kintoneユーザー企業3社の事例を紹介
サイバーエージェント経理部門が本気で進めた“脱Excel”、「kintone」は代替できたか
クラウド型業務アプリケーション開発プラットフォーム「kintone」が、国内での支持を得てきている。サイバーエージェント、関西、AmidAの3社の事例をリポートする。
サイボウズの「kintone on cybozu.com」(以下、kintone)は、営業支援、顧客サポート、業務ワークフローなど、企業の業務アプリケーションを手軽に開発・運用できるクラウド型業務アプリケーション開発プラットフォームである。2011年11月にサービスを開始し、2015年4月には国内での有償契約社数が2500社を突破、前年比186%と成長が著しい。
サイボウズ kintone プロダクトマネージャー 伊佐政隆氏によれば、kintone対応アプリケーションの数は15万件に上り、1日当たり500個ものアプリが生まれているという。開発者向けの有志勉強会「kintone Café」の開催は既に15回となり、パートナー企業や開発者のための土壌が出来上がりつつある。一方で、ユーザー同士の情報共有はこれからだ。2015年5月、サイボウズは初となるユーザー会「kintone hive」を開催した。伊佐氏は冒頭のあいさつで、「同じライセンス料を払っていても1アプリしか使っていない企業もいる。もったいないことだ。kintone活用についてもっと情報を共有する場が必要だと思った」とイベントを企画した背景を語った。イベントでは4社のユーザー企業が登壇し、自社でのkintone活用事例を語った。今回は、サイバーエージェント、関西、AmidAの3社の事例をリポートする。
サイバーエージェント:バックエンド業務の脱Excelをkintoneで
インターネット広告事業をはじめ、ゲームやブログサービスを運営するサイバーエージェントは、kintoneで業務改革を実現しようとする1社だ。
同社はインターネット関連の事業を多く手掛け、約70社の関連子会社を保有する。経営にはスピード感があり、半年で15社もの子会社を設立することも珍しくない。次々に新しい会社が立ち上がることで、経理や会計といったバックエンド業務が対応に追われていた。全社的に決算早期化を進めていることもあり、事業が成長するほどバックエンド業務が遅れていくことが課題だった。具体的には、月次の締めや請求処理に工数が掛かりすぎていた。
サイバーエージェントで内部監査室に勤務する鹿倉良太氏はその原因の1つを経理・会計業務における「Microsoft Excel」依存にあったと分析している。同社では、1つのマスターファイルを共有フォルダに置き、全員で共有して入力作業をしていた。Excelはファイルが壊れやすくバージョン管理もできないため、面倒な月次の締めは後まわしになることが多かった。必然的に月初や月末に作業が集中した。また、Excelへの入力ミスによって、情報のやりとりが複数回発生することもあったという。
鹿倉氏がExcel運用の限界を打破するために目を付けたのがkintoneだった。同社はkintoneを使い、取引実績管理システム「DOX」を構築。現在20社で運用中だが、今後は全社導入を目指す。受注管理、実績管理、請求管理、入金管理などの基本機能に加え、経理担当者が仕訳を切らなくても済むように会計処理の機能も備える。
導入には少なからず障壁があった。「使いやすかったExcelがWebシステムに替わり業務効率が落ちるのではないか、Excelを本当に排除できるのかなどの不安はあった。だが、経営層に提案する際にはプロトタイプを70%近い完成度で作り込むことでイメージをつかんでもらった。また、細かな操作性ではExcelには敵わないので、分析機能やランキング機能などExcelには無いkintoneならではの機能をアピールすることで、導入の障壁を乗り越えられた」と語る。
kintoneによって、これまで5営業日かかっていた処理が3営業日に縮まるなどの効果が出ているという。また、クラウド化、データベース化したことでデータが壊れにくくなった。処理タイミングが集中していた問題は処理プロセスに応じてアプリケーションを分離し、タイミングを分散することで解決した。
導入から2カ月で運用開始にこぎ着いたが、現在も改修は続けている。「今後はDOXをパッケージ化し、新規事業が立ち上がると同時にバックエンドシステムができている状態にしたい」と展望を語る。さらなる次の一手として、kintoneをインフォテリアの「ASTERIA WARP」と組み合わせ、事業サイドのシステムとDOXをETLで連係し、会計システムに流すことを検討中だ。経理業務に人手が掛からないように、単体から連結決算までを自動化することを目指す。これによって、17営業日で発表している決算報告を1週間に早めたいという。
「現在、経理担当者は業務の多くを集計作業に費やしていると思うが、これからはアプリケーションを自ら実装するなど作業効率を上げるための業務(設計)にシフトさせていきたい」。子会社の数が増えても、人数を増やさずに決算発表を早められるようにしたいと語った。
関西:施設、スタッフ、顧客との情報共有にkintoneを
