VDIとDaaS 、普及の真実
「5年後、PCはほとんど仮想化される」はどうなった? 仮想デスクトップの成功と誤算
VDIもDaaSも、担当者が適切な状況で導入したとき、大きな力を発揮する。それぞれをどのような場合に使えばよいのかを説明する。
筆者が仮想デスクトップと出会ったのは2000年春だ。新たな世紀の幕開けに際して、米Microsoftの「Active Directory」のリリースとともに新たなサーバのベースが誕生した。その当時、米Citrix Systemsのある社員は「5年後には企業で物理的なデスクトップPCを見つけるのが難しくなっているだろう」と語っていた。
それから9年が経過した2009年当時、物理的なデスクトップPCは至るところに存在した。米VMwareの「Virtual Desktop Infrastructure」は「VMware View」と改名した。クラウドと仮想化テクノロジーの年次カンファレンス「VMworld 2009」では、2010年が「仮想デスクトップ元年」になるという話を耳にした。
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さらに5年が経過した2015年。筆者はこの記事の原稿を仮想デスクトップPCで執筆している。今でも物理的なデスクトップPCは見掛けるが、少なくとも筆者個人は仮想デスクトップへの移行が完了した。2010年以降の5年間は目まぐるしい変化を目の当たりにした。Microsoft、Citrix、VMwareがエンドポイント市場における覇権争いを繰り広げた。クライアントPC向けOSなどは搭載せずVDI(仮想デスクトップインフラ)を使うゼロクライアントや、ノートPCやタブレットなどのモバイル端末、DaaS(Desktop as a Service)などによって、エンドポイント市場は不明瞭になっている。
DaaSは市場で足掛かりを得たばかりだ。VMwareの「Horizon Air Desktops」や米Amazon Web Services(以下、AWS)の「Amazon WorkSpaces」、他の多くの小規模なベンダーのDaaSは、ユーザー企業がVDIを所有する際に必要な費用や専門スキルなしに、VDIのセキュリティ、ポータビリティ、一元管理を実現できるようにしようとしている。
エンドポイントの分野では、クラウドベースのデスクトップが物理コンピュータを衰退させたり、オンプレミスのVDIを脅かす可能性があるという見方をする業界関係者もいる。
作業に適したツールを選ぶ
VDIとDaaSのどちらが優れているかという議論は誤解を招く恐れがある。どちらも熟練した担当者が適切な状況で導入したときに最も大きな価値をもたらす。では、自社でVDIや物理デスクトップPCを所有するよりもDaaSが適しているのは、どのような場合だろうか。
DaaSを利用すると、企業は迅速なスケールアップ/ダウンが可能な仮想デスクトップを所有できる。その際、社内インフラや製品固有のVDIスキルセットのコストを負担する必要はない。だが、クラウド環境でデスクトップを稼働させるだけでは不十分だ。企業がDaaSを利用するときには、ユーザーにとって有意義なデータにアクセスできなければ意味がない。サーバを社内に配置していて、デスクトップをクラウド環境に配置している場合、ユーザーはどうやってアプリケーションやデータにアクセスするのだろうか。
一部のベンダーは、VPN接続サービスを提供することで、この問題に対処している。中には、メインのインフラとベンダーのクラウドインフラを直接接続しているベンダーも存在する。ほとんどの場合、このようなサービスは、小規模DaaSベンダーによって提供されている。
直接接続は間違いなく機能する。だが運用上は、多くのクライアントPCを抱えるブランチオフィス(WAN経由で本社と接続されている支店や営業所)から、アプリケーションにアクセスするために本社のサーバに接続するのと全く同じ状態だ。ブランチオフィスのシナリオで発生し得る全ての問題は、このアーキテクチャにも付いて回る。例えば、多くの帯域幅を利用するアプリケーションではパフォーマンスの遅延が生じる。
上述のアーキテクチャは、社外からアクセスするユーザーやモバイルユーザーに最適なものであることに留意したい。一方、サーバと同じ場所に多くのユーザーが座っている状況には適していない。社外のユーザーがクラウドのデスクトップにアクセスするときには、インターネットを使用し、アプリケーションを開くときにはクラウドとネットワークに直接接続するからだ。
