリリースされた。コンテナ内でプロセスを実行する「docker exec」、コンテナを生成する「docker create」といったサブコマンドの追加や、Mac OS X用の「boot2docker」(※3)との親和性向上によって、コンテナとMac OS Xでディレクトリを簡単に共有できるようになった点が主な変更点だ。
※3 boot2docker:WindowsやMac OSなど、Linux以外のOSでDockerコンテナを動作させるためのアプリケーション。
Docker 1.4
最新版であるバージョン1.4は、2014年12月にリリースされた。このとき同時にバージョン1.3.3もリリースされており、セキュリティフィックスが行われた。「--label」フラグが追加され、コンテナをまとめて管理することが容易になった。また、コンテナ内のイベントを監視する「docker events」サブコマンドでフィルタが追加できるようになるなど、細かな修正が行われた。
バージョン1.4系では、大きな機能追加よりも安定性の向上やエンタープライズレベルで使う上で必要になる機能追加を行っている。機能ばかりが膨れ上がっていくよりも、安心して使えることが企業ユーザーにとっては大きなメリットになるだろう。
増資関係
米Dockerは2014年1月に1500万ドル、2015年9月にはさらに4000万ドルの資金調達をしている。資金はDocker本体や商用サービスの開発、さらにコミュニティーサポートに充てていくとしている。4000万ドルの調達においては十分に資金が残っている上での資金調達とあって、実際に使うのは当分先とまで言われている。
これほどベンチャーキャピタルから注目を集めている企業はそう無いだろう。かつ、これだけ潤沢な資金があれば、焦って営利目的の商売に走ったり、会社を売却することは考えにくいだろう。スピード感を持ちつつ、ユーザーやパートナーと密接に連携した発展が望めるはずだ。
DockerCon 2014
Docker熱の高まりを感じられるイベントとして2014年6月に開催されたのがDockerCon 2014(いわゆるDockerカンファレンス)である。米Google、米Facebook、米Twitterといった有名企業が、自社のコンテナ活用を発表した(いずれもDockerで運用しているというわけではないようだ)。
また、コンテナのリソース状態を把握するためのツールであったり、さまざまなDocker関連ツールが発表された。例えば米Red Hatは、Docker用に開発したLinuxディストリビューション「Project Atomic」を発表した。Dockerのエコシステムは急拡大しており、誰もがその輪に加わりたいと考えているのが分かる。
クラウドサービス
Dockerはクラウドサービスにも力を入れている。その1つが「Docker Hub」だ。Dockerではコンテナイメージをシェアすることで、1つのコマンドで同じ仮想環境が整えられるようになっている。Docker Hubは、そのコンテナイメージを共有・保存するためのサービスだ。公開イメージは無料で、企業内部などで使うプライベートなコンテナイメージを保存する場合は有料になる。
Docker Hubをエンタープライズ向けに進化させたものとして、2014年12月に発表された「Docker Hub Enterprise」がある。こちらはオンプレミスをサポートしたDocker Hubで、米Amazon Web Servicesや米IBMが認定パートナーとなって提供する。2015年初頭に発売予定である。
ベンダーとの提携
Dockerはエンタープライズ領域において猛烈なスピードで進化している。その一端となるのが大手企業との提携である。まず2014年8月に米VMwareとの協業を発表した。もともとVMwareのような仮想マシンとDockerのLinuxコンテナは仮想化技術という面において比較される存在にあった。2014年12月には「VMware Fusion」「VMware vSphere」「VMware vCloud Air」といったサービスにおいてDockerを統合することを発表した。
さらに2014年10月には、米Microsoftとの提携も発表し、次期「Windows Server」や「Microsoft Azure」でDockerサポートが行われることとなった。まだ具体的になっていないが、.NETアプリケーションがDockerで動作するようになりそうだ。また、「Docker for Windows」がネイティブ対応されることになるようで、これによってWindows環境下でのDocker利用が大いに促進するだろう。
一抹の不安
一見すると順風満帆に見えるDockerだが、2014年12月には一抹の不安が出てきた。米CoreOSがDockerに替わる新しいコンテナソフトウェア「Rocket」を発表したことだ。CoreOSはDocker用の軽量Linuxディストリビューションとして開発されてきた。Dockerの開発にも積極的に参加しており、両社は密な関係にあったといえる。
最近のDockerは多くの機能を実装した結果、元来考えていたようなシンプルさが損なわれてしまっている。そして、中央集約的なプロセス処理はセキュリティや再利用性において大きな問題がある。CoreOSはこうした理由からRocketをリリースした。
ただしRocketは執筆(2015年1月)時点でバージョン0.2.0が最新版で、まだプロトタイプの域を出ていない。またCoreOSは、RocketをリリースしたといってもDockerをサポートし続ける。Dockerの知名度を考えればそう簡単に切り離せる存在ではないだろう。とはいえ、Dockerの機能肥大化やCoreOSの提言するセキュリティリスクなどは、Docker熱に冷や水を浴びせることになりそうだ。
Dockerは2013年ごろから注目されていたが、2014年になってバージョン1.0がリリースされたことを受けて一気にブレイクした。また、1.0以降もバージョンアップを重ねるたびに機能や動作の安定性が増している。特にエンタープライズレベルで使えるように考えられているためかシェアが大きく広がっているようだ。
実際、使いやすくなっており、物足りなかった機能が次々と追加されている。機能追加に伴って複雑化しているのかもしれないが、後方互換性が維持されているのでこれまで使っていたものが突然動かなくなるといった事態にはならないだろう。
2015年においてもハードウェアの性能が向上していく中で、クラウドや仮想化への注目度は高まる。その中心にはDockerがあり、今後も進化から目が離せない。
中津川 篤司(なかつがわ あつし)
MOONGIFT 代表/プロデューサー
オープンソース・ソフトウェアを毎日紹介するブログ「MOONGIFT」、スマートフォン/タブレットのアプリ開発者およびデザイナーを対象にしたメディア「Mobile Touch」を運営。B2B向けECシステム開発、ネット専業広告代理店のシステム担当を経た後、独立。多数のWebサービスの企画・開発およびコンサルティングを行う。2013年にMOONGIFTを法人化し、現在に至る。
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