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徹底レビュー:いろんな意味でMacBookに対抗できる唯一のWindowsノート「ThinkPad X1 Carbon」(2016)に迫るThinkPadの弱点も改善なるか(3/3 ページ)

強力なスペック、美しいビジュアル、丈夫なデザインを兼ね備えたLenovoの「ThinkPad X1 Carbon」は、市場に出回っている中でも最高のビジネス向け薄型軽量クライアントノートPCの1つだ。

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評価用機材のシステム構成

 今回の評価で使用したThinkPad X1 Carbonの構成は、CPUがIntelの「Core i5-6300U」(2.4GHz/3GHz、2コア4スレッド、3次キャッシュメモリ 3MB)、システムメモリはDDR3 8GB、グラフィックスコアはCPUに統合した「Intel HD Graphics 520」を使い、データストレージにはPCI Express接続で容量256GBのSSDを搭載する。

 この構成のモデルは現在米LenovoのWebサイトでは販売していないが、AmazonのWebサイトで1500ドルで販売していた(2016年5月時点)。なお、幾つかのアップグレードオプションが用意されており、SSDは容量512GBまで、システムメモリはDDR3を16GBまでアップグレードが可能だ。CPUは、Intelの「Core i7 vPro」シリーズに変更できる。

 ThinkPad X1 Carbonは、処理能力を最優先したモデルではないが、日常的なタスクをこなすのには問題ない。高速なPCI Express接続SSDのおかげで、ファイルやプログラムの読み込みが速く、OSの起動も数秒で可能だ。Core i5シリーズのCPUと容量8GBのシステムメモリの組み合わせは、Web閲覧や文書作成などの日常的な作業で処理の遅さにストレスを感じることがない。

 また、複雑なスプレッドシートの計算のような負荷の高いタスクでも、評価作業でGoogleの「Google Chrome」のタブを10個開き、バックグラウンドで2つのHDビデオのストリーミングを行い、さらにSpotifyの音楽を流したが、目立ったパフォーマンスの低下はなかった。

 ThinkPad X1 Carbonが苦手とする領域の1つがグラフィックス描画処理だ。グラフィックスコアとしてIntel HD Graphics 520をCPUに統合しており、動画鑑賞や簡単なメディア編集は快適に行える。しかし、負荷の高い3D描画ゲームや4K動画の編集には処理能力が不足している。Riot Gamesの「League of Legends」やBlizzard Entertainmentの「Hearthstone」などの負荷の少ないゲームでグラフィック設定を低くすれば実用的なフレームレートで動作する。しかし、Futuremarkのベンチマーク「3DMark 11」のスコアが低いことから明らかなように、負荷の高いゲームをプレイするのは非常に難しい。

今回のテストに使用したThinkpad X1 Carbonのスペックは以下の通りだ。

OS Windows 10 Pro
ディスプレイ 14型 解像度2560×1440ピクセル
CPU Intel Core i5-6300U
グラフィックスコア Intel HD Graphics 520
システムメモリ DDR3 8GB
ストレージ PCI Express接続SSD、容量256GB
無線LAN IEEE802.11b/g/n
本体サイズ 332(幅)×229(奥行き)×16.45(高さ)ミリ
本体重さ 1.18キロ
北米実売価格 1500ドル

ベンチマークテストの結果

Futuremarkの「PCMark8 Home」(Accelerated)でWindows 8の一般的な作業(Webサーフィン、動画のストリーミング、ドキュメントの作成、ゲームのプレイなど)に関する全体的なシステムの総合スコア。値が高いほど処理能力が高い(写真=左)。Futuremarkの「PCMark8 Work」(Accelerated)によるWindows 8で業務関連処理を実行したときの総合スコア。スコアが高いほど処理能力が高い(写真=右)《クリックで拡大》
Primate Labsのベンチマークテスト「GeekBench 3」でプロセッサの演算能力を比較する。スコアが高いほど処理能力が高い(写真=左)。「3DMark 11」によるグラフィックスコアの3Dゲーム描画処理能力総合スコア。値が高いほど処理能力が高い(写真=右)《クリックで拡大》
Crystal Dew Worldのベンチマークテスト「CrystalDiskMark」によるストレージドライブのパフォーマンススコア《クリックで拡大》

バッテリー持続時間

 バッテリー持続時間のテストには、Futuremarkのベンチマークテスト「PowerMark」を「バランス重視」モードで使用した。テストは、自動Webサーフィン、文書作成、ゲームおよび動画再生ワークロードの組み合わせで構成されている。テストでは普通にWebサーフィンだけをする以上の負荷が掛けられるため、PCをさまざまなシナリオの条件下において、負荷の高い使用状態をよりよくシミュレーションできる。テストの負荷は高いため、結果は低く出ている。そのため、「Facebook」をチェックしたり「Netflix」を見たりするだけならば、結果より長いバッテリー持続時間を期待できる。

Powermarkによるバッテリー持続時間の測定。単位は分を示す。スコアが高いほどバッテリーの持続時間が長い《クリックで拡大》

 Thinkpad X1 Carbonのグラフィックスコアは多くの電力を消費するものではないが、解像度2560×1440ピクセルディスプレイがバッテリー持続時間の重荷になっている。テストに使用したThinkPad X1 Carbonモデルは、電源が切れるまで3時間34分持続した。PowerMarkは通常よりも高負荷をかけているため、一般的な使用であれば1回の充電で6時間以上持続すると考えてよいだろう。また、ディスプレイを1920×1080ピクセルに下げたモデルを選択すれば、さらに数時間は持続すると思われる。

結論

 ThinkPad X1 Carbonは既に評価の高いPCをさらに強化したモデルだ。2560×1440ピクセルの高解像度ディスプレイはすばらしい。これに高音質のオーディオを追加すれば、メディアの扱いに優れたビジネス用PCとなる。不定期にダウンタイムが生じる出張の多いビジネスマンにとっては理想的なコンテンツプレイヤーになるだろう。1.18キロの薄型ボディーは触れた感触がよく、持ち運びによる損傷に強い。高い処理能力も高く評価できる。

 ThinkPad X1 Carbonの唯一の欠点が、バッテリー持続時間だ。市場には同程度のボディーサイズと重さのクライアントノートPCで、さらに持続時間に優れたDell「XPS 13」などの製品が存在する。

 ただし、ビジネスでも安心して使える処理能力と堅牢性と高解像度ディスプレイを搭載する重さ1.36キロ未満クライアントノートPCのカテゴリーにおいて、ThinkPad X1 Carbonに相当するモデルは存在しない。

長所

  • 高い画質を実現した高解像度ディスプレイ
  • 薄型クライアントノートPCの中では快適なキーボード
  • 高速なSSD

短所

  • 有線LANとSDカードスロットがない
  • 解像度2560×1440ピクセルモデルでバッテリー持続時間が短い

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