社内のユーザーは、クラウド上のアプリケーションにアクセスするのと同じ接続をDaaS環境に移行する必要があるだろう。だが、このようにすると、接続に掛かる負荷は高くなり、パフォーマンスに影響を及ぼす可能性がある。そのため大きな回線や追加の接続が必要になり、いずれも多額の出費を伴う。
DaaSの理想的な用途は、多くのユーザーが使用するサーバとアプリケーションをクラウドに配置できるシナリオなのは間違いない。これはVMwareやAWSなどの大手ベンダーが得意とする分野だ。
例えば、急速に導入が進んでいる新製品のサポートセンターを速やかに開設しなければならない企業が存在する。このような企業が一般的に取る行動は、急いで不動産を購入して改修し、サポートセンター用のソフトウェアを購入することだ。それから、サーバを構築し、リソースを準備して、クライアントPCを購入する。
しかし、DaaSを使用すると、企業は新たな選択肢を手に入れることができる。まず、クラウドベンダーと契約を結び、自社のActive Directory環境をクラウドと接続する。そして、コールセンターのアプリケーション用に幾つかクラウドに仮想マシンを立ち上げる。これにより、自宅で作業をする人のために仮想デスクトップを稼働させることが可能になる。部屋いっぱいにデスクが並んだオフィスや保険は不要だ。また、新たなインフラを管理する必要もない。
もちろん、多くの企業は依然としてオンプレミスに従業員の席を設けることを選ぶだろう。だからといって、組織の業務プロセスやシステムと連係を持たないユーザーグループやワークロードを迅速にスケールアップ/ダウンしたり、DaaSを導入したりする価値が下がるわけではない。
DaaSと開発者
多くのクラウドテクノロジーと同様、DaaSには開発チーム用のユーティリティが用意されている。独立したデスクトップを使用すると、ウイルスに感染していないクリーンなテストプロセス用のOSを迅速に導入して、Webから配信された企業資産の安全性をネットワークに接続していない状態で評価できる。ただし、DaaSがテストと開発にもたらす影響については考慮したい。例えば、「このようなシステムはデータセキュリティポリシーの対象になるのか」「法規制やコンプライアンスの対象になるのか」という問題がある。データ漏えい防止ポリシーは、DaaSのパラダイムをサポートするように進化しなければならない。
慣例にとらわれないDaaSテクノロジーの適用方法が定着しつつある。それはDaaSを災害復旧ツールとして使用するというものだ。既にサーバ環境をクラウドプロバイダーに複製している場合は、DaaSを契約して、クラウドでデスクトップ環境の最新のマスターイメージを管理してはいかがだろうか。
災害発生時には、仮想マシンを起動し、マスターイメージを使用して、多数のデスクトップを適切なソフトウェアを割り当てることができる。そうしたデスクトップは、自宅や一時的な営業拠点で作業するユーザーに配信可能だ。
これが終わりではない
DaaSに多くの有益な用途があるのは明らかだが、なぜオンプレミスのVDIが最後を迎えることにならないのだろうか。それは、オンプレミスのVDIを使用するのが理にかなっているケースが少なくないからだ。高度なパフォーマンスが求められるデスクトップでは、GPUやプロトコル処理の負荷軽減の仕組みや、DaaSの契約では利用できない高度なハードウェアパフォーマンスが必要になることがある。
コンプライアンスの影響を受ける企業は、VDIの柔軟性と一元管理に魅力を感じているかもしれない。だが一方では、依然としてデータを自社の直接支配下から外すことに不安を覚えている。
重要なのは、DaaSがエンドポイントコンピューティングの進化におけるステップの1つにすぎないことだ。DaaSが物理的なデスクトップPCやオンプレミスのVDIに取って代わることはない。クラウド環境にデスクトップを配置するというのは有力な提案だが、効果的に運用するには計画が必要になる。
VDIとDaaSは今もなお進化している。OS側で大きい負荷を発生させることなく、抽象化されたアプリケーションがモバイルデバイスに配信されることについては、多くの議論がなされている。アプリケーションの配信方法やコンピュータの規範からユーザーの権限委譲へ注目が移るにつれて、デスクトップ配信に関わるツールキットへの関心はさらに高まるだろう。
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