大阪を拠点にリハビリテーション事業や訪問看護事業、児童デイサービスなどを営む関西は、「日本の福祉を世界一にすること」をモットーに、作業療法士や看護師、保育士などによって結成された医療ケア集団だ。同社のkintone導入は2012年8月にさかのぼる。最初は訪問看護事業における従業員同士の情報共有手段として利用を開始した。代表取締役 青山 敬三郎氏は導入当初、「情報共有にお金を払うことに抵抗があった」と打ち明けた。しかし、今では確かな効果を実感している。
kintoneを導入する前は、「(集まれるメンバーで)朝礼をしてから利用者宅を訪問し、サービスを実施、現場でサービスを記録し、会社に戻りまた記録するという5つのステップで行っていた」。だが、朝礼は早出のスタッフは参加できないし、サービス実施後の記録は紙でのチェック方式のため肝心なことが伝わらないこともあった。最後は会社に戻って共有のPCで記録しなければならないことも非効率だった。kintone導入後は、3つのステップに集約された。kintoneに情報を集約することで、スマートフォンでサービスの記録ができるようになった。朝礼や会社に戻って記録するというステップも省略できた。
kintoneは児童デイサービス「青竹のふし」でも利用している。例えば、利用説明会の申し込みでは、以前は入力フォームを受け取ったら、別途、電話やメールで返していたという。しかし青山氏は、kintoneを導入してから「kintoneで入力フォームを作成しサイボウズのメールワイズと連係することで、kintoneに入力された情報を添付して直接返信が送れるようになった」と話す。
青竹のふしでは、スタッフと顧客がkintoneを1アカウントずつ持ち、サービス予約のキャンセル通知や施設と保護者の連絡帳(記録アプリ)としても活用している。キャンセル通知機能によって、キャンセル枠の穴埋めができれば施設にとっては売り上げの安定につながる。記録アプリには利用金額も合わせて記録し、売り上げ管理にもなっているという。「今まで、売り上げは月末にならないと分からなかったが、kintoneによってリアルタイムで売り上げの管理ができることは大きい」と青山氏。事業所ごと、曜日ごとの業績も一目瞭然だ。「売り上げが落ち込む曜日への対策を打つこともできる他、前年前月比をkintoneでクロス集計して見ることで、先読みして対策を打てる」と話す。顧客へのサービス向上にもなるキャンセル通知や連絡帳が、売り上げ管理にも寄与していれば一挙両得だ。
青山氏はkintoneの魅力を次のように分析する。「kintoneは作業をカスタマイズする力、作業工程を分析し短縮する力に秀でている。また、集団形成に役立ち、人と場所の雰囲気をより良くすることにも役立つ。そして、検索能力に優れたデータベースも魅力」。また、「これらはアジャイルによって応用される。組織の速度に合わせてkintoneも成長させていくことが大事」と、アプリケーションを完璧に作り込むことを目指さず、常に改修していく姿勢を見せた。
AmidA:“kintone+フルスクラッチ”で失敗プロジェクトを立て直す
1998年に創業した印鑑のオンラインショップ、ハンコヤドットコムの親会社として、2014年9月に誕生したAmidAは、デジタルマーケティング企業だ。主力事業であるハンコヤドットコムの基幹システムにkintoneを採用した。
同社はkintone導入以前、ECサイト経由で受注した印鑑の製造から発送までの業務オペレーション管理システムを、スクラッチで開発した。このプロジェクトには1年半もの期間を費やし、完成するまでには何度も作り直しが発生し、成果物に見合わない高額な開発費が掛かっていた。
既存システムの失敗は繰り返せない。新規システムに期待されるのは「運用効率のアップ、将来の事業拡大に対応できる、低予算・短期リリース」の3点。「今回は、絶対に失敗できない」というプレッシャーの中で、AmidA マーケティング事業部 副部長 大田基樹氏が選んだのがkintoneだった。
kintoneを選んだ理由は「柔軟性と手軽さの両方を備えている」「低予算でスタートでき、規模拡大にも対応できる、前職で導入経験があり効果を実感していたこと」の3つだ。kintoneの適用範囲は、ECサイト、バックヤード、基幹システム。結果的に、初期バージョンを1カ月半でリリースすることに成功。利用者の完成イメージとのギャップもなかった。必要な部分だけは外注し開発費削減にもつながった。
成功の要因にはkintoneを使ったプロジェクトの進め方も大きい。「試作品を作ってテスト対象ユーザーに見てもらうことで完成イメージとのギャップを解消したこと、スクラム(アジャイル型)でプロジェクトを管理したこと、リリースと修正を高速に繰り返したこと」だと振り返る。
新規システムでは、開発スピードと柔軟性の両方を得るため、kintoneとフルスクラッチをうまく組み合わせて開発した。kintoneでは、基本フォームや画面のカスタマイズ、データ連携ソフト(EAI)「DataSpider」や帳票出力「OPROARTS」といったミドルウェアとの連係を担った。一方、フルスクラッチで行ったのは、kintoneでできない部分のみ。他社パーツと自社開発のバランスは成功の鍵といえよう。
大田氏は、kintoneによる開発のコツについて「完璧を目指さずスタートしていくこと。その上でブラッシュアップしていくこと」とアドバイスした。
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