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北陸コカ・コーラボトリングが電子帳票システムを大幅改修する4つの目的飲料業界が脱紙書類!

帳票電子化により、帳票運用と業務はどう変わるのか? 大手飲料販売会社の導入事例をカギに、帳票電子化の生産性向上効果を考える。

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 事業場内の多くの業務プロセスは業務システムの導入により自動化したかもしれない。しかし、例えば顧客―営業間や工場、仕入先、物流、販売などといった、サプライチェーンの至るところで、情報伝達手段として伝票など紙の帳票が今でも主役を務めている。業務の証跡として保管されるのも紙の帳票だ。業務フロー内部に帳票がしっかりと組み込まれていること自体は悪いことではない。その帳票が“紙”であることより、運用に時間やコストの負担が大きくなっている点が問題なのだが、いまだにこの負担を解消できていない企業が多い。

 また、各業務プロセスの関連情報が帳票に集約されるため、さまざまな部門のスタッフや管理者から参照されたり、加工して再利用されたりするケースも多い。そのようなケースではコンプライアンス担保や利用権限管理などを徹底し、かつ原本は一切の改変ができないよう保管しておかなければならない。しかし、紙の文書では各種書類の仕分けポリシーを統一できなかったり、検索ができなかったりと、利用に不便な一面がある。

 こうした紙の帳票の問題点を解決し、コンプライアンスとセキュリティを強化できる帳票電子化に取り組む企業は多い。北陸コカ・コーラボトリングは、早くから帳票運用・管理システムを導入していたが、今回新たにシステムを大幅改修し、帳票関連にまつわる4つの問題を解消しようとしている。そのシステム改修の目標と各取り組みについて紹介しよう。

環境保護の観点からの総合管理システムの一環としての帳票電子化

 「富山・石川・福井・長野各県を中心に清涼飲料の製造・販売を行う北陸コカ・コーラボトリングでは、コカ・コーラ独自の管理システムである『KORE(コア)※』を運用しています。KOREでは、清涼飲料製品のライフサイクル全体にわたる品質・食品安全・労働安全衛生・環境の4側面に関する基準を網羅して総合的に管理しています。環境面に着目すると、水資源保護や温暖化防止・エネルギー削減、原材料使用量削減と再資源化、廃棄物管理という目標が掲げられており、紙資源の消費を削減するソリューションは、環境保護目的のために重要な要素と考えられています」。そう語るのは、北陸コカ・コーラボトリングのシステム開発や運用を長年担ってきたヒスコムのシステム統括部長である渡辺剛幸氏だ。

※「Coca-Cola Operating Requirements」の略


ヒスコム 取締役 システム統括部長 渡辺剛幸氏

 渡辺氏は2016年11月に東京で開催されたウイングアーク1st主催のフォーラムイベント「ウイングアークフォーラム 2016」で、同社の帳票電子活用ソリューション「SVF PDF Archiver」の導入計画について講演を行った。以下ではこの講演内容を中心に、最新ツールを利用した電子帳票のライフサイクル運用管理について紹介する。

 北陸コカ・コーラボトリングの新しい電子帳票システムはまだ構築中の段階であり、機能面でも変更の可能性があるとのことだが、大枠は既に固まっている。このプロジェクトの目的は次の4つだ。

  • 請求書・「ロケーションコミッション」情報(後述)のWeb公開化
  • 経理帳票の電子帳票管理システムのリプレース
  • フィールドサービスの作業報告書の電子化
  • 自動販売機関連契約書類の電子棚管理

請求書・ロケーションコミッション情報のWeb公開で劇的な時短化

 1つ目の目的は、顧客に送付している各種請求書と、「ロケーションコミッション」と呼ばれる自動販売機(自販機)設置スペースのオーナーに支払われるリベート(割戻金)に関する書類の印刷・輸送費と紙消費量の削減だ。

 従来、顧客ごとのPDF書類作成までは、ウイングアーク1stの帳票基盤ソリューション「SVF」によって自動化が完了していた。しかしPDF化した書類が顧客に届くまでの間には、幾つかのプロセスが必要だった(図1)。それぞれに要する時間は、締め処理に約2時間、印刷・セット作業・封入封緘・梱包作業に約8時間、輸送に関しては地域ごとにかかる時間が大きく異なり、全て終了するまでに数日を要していたという。

 この作業にかかる時間とコストが大きな問題だった。また、顧客からは電子文書で通知してもらいたい、ロケーションコミッションの情報を早く知りたいという要望も多かったという。そこで、書類を郵送するのではなく顧客がWeb経由で自ら書類を参照できるシステムへの移行が検討された。つまり、締め処理以降の業務プロセスを一気に削減してしまおうということだ。現在はSVFからの出力を新たに導入した電子帳票管理ツールである「SVF PDF Archiver」に投入して自動仕分けした上、外部タイムスタンプサービスを利用してWebに公開するシステムを構築中だ。

 想定される効果の筆頭は、顧客に情報を開示するまでの時間短縮だ。従来は3~5日かかっていたものを、締め処理の翌日には顧客が参照できるようになる。「相手先の都合もあり、徐々にWeb方式に移行することになりますが、最終的に現在の年間22万枚の印刷枚数を約7万枚と、約70%を削減できると試算しています」(渡辺氏)。加えてオペレーションミスを削減でき、書類を柔軟に検索できるようになるため、事務処理のコスト削減効果も期待できる。

