モバイルアプリ開発を“デスマーチ”にするCIOの特徴:その影響は測り知れず(2/2 ページ)
従業員、顧客向けのモバイルアプリが企業の生産性向上にとどまらず、業績目標の達成にまで影響しようとしている。その開発と導入の成功に必要なのが「有能優秀なCIO」の存在という。
エンタープライズモバイルアプリの提供に伴う課題
企業がこの道を進めば間違いなく課題が生じるとカブラ氏は話す。例えば、多くのCIOは、適切なプラットフォームやセキュリティ対策が備わっている従業員向けモバイルアプリを容易にサポートできるエコシステムを持っていない。また、新しいモバイルアプリの使用状況を監視して分析する術も持っていないので、ユーザーの導入率を把握できない。そして、長期的なモバイルアプリ戦略も持ち合わせていない。このような戦略はCIOやそのチームが、まず取り組むべきモバイルアプリの判断や、モバイルが変革をもたらすプロセスを把握する上で必要だ。
ただ、研究者やコンサルタント、アナリストによると、優秀なCIOはモバイルアプリを開発する“雰囲気”と実効性のある体制を社内で用意しているという。例えば、開発における他のキープレーヤーを特定して開発体制に組み込み、断続的な開発や継続的なメンテナンス、そして、革新的なモバイルアプリ開発をサポートしている。さらに、業務形態に変革をもたらす従業員向けモバイルアプリを提供するために、技術的な見識とビジネス知識の両方を持つ人員をIT部門に加えようとしている。
「IT部門は状況を把握して活用できるスキルを磨くことで、より多くの主導権を握るようになっている」とIT事業者団体のCompTIAでテクノロジー分析担当シニアディレクターを務めるセス・ロビンソン氏は話す。
優秀なCIOは、エンタープライズアプリの導入に適用しているルールの多くをモバイルアプリ開発でも試みているとロビンソン氏はいう。このような試みで、モバイルアプリが徐々に改善や利便性向上を実現するだけでなく、業務手続きを再構築するためにワークフローの見直しをビジネスニーズに基づいて判断できるとしている。
ロビンソン氏などが重視しているこのアプローチからは、あることがうかがえる。それは、IT部門がモバイルアプリ戦略全般に加え、従業員、顧客、そして、企業全体をモバイルアプリでサポートする方法について考える必要があるという現状だ。
「企業はこの傾向によって改めて認識したことがある。それは、モバイルアプリは単なるサポート機能ではなく、企業の運営、差別化、そして新しい目標への前進を可能にするものということだ。ソフトウェアに対して企業が関心を持つことによって、社内で必要な開発スキルを見直している。その多くの場合で、企業はさらなる開発スキルが必要であることを理解する」とロビンソン氏は補足する。
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WinterWymanでソフトウェアテクノロジー調査担当シニアコンサルタントを務めるダン・ジラルダン氏も、モバイルアプリ開発者の需要が高まっていることを認めている。モバイル開発者を求める企業の大半は開発系やテクノロジーサービス系の企業だ。だが、昨今、モバイル開発者を求めるIT部門は増加しているとジラルダン氏は話す。「多かれ少なかれ、どの企業もモバイル開発のニーズを抱えている」(ジラルダン氏)
さらに、雇用マネジャーは本格的な開発スキルのみならず、ビジネスに関する見識を持つ人員を求めているという。これは、モバイルアプリで業務の利便性が向上するだけでなく、ビジネス目標の達成にも役立つことを企業が見込んでいるという確かな兆しだ。求人サイトIndeedでエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントを務めるダグ・グレイ氏は、Indeedにおけるテクノロジーインフラの大半をモバイルが担っていると語る。「当社のトラフィックの半分以上がモバイルで、その範囲は広がっている。従業員はモバイルで全てのことを行っている」(グレイ氏)
社内エンジニアが行うモバイルアプリ作業のほとんどは、外部用アプリ開発に特化しているが、従業員向けモバイルアプリの開発にも注力しているとグレイ氏は語る。ただし、そのためには戦略を立てなければならないという。ほとんどの従業員が大きなデスクトップPCの画面で作業するのを好んでいる。そのため、モバイルだからという理由だけで多くのアプリをモバイル化しても意味がない。
Indeedのエンジニアは、まずモバイル化が変革を起こす機会を探している。その機会を見つけたらアプリの試作版を素早く開発し、アプリのモバイル化が成功するかどうかを見極めるために使用状況を測定して分析している。「開発したアプリが利益創出につながらないようであれば、別の領域でテストしてみる。別の領域で価値が認められれば、より多くのリソースを投入して開発を続行することができる」とグレイ氏は説明している。
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