「進化した脅威」にどう対処するか
30年前からセキュリティ担当者を苦しめ続けている問題とは?
セキュリティの名著『カッコウはコンピュータに卵を産む』の著者、クリフォード・ストール氏が直面した事件から30年弱。進化し続けるセキュリティの脅威に対抗すべく、対策にも変化が求められている。
カッコウは他の鳥の巣に卵を産む――。これは、ネットワーク侵入に関する往年の名著『The Cuckoo's Egg』(邦題『カッコウはコンピュータに卵を産む』)の著者であるクリフォード・ストール氏が同書のタイトルを考えていた際、米San Francisco Zoo(サンフランシスコ動物園)のペンギン飼育係から言われた言葉だった。
「巣の主である鳥は、カッコウを卵から孵化させる。そして育ったカッコウは巣を乗っ取り、もともとの巣の主に餌を食べさせてもらう」。ストール氏は1989年、米ケーブルテレビC-SPANのインタビューでそう語った。「その巣を出て行いったカッコウは、また他の卵を産む。カッコウにとっては、何もかもがうまくいくのだ」
進化する“カッコウ”をどう退治するか
1980年代後半に発覚した、米エネルギー省内の研究所であるLawrence Berkeley National Laboratory(ローレンス・バークレー国立研究所)のネットワーク侵入事件について、ストール氏は米連邦捜査局(FBI)に通報した。するとFBIは、再び侵入されないようパスワードを変更してネットワーク接続を切り離すよう促し、「そうすれば相手はいなくなる」と告げた。
「FBIは正しかった。相手を寄せ付けないようにすることもできたし、締め出すことも簡単だった」。ストール氏はそう認めつつ、「それでも監視を続ける価値があるのでは、と考えた」と当時を振り返る。
当時から現在に掛けて脅威の進化が続く一方、防御手段も進化してきた。セキュリティ専門家は、脅威検出手段への投資に当たってどのベンダーやどの機能を筆頭に挙げるのか。大抵は予想通りの顔ぶれだろう。一方で、技術の進化は状況を変えるかもしれない。「『進化した脅威』を論じる際の、『進化した』の意味は変化し続けている」。米調査会社Gartnerのセキュリティ・リスク管理担当調査副社長、アントン・チュバキン氏はそう語り、企業にとって役立つ対策が変わる可能性を示唆する。
チュバキン氏とストール氏が注目するのが、脅威監視とデータ収集技術の進化だ。両氏は、これらの一連の作業を容易にするアルゴリズムの登場に期待をかける。「どんな分析ツールが役に立つかと問われたら、『若手セキュリティアナリストと同じくらい優れたものが必要だ』と答えている」とチュバキン氏は言う。
最高情報セキュリティ責任者(CISO)にとって、急速に変化する技術に追い付くことも仕事の一部だが、それには相当の時間を取られかねない。CISOはさまざまな機会を生かし、最新技術に関する情報を得ている。ただし、有望とされる技術の効果判定には依然として課題がある。
セキュリティ専門のコンサルティング企業、米Core Competenceの代表を務めるリサ・ファイファー氏は、モバイル端末やそのアプリケーションから失われる企業データの監視を強化する手段として、企業利用が進みつつあるモバイルデータ保護対策を挙げる。ストール氏が体験した通り、今何が起きているかを調べながらデータを守ることはセキュリティの大きな問題であり、最も難しい仕事であり続けている。
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