経理帳票の管理システム刷新で外部アプリからの帳票参照も可能に

 2つ目の目的である経理帳票の管理には、現在、印刷スプールサーバからのデータを電子帳票管理システムに投入して一元管理する方式を採っている。しかし、この管理システムは特定の業務担当者が特定端末で利用するクライアント―サーバシステムを前提としており、帳票の活用シーンが増えるに従って使いにくいものになってきた。そこでSVF PDF Archiverへのリプレースによる、帳票はより活用しやすくしながら、セキュリティ面での懸念も払拭できるシステムへの転換が図られている。

 まずはクライアントソフトウェアの運用管理負荷とコストを削減できることが1つの利点。次に、SVF PDF Archiver以外のユーザーアプリケーションでも帳票閲覧を可能にするAPIが利用できるのがもう1つの利点だ。これにより、多部門にわたるユーザーの帳票利用の自由度が高まり、より活発な帳票活用と業務効率化につながることが期待できる。また、セキュリティ面では原本の情報を一切改変することなく、その帳票の一部をマスクしたり、透かしなどの加工をした上で出力したりできる。これは既存システムではできなかったことだ。例えば請求関連書類に原価の記述がある文書を利用する場合に、原価の記述部分だけをマスクした状態で取り出すようなことが可能になる。また、暗号化による印刷不可設定、注釈の自動付加などSVF PDF Archiverに標準搭載された機能を利用して、各権限に基づいた情報開示制御をシステム開発の必要なく実現する(図2)。

 帳票の原本ばかりでなく、そのコピーに対してもアクセスコントロールと追加加工などが可能なのが大きな利点となる。北陸コカ・コーラボトリングでは、コピー版についてもタイムスタンプを取得して改ざん防止証明を行うことを、現在検討中とのことだ。従来システムからの切り替えは2017年1月から実施する計画だという。


図2 電子化された文書のセキュリティコントロール

フィールドサービスの作業報告書を電子化し、業務効率とCSを向上

 3番目の目的として渡辺氏が挙げるのが、自販機のフィールドサービス(故障対応や定期メンテナンス)における作業報告書の電子化による業務効率化である。

 自販機の故障対応は、まずコールセンターへの故障連絡から始まり、その内容をフィールドエンジニアに通知し、エンジニアが現場に行って修理した後、先方責任者からの確認・作業終了の承認をもらい、帰社した後に報告書を作成するという流れになっている。渡辺氏は「初めの故障連絡はメールや電話で行うため、外出して仕事をしているフィールドエンジニアの状況によっては連絡が届くまでに時間がかかることがある。また、報告書は帰社後にPCから入力する場合が多いため、入力ミスや記載内容の不備、修理部品の在庫情報との不一致などが起きやすくなっていた。さらに、メンテナンス履歴が紙の状態でオフィスに保管されていたため、簡単に参照することも難しかった」という。紙が情報共有を妨げてきたわけだ。

 ここでもSVF PDF Archiverの活用が検討されることになった。大きな変更は、フィールドエンジニアがタブレット端末を携行し、先方責任者からの承認はタブレット端末に指で入力する電子サインを利用することで紙の帳票を廃止したことである(図3)。

 このシステム改修が実現すると、修理完了時に承認のために必要な複写用紙(原稿で年間約2万枚)がほぼ全て削減できる上、修理情報と承認情報とが統合されるため、紙の手続きと二重入力の必要がなくなる。フィールドサービス関連情報は全て電子化されて保管可能になるため、フィールドエンジニアがどこにいても、必要なメンテナンス情報を都度参照できて情報共有が進む。ゆくゆくは故障の予兆を見つけ、先回りして保守を行う予防保全にも活用できることを期待している。北陸コカ・コーラボトリングでは予防保全によって不具合のない運用が可能になれば顧客満足度向上につながると考えているという。


図3 フィールドサービスの作業報告書電子化による業務フローの改善

電子棚管理で情報の食い違いを防止

 4番目の目的は、自販機関連の契約書類の電子棚管理である。北陸コカ・コーラボトリングが自販機を貸し出す際の契約書類は膨大な数に上る。いままでは所属部門に紙の状態で保管・管理されてきたために、保管スペースの問題や管理システムへの誤登録、管理事業所間での契約移管の際に書類がなかなか見つからないなどの弊害を引き起こしてきた。

 こうした紙による管理の弊害をなくすには、管理システムへの転記ミスをなくすことと、膨大な契約書類を過去履歴も含め迅速に検索できる仕組みが必要だ。これには電子サインの利用を含む電子書類ベースの契約プロセスや、書類の一元管理システムが利用できる。また、SVF PDF ArchiverのOCR機能を活用すれば、特別な作業なしに帳票名、顧客名(略称利用可能)、日付などを読み取り、その情報を基にルールに従って電子帳票を自動仕分けし、フォルダごとに階層化して自動格納できる。これは検索性を大きく向上させる。

「仮想PDF」と「柔軟な検索機能」がこれからの帳票管理

 ヒスコムが構築した北陸コカ・コーラボトリングの本事例は、最新の電子帳票管理ツールを用いて紙資源や輸送資源、事務処理、保管スペース、輸送費、関連人件費などの削減とともに、業務プロセス改善や情報漏えい対策、コンプライアンス強化を実現するという、同様の課題に悩む企業の手本となるベストプラクティスだ。また電子データは別地域にバックアップできるため、災害時の情報消失対策ともなる。

 この事例だけでなく、改正された税制の電子帳簿保存法対応はもちろん、セキュリティとコンプライアンスに配慮した帳票活用では、タイムスタンプ機能やアクセス制御機能を備えた上での高速で柔軟な検索・出力機能などが必須となるだろう。

 SVF PDF Archiverはオンプレミス構築だけでなくクラウドでも同様の機能が利用でき、ここでは紹介できなかった新機能も多い。新機能の詳細やコンセプトを知れば、帳票の運用を合理化するヒントが見つかることだろう。

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