2020年に向けた病院内のIT化を推進する取り組みとは
iPhone 3200台導入の東京慈恵会医科大学、情報共有の在り方を一新(1/2 ページ)
Appleの「iPhone」3200台を導入するなど、2015年からモバイル端末を中心としたIT環境を着々と構築している東京慈恵会医科大学。同大学が目指す医療ITのビジョンとは。
東京慈恵会医科大学(以下、慈恵医大)は「2020年までに国際都市東京の顔となる“存在感”のある大学になろう」をスローガンに掲げ、東京オリンピックが開催される2020年までのITロードマップを定めてITインフラの次世代化を進めている。
同大学のロードマップでは「院内ナビサービス」「スマホ診察券」「院内呼び出しサービス」「オンライン会計サービス」「翻訳サービス」などのモバイルアプリケーションの導入を計画している。
計画初年度の2015年からモバイル端末を中心としたIT環境を着々と構築している。2015年、慈恵医大は以下の施策を実施した。
- Appleのスマートフォン「iPhone」3200台(併せてフィーチャーフォン400台)の導入
- PHSからiPhoneへの全面切り替え
- ナースコールのiPhone連動
- 病棟/外来棟におけるフリーWi-Fiを含むWi-Fi環境の整備
また、NTTドコモの医療用モバイルクラウドサービス「Join」(開発元:アルム)や、NTTドコモと慈恵医大が共同発案した救命・救急、医療補助アプリ「MySOS」(開発元:アルム)、アイキューブドシステムズのモバイル端末管理基盤「CLOMO」などの製品・サービスを導入してモバイル端末を活用している。同大学の取り組みを紹介する。
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医療機器に対するスマートフォンの影響を調査
病院でのモバイル端末の活用では、院内でのさまざまな影響を考慮する必要がある。具体的な活用方針を検討する上で参考になる指針が、総務省や厚生労働省、通信事業者などで構成する電波環境協議会が2014年8月に発表した、「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」だ。同指針では「医療機器の電磁的体制に関する性能の向上」や「第二世代の携帯電話サービスの廃止」に伴い、医療機器と1メートル以上離すことを推奨。病院内における携帯電話の利用を事実上認め、原則禁止としてきた病院内における携帯電話の利用に対して、「患者の利便性・生活の質の向上のためには、医療機関においても利用者の携帯電話端末の使用は、可能な限り認められることが望ましい」と説明する。
ただし、同指針はあくまで指針であり、病院内での携帯電話利用はそれぞれの病院の自己責任であるため、慈恵医大ではスマートフォン導入に際して医療機器への影響を測定した。
その結果、電波を探している状態である最大出力時では38センチで医療機器に影響を及ぼすが、電波が良い状態では2センチまで近づけないと影響が出ないことを確認した。なお、慈恵医大の調査では、電波が良い状態では携帯電話よりもPHSの方が医療機器に影響を与えることもあるという結果も出ており、電波が良ければPHSと同様の安全性(見方を変えればリスク)で運用可能だと考えられる。
病棟内は「建物の外壁が厚い」「水配管が多い」「電磁波が強い」などの要因のために電波の環境が悪いことが多く、常に電波が良い状態を担保するのは難しい。そこで慈恵医大は病院内の天井裏にNTTドコモのアンテナを追加設置して、院内のどこでも電波の良い状態を作り出し、携帯の電波出力を抑え医療機器に影響を与えないようにした。
スマートフォンの運用ルールを制定
医療従事者のスマートフォン利用開始に伴い、慈恵医大では「院内における携帯電話端末の利用に関するルール」を制定し、院内のホールやエレベーター内など各所での告知を始めた。
当然、医療行為を行う診察室、手術室などのスペースでの使用は禁止している。それ以外のほとんどのスペースでは、マナーを守る前提で通話以外の使用を許可した。医療従事者のスマートフォン使用と合わせて、来院者の利用ルールを定めることで、来院者の不安とクレームを未然に抑えている。一方、医療従事者に対してはスマートフォンの利用制限を設けていないが、患者に関わる情報、作業指示をスマートフォンでの会話を通してする場合の周囲への配慮など、「医療者側のモラル教育も重要である」という認識の下、部門長など組織管理者は継続的に現場への指導を続けている。
iPhone選定の理由
iPhone3200台を導入するに当たり、その選定理由について先端医療情報技術研究講座准教授 郄尾洋之氏は「同一端末の調達可能性」「OSのアップデートに伴うメンテナンス性」「OSバージョンごとの操作同一性の保持」「アプリ開発環境の一貫性」などを主な要因に挙げる。
慈恵医大はSIMカードなしのiPhoneを故障・破損対応用に100台予備機として準備するなど念を入れている。機種を同一にそろえることで、セキュリティポリシー適用の統一化や、機種・OSバージョンによる操作性差異がなくなり、万が一の不具合の際のサポート・交換対応なども簡便化できるなど、担当部署としては大きなメリットであろう。
また、iOS端末ではOSアップデートに伴いアプリ機能に不具合が発生することが少ないと判断して、iPhoneの一括導入が最終的に決定されたという。
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