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2018年のPACS市場は465億円規模、急増するクラウド型PACSPACS市場調査リポート(2014年版)

高詳細化・大容量化する画像データの管理にはなくてはならないPACS(医用画像管理システム)。現在、PACSのクラウド対応が本格化している。市場調査による現状から今後の動向予測などを考察する。

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 シード・プランニングは2014年7月、市場調査リポート「2014年版電子カルテの市場動向調査-電子カルテ/PACS市場規模予測とシェア動向」を発刊した。このリポートは、同社が電子カルテシステム(病院向け、診療所向け、歯科向け)とPACS(医用画像管理システム)の市場動向を調査し、今後の市場規模を予測したものだ。本稿では、PACSの市場規模推移や市場シェア、主要ベンダーの動向、今後のサービス展開などを紹介する。

PACS導入のメリットとは?

 PACS(Picture Archiving and Communication Systems:医用画像保管電送システム)とは、X線写真やCT、MRIなど病気の診断と治療のために撮影された写真の電子的保存と院内配信を行うシステムを指す。撮影したデジタルデータをサーバに蓄積し、高精細ビュワーで読影して診察に利用する。医療機関はPACSを導入することで、フィルムの保管や運搬管理などの作業が不要となる。病院の経営効率にも貢献するシステムだといえる。

2018年のPACS市場全体の金額は465億円

 2013年時の病院向けPACSの市場規模(金額)は、前年比4.7%増の440億円となり、納入件数は1080件だった。一方、診療所向けPACSの市場規模は前年比17.3%増の54億円で、納入件数は780件となった。消費税の増税の影響でシステム導入が前倒しとなった結果、市場規模が拡大したと推測する。今後の市場推移について、シード・プランニングでは、システム価格の低下により金額はマイナス成長となるが、単年度納入件数は増加すると見込む。今回のリポートでは、2018年のPACS市場全体の金額を465億円、納入件数を1900件と予測する。

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PACS市場(病院・診療所)全体の規模予測(シード・プランニング推定)

 現在、HIS(病院情報システム)やRIS(放射線科情報システム)を導入するほとんどの中規模/大規模病院でPACSを導入している。PACSの運用方式は、医療機関の施設内に設置する「オンプレミス型」が中心だ。今後は、クラウドサービスの浸透でシステム価格の低下とともに小規模病院や診療所への導入が見込まれる。また、PACS導入済みの医療機関では、システムのリプレースなどで機能の向上を図るとともに、地域医療連携を見据えたネットワーク基盤の構築を検討している。さらに撮影データの外部保管が可能になったことで、クラウドサービスも浸透し始めている。

今後PACSは「医療改革に役立つシステムになる」と推測

 PACSシステムはフィルムに変わって画像を参照するだけのツールではなく、医療サービスや病院運営の主軸として位置付けられる。PACSを利用した業務フローの改善や画像情報の統合を通じて、今後の医療改革に役立つシステムになると推測できる。また、ビッグデータの取り扱いなど新しいニーズも増えてくるだろう。コストや情報の有効利用を想定すると、クラウドサービスなどシステムの外部移行が必須になると思われる。

規模別のベンダーシェア

 ここからは病院、診療所など規模別市場におけるPACSベンダーシェアを紹介する。

クラウドサービスが本格化する病院向け市場

 病院向けPACSの累計納入件数では、富士フイルムメディカルが1800施設を超えてトップ。GEヘルスケア・ジャパン、東芝メディカルシステムズが続く。上位3社で市場の44%を占める(44%)。また、400施設以上への納入実績を持つのは、PSPやコニカミノルタヘルスケア、横河医療ソリューションズ、イメージワンなどだ。これらを含めた上位7社のベンダーで市場の7割近くを占める。

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病院向けPACS市場のベンダーシェア(シード・プランニング推定:2014年4月)

 病院向けPACS市場は、大規模病院をターゲットにするベンダー、中小病院をターゲットにするベンダーなど市場でのすみ分けが進んでいた。しかし、今後は後述するクラウドサービスの利用が増え、市場様相が変動すると予測する。

 今後も上位ベンダーには大きな変動はないが、クラウドサービスが本格化することで中小病院での導入が進み、医療情報システムや業務系システムとの統合などIT系ベンダーの進出が予想される。その結果、ベンダーロックイン(囲い込み)が発生すると思われる。

オールイン型の安価なシステムが導入されている診療所向け市場

 診療所向けPACS市場では多様なサービスを展開するベンダーの参入が進んでいる。累計納入数では、富士フイルムメディカル「C@RNACORE」、スリーゼット「Caps-Web」、コニカミノルタヘルスケア「REGIUS UNitea」などの製品で市場の63.4%を占める。200施設以上の導入実績を持つベンダーは、東芝メディカルシステムズやパナソニックメディカルソリューションズ、PSP、ジェイマックシステムなどだ。その他のベンダーとしては、日本ポラデジタル、ドクターネット、ユーズテックなどが確実に施設数を伸ばしている。

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診療所向けPACS市場のベンダーシェア(シード・プランニング推定:2014年4月)

 特に診療所では、オールイン型の安価なシステムの導入が進んでいる。地域医療連携や緊急医療体制などの整備が進んでおり、クラウドサービスの普及が本格化することで診療所向けのPACSサービスメニューも充実しており、今後も市場の拡大が期待できる。

主要ベンダーのクラウドPACSサービス状況を一覧で紹介

 既に多くのPACSベンダーがクラウドサービスの提供を始めている。以下、主要ベンダーのクラウドサービス状況をまとめた(編注: 2015年3月現在。編集部で一部追記)。

主要ベンダーのクラウドサービス状況
ベンダー名 PACS製品・クラウドサービス名 クラウドサービスの内容・実績、今後の展開など
ケアストリームヘルス ケアストリームVueクラウドサービス、ケアストリームDIASクラウドサービス ・ケアストリームVueクラウドサービスは現在、データバックアップ、データ共有&ID統合管理サービス、PACSクラウドサービス、遠隔検査予約サービスのメニューを用意。今後は遠隔読影サービス、CDオンラインサービスなどを計画
・ケアストリームDIASクラウドサービスは、バックアップ特化型クラウドサービス。両サービスの国内導入実績は40施設
・今後は、オンプレミス型からクラウドサービスへの移行促進、中小規模病院へのクラウド提案を図る
スリーゼット WATARU WATARUは2015年3月に発表したクリニック向け医療情報クラウドサービス。テクマトリックスの「NOBORI」プラットフォームを採用した。
・電子的診療情報の交換推進事業の進展を背景に、医療情報などの標準化や規格化などにおけるクラウド活用に関して先行企業との連携を検討
GEヘルスケア・ジャパン 医知の蔵2.0 ・2014年4月に発表された医知の蔵2.0は、クラウド型データホスティングサービス。2011年7月に発表した医知の蔵の次期バージョンで新たな料金体系を採用し、医療施設における外部保存サービスの導入および運用コスト削減を図った。施設内での画像管理を効率化する新機能を追加
・医知の蔵2.0の導入施設数を50施設に拡充する計画
テクマトリックス NOBORI ・2012年4月に発表されたNOBORIは、専用アプライアンス「NOBORI-CUBE」でクラウドPACSを構成。2013年末の時点で約150施設が採用
・医療機関の各種情報を統計情報として還元できる情報システム構築を図る
東芝メディカルシステムズ Healthcare@Cloud ・2012年4月にHealthcare@Cloudを発表。「医用画像外部保存サービス」と「医用画像参照サービス」の2種類がある
・現在2014年3月時での運用は10施設(2014年3月時点)
・最終的に「どこでもMY病院」個人向けサービスまでを視野に入れている
富士フイルムメディカル ASSITA Portal、C@RNA Connect、SYNAPSE+STORAGE ・2011年7月にASSITA Portalを提供開始し、地域医療連携、保守サービスなどをクラウドで提供している
・ASSITA Portalは2600施設以上で運用されている
・SYNAPSE+STORAGEは、検査予約、検査画像参照、症例データベースサービスなどのデータバックアップに用いられる
横河医療ソリューションズ ShadeQuest/Unlimited ・2012年3月、NTT西日本やNTTスマートコネクトとの協業で生まれた医療機関向けクラウドサービス。2014年3月時点で4施設で運用稼働中
・場所を問わない医療環境の提供、地域における情報共有と市民サービスまでの提供を視野に入れる

今回紹介した調査結果の詳細は、シード・プランニングが発行している市場調査リポート「2014年版 電子カルテの市場動向調査―電子カルテ/PACS市場規模予測とシェア動向―」に記載されている。


筆者紹介

林 和夫(はやし かずお) 株式会社シード・プランニング エレクトロニクスITチーム 研究員

医療画像システムのPACSや治験電子化システムEDC、医療機器分野などの市場調査を担当する。


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